【読んでみました中国本】「知ったかぶりしない」「中身にウソがない」貴重な中国本:西谷 格『ルポ 中国「潜入バイト」日記』(小学館新書)

『ルポ 中国「潜入バイト」日記』西谷 格(小学館新書)

中国本を見つけるにはいくつかの方法がある。そしてその良し悪しもそれぞれにいろいろだと思う。

発見手段・その1)お知り合いの出版社や著者からの献本、あるいはSNS上で誰かがしている自身の出版物の告知:

この場合、わたしはありがたいと思いつつ、一歩距離を置くことが多い。献本は宣伝目的であるのは明らかなので、こっちももらったからといってすべて読むわけにも書くわけにもいかない。逆に献本されたことを意識しすぎて提灯記事を書くくらいなら、書かないほうが本のためにもわたしのためにも良いと思っている。

でも、献本してもらったのにわざわざけちょんけちょんに書いた本もある。献本してもらってもすぐに開く本と開かない本がある。テーマや著者が一番の理由だ(逆に巷ですでに話題になっているとかは気にならない。「巷」情報に疎いからだ-笑)。献本本を批判するのは、少なくともその筆者がその程度で終わるべき人ではない、あるいはその書き手の立場でこのテーマを書くのにそれはないだろう、と思うとき。

つまり、わたしが多少でも期待している人、あるいは社会が期待するだろう立場の人の著作は、献本してもらってもがっつり意見する。

発見手段・その2)本屋ブラ歩き:

一番オーソドックスですね。香港にはまだ日本書店があったのでよくブラ歩きしてたけど、北京じゃそれはできなかった。中国語の本ばかり積読になってしまい、引っ越しがもう大変。今日もこのときの本が開かずのダンボールに入ってわたしとともに東京から福岡まで引っ越してきた。かびてないといいけど。

東京は大型書店があちこちにあるのでブラ歩きが楽しかった。書店に足を向ければ、なにかしら見つかる。ついでに見つけたのは、中国関係の本が置かれている書棚は、赤と黄色の装丁本がむちゃくちゃ多かったこと。中国の国旗をイメージしたのであろうが、中国本の装丁をする人は一度あの書棚の前に立ってこれから出す本をどうすれば目立たせることができるか、考えるべきだと思う。右にならえで赤に黄色で売れると思うのは、ちょっと脳みそ足りないレベル。

あとそんな書棚に平積みになっている中国本で最近顕著なのは、習近平の顔が印刷されている本がこれまたやたらに多いこと。胡錦濤のときと違って「独裁体制」になったから習近平がクローズアップされているという背景はわかる。だが、習近平称賛本や批判本はともかくとして、習近平とタイトルも中身もほぼ関係ない本にまで習近平の顔を表紙に持ってきているのにはびっくりした。

これはたぶん、出版社、特に編集者のセンスの問題だろう。中国本といえば習近平かパンダしか思い浮かばないというレベルの人で、もしかしたら著者の原稿もあまり真剣に読んでない、あるいは読んでもあんまりわかっていない編集者だとこうなるんだろうな。

まぁ、最終的に著者もその提案に納得したから出せたわけだし、最終的に名前を印刷される著者のせいになってしまう。まぁ、最初に読んだ編集者ですら説得できない内容を出版する著者も著者だ、といえなくもないけど、出版界ではやっぱり編集者が強いからなんともなぁ、という気がする。

発見手段・その3)中国専門書店の書棚:

これはほぼ東京在住者の強みですね。一部の地方都市にも同様の書店があるようですが、大型書店や古本屋とともに神保町のすずらん通りに軒を並べる東方書店や内山書店の客入りとは比べ物にならない。

ただ…わたし中国専門書店は苦手です。

とにかく書棚が見づらい! 専門書店過ぎて、失礼ながら有象無象が並びすぎていて、中国本は集中的に集まっているのはとてもよくわかるのですが、書店側もそうやって日頃から一目おいてくれる出版社との関係をあからさまに表現していて、一部出版社の本はむちゃくちゃ目につくところに積んであったりするのに、「その他」は書棚にちっこりと収められていたり。

その「ヒエラルキー」は、一般にいわれる大型出版社を中心とした一般書店とは違い、明らかにその中国専門書店との関係、あるいは著者との関係を中心に出来上がっている。歴史ある中国専門書店はだいたいにおいて、著者を大学のセンセイ>著名人>フツーの中国書き手>フリーランスときっぱりと決めているようで、そこをまずクリアにして本探しをする必要がある。

わたしは、どっちかというと、一般大型書店のしょぼしょぼながらも「話題の本」「話題になるんじゃね?本」を並べた中国関連本書棚のほうが、社会一般の通念を知るという意味でも好き。

もちろん、中国専門書店では「へぇ、こんな本も出ていたのか」と過去出版本が最新本と並んでいるという面白さを発見することができる強みがある。わたしの昔の本も並んでいた。ありがたい。

中国マニアには専門書店がお薦めだろうな。わたしは「中国バカ」だが「マニア」ではないんだと思う。

発見手段・その4)アマゾンなどのネット書店:

アマゾンなどは、時にそれまで読んだ本や報道で紹介されていた本を探し求めるのに便利。すでに紹介を読んでいるからだいたいの価値はつかめているし、自分の興味ともマッチングしたからリストアップしていた、という安心感がある。

ときどき、上記1、2、3(順不同)で本探しを煮詰まったとき、アマゾンの検索で「中国」あるいは「香港」「台湾」のキーワードをかけたり、以前読んだ本のページに出ている紹介本を眺めたりして探すことがある。

知らなかった本、テーマ、あるいは著者の本が出てきた場合、先行者たちの書評が読めるのも良い。ただ、書評を残している人たちがいったいどんな人なのかがわからないので、書評も注意して読む必要がある。

実は著者の友人だったり、あるいは編集作業に関わったりしている人がいっぱい書き込んでるな(献本効果)と思える本もあるし、「うーん、この本にこれを期待したあなたは一体なにもの?」と思えるひどい書評もときどきある。

わたしはアマゾンで評価を読むときは、モノだったら最悪評価から読む。そして本の場合は真ん中評価、つまり星3つくらいからまず上へ、その後星1つを読むようにしている。

…と長くなったが、今回読んだ「ルポ 中国『潜入バイト』日記」は4番目の方法、アマゾンで見つけた本だった(その後書店でも目にしたけど)。

●「日本人」としてのバイト参加はすごい

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