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【ソワレ/星街すいせい】不可思議なコード進行をざっくり紐解く

ホロライブの星街すいせいの新曲「ソワレ」。

初めて聴いたとき、サビの途中で転調しているっぽいことは感じたので「どんなコード進行なんだろう?」と気になっていたのですが、
ついにコード解析サイトに情報が載っていたので見てみました。

その結果、思ったよりコード進行が楽しいことになっていることが分かったので、ちょっとまとめてみようと思います。



1.事前知識

i) 参考にしたサイト

今のところ、「Uフレット」「楽器.me」の2サイトに情報があったので、こちらを参考にしました。

ただ、書いてるコードが2つでそれぞれ異なるところがあり、
それぞれのコードでよりしっくり来た方を説明部分に採用しています。


ii) この記事を読むにあたって

この記事は以下のような人向けの記事です。

・「スケール」でのコード名表記がわかる
  (CmajorスケールでのG7を「V7」と表記すること)
・コード理論というものをなんとなく知っている

また本記事は、基本的に転調前後付近での
コード進行にフォーカスを当てて書いていきます。



2.コード進行解説

i) 曲全体の調(キー)

まずはこの曲の調(キー)ですが、こんな感じでした。
※1番のみ

Ab major (Aメロ~Bメロ前半)
A major (Bメロ後半~サビ前半)
G major (サビ中盤)
A major (サビ後半)

初聴きで感じたようにサビ中で転調があったのですが、
それよりもBメロのAb major→A majorの半音転調が気になりすぎる。

転調する前後の調は、下の図で「近いものほど違和感がない」
というセオリーがあり、これでいうとAb→Aというのは
ほぼ半周違うため、普通にやると違和感アリアリなわけです。

https://qdadino.net/practice-bastien-relative-minor-scales


ii) Bメロ部:流れるような半音転調

というわけでこの凄まじいBメロ部を確認していきます。
コードを書き出すとこんな感じです。

1番Bメロ部

この1行目と2行目の間で転調が入っていますが…、
分かりやすいようにスケールで併記してみます。


1番Bメロ部

1行目最後がⅣ(サブドミナント)で終わっており、
コード進行の定石ではⅣ→Ⅰなどと繋がっていきますが、
この曲ではまさかのⅠ#/Ⅱ#という転調先のコード(Key:AmajでのⅠ/Ⅱ)にそのまま繋げるという荒技。

半音上の調という難しい調に転調するのだから、
代理コードなどを絡めた技術的な繋ぎ方をしてるのかと思ってたのですが、想像よりもずっとシンプルな進行でした。

メロディーラインも含めて見てみます。
下段に転調後の調も記してみました。

1番Bメロ部

転調前後のⅣ→Ⅰ#/Ⅱ#ですが、転調後のスケールで考えるとⅢ→Ⅰ/Ⅱということになるので、こう見ると無茶苦茶な進行というわけでも無いのかな?という気も若干しますね。知らんけど。

そして赤丸で囲ったメロディーの半音ずつの上昇・下降
これが転調前に入ることで曲に「浮遊感」が出て、転調しやすい土壌を作っているのでしょう。

浮遊感といえば、転調後のⅠ/Ⅱというオンコードも、
add9やM7系に近い浮遊感が出るコードですね。
オシャレなコードやメロディーラインでリスナーに気づかせずに転調するという作曲の技が光る部分といえます。


iii) サビ前:謎なのに気持ちいいコード

で、サビ前。
既に調はA majorに転調しているところ、

1番サビ前

「瞬いた」のところで唐突に放り込まれるⅢと、
そこからのⅣへの繋がりがめちゃくちゃ良い
んですよ!

画像の楽譜2段目がコードの音階を表しているのですが、
Ⅲ(C#)は本来のスケールに無い音(ファ)を含んだコードです。

スケールに無い音というのは、ざっくり言えば「気持ち悪い音」です。
で、Ⅲ→Ⅳと進行することでその音が無くなり、その瞬間「気持ちいい」に変わるわけですね。

それをよりによってサビ入りの瞬間にやるので、
サビに入った瞬間めちゃくちゃ「気持ちいい」という。

これ、スマホとかに電子ピアノアプリを入れて
実際にこの部分の和音とメロディ鳴らしてみてください。
「またたい”た”」の瞬間めちゃくちゃ気持ちいいんで。


iv) サビ途中:見逃してしまいそうな転調

最後はサビ途中の部分です。

サビは基本的にA majorの調で進んでいくのですが、
その調だとどうもおかしいのが画像2段目の「朝未き」以降の部分。

1番サビ

どうやらここだけ、どこかで全音下のG majorに転調しているようです。
試しに黄色でG majorでのスケールコードを併記してみましたが、これだとしっくりきます。

1番サビ

楽譜を出しながら少し紐解いてみます。
「大脱走さ」の部分はベースラインが半音ずつ下がっていくコード進行をしており、着地点となる「逃げだそう」の部分のコードはAm7です。

これは転調前のA majorではⅠm7となり、スケール外のコードです。
が、転調後のG majorで考えるとこれはⅡm7で、スケール内のコードになります。

そしてこのAm7以降、G majorキーで考えると
しっくりくるコードばかりが続きます。

ということはつまり、
半音下降系で下がった最後のコードが転調後のコード
という繋ぎ方をしているわけですね。

あまりにもナチュラルな転調…俺でなきゃ見逃しちゃうね…。



3.まとめ

以上、転調部にフォーカスを絞ったコード進行解説でした。
かなり雑な部分も多いですし、間違った認識をしてる部分も多々あるかとは思いますがご容赦ください。

この曲、作曲は「シル・ヴ・プレジデント」などでおなじみのナナホシ管弦楽団さんなのですが、こうやってコード進行を紐解いていくと
その作曲力の凄さが改めてよく分かりました。


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