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【ぶんぶくちゃいな】口コミ評価は今年最高、なのになぜ作品が消されてしまったのか?

10月1日は中国の建国記念日、「国慶節」。いつもなら、早朝の北京の天安門広場で行われる国旗掲揚に全国から多くの人たちがやってきて見守り、そこから7日間続くゴールデンウイークに突入する。だが、今年はあちこちで散発するコロナ感染者の出現で多くの地域で「静黙」、つまり名前を変えた外出禁止措置が実施されている。旅行者が足を踏み入れたら休暇はおじゃんどころか、休暇が終わっても自宅に戻れるかどうかわからない。国慶節直前には「中以上リスクが存在しない地域」を中心にまとめた「国慶節おすすめ観光地」地図がネットでシェアされていた。

国慶節休暇おすすめスポット地図

つまり、この地図で白地に黒文字の省のみが大型感染が報告されていない地域というわけだ。だが、実際にはこれが広くシェアされている最中にも、この中の、湖北省、雲南省、陝西省、山西省、安徽省、福建省から「感染報告」が寄せられ、結局感染者がいないことになっているのは湖南省と浙江省のみとなった。

このように「コロナゼロ化」政策の下、刻々と変化する情勢を前に、おいそれと観光に出かけることもできず、今年「も」またほとんどの人たちは自宅近隣で連休を過ごすしかなさそうだ。

さらに今年は10月16日から中国共産党の20回目の党大会が北京で開催される。「20」というキリの良い数字に加え、5年毎に開かれることからちょうど100年目にあたり、さらには国家主席の在任期限を撤廃したことで習近平が前例を破る形で3期目に入ることもあり、北京は厳戒体制に入っている。9月の時点で出張などの用事で北京を離れた人たちが、10月末まで北京に帰ってくることができないという話を複数から耳にした。

そして、そんな政治ムードが盛り上がる中、国慶節直前には映画館で上映される映画も国慶節用に切り替えられた。そう、中国では娯楽も政治の都合ですべて手配されるのである。

今年の国慶節用に準備された映画は4作品、外国で危機に陥った中国人をヒーローが助け出すもの、中国建国後最初の鉄工所がいかに創業したか、さらに新疆ウイグル自治区を舞台に腕を失った少年を助けるストーリー、さらに中国の新世代航空機の試験飛行操縦士を描いたもの…ある映画好きは「もちろん、ハリウッドでも国策に沿った作品は作られる。だが一挙にすべての映画館で上映される映画がそれに切り替わるなんてことはありえない」と不満げだ。

振り返ってみると、旧正月やメーデー連休、そして国慶節が映画館の書き入れ時だが、それでもその期間中上映されるすべての作品が国策映画ということは記憶にない。つまり、今年は徹底的に国策映画が提供されることになる。そして、政治スケジュールを見る限り、それは少なくとも1ヶ月は続くだろう。

気の毒なことに国策映画嫌いの人たちは映画館にすら行けなくなってしまった。

特に人々にとって残念なのは、そんな国策映画ウイークに切り替わる直前まで大きな注目を浴びていた映画が映画館のみならず、オンライン動画サイトからも姿を消してしまったことだった。

●口コミで盛り上がった、無名監督の話題作

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