【ぶんぶくちゃいな】一人っ子世代の手痛いしっぺ返しを受けた中国政府

中国では6月1日は「児童節」、つまり「こどもの日」だ。

旧暦とも関係がないのでなんでだろう、と思って調べてみたら、ブラジルに本拠地を置くNGO「国際民主婦人連盟」が第2次世界大戦中にナチスがチェコで引き起こした大虐殺を機に戦争で犠牲になった子供たちを追悼する日として提唱したのが始まりだという。

日本で暮らしていると知らないままだった「世界的なイベント」を中国で知るというのは意外ともいえるが、こういう例はわりとある。たとえば、3月8日の「国際婦人デー」も日本ではまったくといっていいほど知られていないが、社会主義国から提唱されたこの日が、1975年に国連でも推奨されるようになったことを知れば、日本って意外に「閉じた国」なのね、と実感する。ある意味、「目からウロコ」の体験である。

さて、6月1日の「こどもの日」に話を戻すと、今年はこの日を挟んで子ども関連の話題が続いている。今週は中国では例年行われる大学入試統一試験「高考」が行われたが、その一方で1000万人を越えた受験生と、今年大学を卒業して社会に出るものの就職難とされる900万人という大軍にただただため息がでる。

もちろん、学びたいという子どもたちの数を制限しろというわけにはいかないが、じゃあ、激化の一途をたどるお受験戦争を勝ち抜いて大学に進学したものの、その後は…? 

1998年にはわずか100万人あまりだった大学入学者数が翌年160万人に拡大されて以来、どんどこ広がったのは悪いことではないが、エリートとして大学を卒業した人たちにふさわしい仕事の数が追いつかなくなってしまっている。また、一方で大都市ではもう大卒なんて珍しくなくなっているのに、職場経験はないが「大学卒業したら社会エリート」の意識だけ高い新卒者を敬遠する企業も増えていて、需要と供給の矛盾はうまりそうもない。

これって誰の責任なの? 大学生個人? 大学? 企業? それとも政府? スムーズに就職先を見つけられた人たちはともかく、予想もしていなかった壁にぶち当たった人たちの疲弊感は大きい。

大学卒業したのに、ケータリングの配送員。
大学卒業したのに、田舎で肉屋をやっている。
大学卒業したのに、大学卒業したのに、大学卒業したのに…

そこにこどもの日直前の5月31日には、「3人目出産解禁」のニュースが突然流れた。当局はきっと「こどもの日」を軸にタイミングを狙ったに違いない。3人目認可に湧く人たちをこどもの日に特集でもしたかったのだろうか?

でも、コトはそう簡単には進まなかった。

●2人目がなければ3人目はない


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