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甘くはきっとない

(たまにはショートショート的な)

青い船に乗って、チョコレートの水を進む。

スモアをつくりたくて、アルフォートにマシュマロを挟んで電子レンジでチンした。あのアルフォートのチョコレートみたい。

どろどろで甘くて、人の心の中みたい。正しくは僕の心の中みたい。もしくは君の心の中見たい。あ、今の見たいはわざとだよ。

途中で乗ってきた男の子。
マッサージをしてあげるからお金をください。
言葉がなくても通じる要求。
さてあげようか、あげまいか。
ここであげたらこの日のこの子は少しは救われる?だけど明日は?
ああ、いなくなった。

チョコレートの中を泳ぐあの家族。
笑う子ども。小学校。スーパー。
全部チョコレートの上。

青い船から見つめる。
青い船から感じる、風。
遠くの陸地の人?動物?

誰かの日常にいる非日常。

帰りが近い。元に戻る?元の日々?
ここにきてなにが変わったのだろう。

日本を飛びだして、現実を飛びだして、なにが変わるのだろう。なにが変わったのだろう。

帰ってくる現実は、日常は、いつだってそこにあるというのに。

このチョコレートをこえて、バスに乗って飛行機に乗ればそこは日常だ。

このチョコレートは頭の中に残るだけ。それも消えゆくかもしれない。

意味なんてない。きっといつか全部がなくなる。
だから今はチョコレートをみつめたい。
青い船を焼きつけて、溶かして溶かして焦がしたい。

ああ笑ってる子どもがいる。
とりあえずそれでいっか。
このチョコレートきっと甘くはないけれど。

どこにいたって笑える。人間の強さ。

なにをしても笑えない。人間の弱さ。

なにもできない僕の弱さ。
なにもできない僕の強さ。

家に帰ったら、アルフォートまだあったかなあ。

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