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産みの親に手紙を書くとしたら・・・

「養子当事者同士での交流」「育て親さんとの交流」「育て親さん希望夫婦との交流」を通して、養子縁組、養子当事者への理解を広めていこうと活動している環の会・Youthの会は1年に3回のイベントを行っており、今回は富山県で開催しました。
毎回、いろいろなテーマを掲げて意見交換をしていますが、今回は「産みの親に手紙を書く」というお題で、実際に手紙を書いて、「なぜ、その人に書くのか」「何を伝えたいのか」をそれぞれ発表しました。

<産みの父の存在>
「この間も産みのお母さんに会ったばっかりだから、今回は父親に書いてみようかと思って・・・」という2人を除いて、全員が母親に手紙を書きました。
父親の情報が無いため、自分の中にほとんど存在がなく、自分の中に存在がないことすらに普段は気づいていなかったことを認識したと、全員が異口同音に言っていました。
「産みの父は『逃げた人』だよね。いい印象はないよ」と一人が言うと、「確かに~」「興味ないなぁ」と賛同の声。
しかし、その中で、「俺、昨日、実家に帰って、(育ての)オヤジと飲んだんですよ。そしたら、オヤジが、『産みのお父さんがいなかったら、お前は生まれてないし、今、こうして、お前と飲んでないんだよ。だから、お父さんは産みのお父さんに感謝してる』って言ったんです。そう考えると、俺も感謝してる」と一人が発言しました。すると、「なるほど」といった空気が生まれ、「お前のオヤジが、いい人だなぁ」という感想も漏れました。

<産みのお母さん>
ほとんどの人が、手紙の中で「あなた」と呼び掛けていました。
そして、「“お母さん”は育ててくれた人」という意見に、ほとんどの人が賛同していました。
物心がついてから会ったことがない人たちは、「産み母のことを考えたことはないです。空気みたいな存在」「知らないことで困ったことはない。知ったことで生じるリスクが怖い」「自分の理想の人じゃなかったらと思うと、会うのは怖いですね」「生んでくれただけで神格化している」「恨んだことはないけど、幸せを願っているかって言うと、そうも言いきれない・・・」など、産み母に対してさまざまな感情を話してくれました。
子どものころに手紙のやり取りをしたことのある人は、「子どものとき、自分のことや自分のきょうだいのことを気にかけてくれてたから、めっちゃ気になる存在」という母への思いを教えてくれました。また、「会ってみたい?」と問いかけられた最年少の参加者は「ううん・・・」と答えてしばらくして、「うん」と小さくうなづいていました。

<手紙>
「何を書こうか、思い浮かばなかった」「産み親さんのことを知りたいというより、自分のことを知ってもらいたいと思って書いた」という人もいれば、「思春期に産み親から手紙が来て、自分にきょうだいがいることを知った。自分は育ててもらえなかったのか・・・って、当時、それが悲しかった。そして、今日も手紙を書けなかった」という人も。
また、「手紙を書いてみたら、本当に産み親に出してみたくなった」という人もいて、事務局に手紙を託されました。

手紙を出したい人は、ここに投函してください!

それぞれが自分の考えや思いを伝えるなか、「へぇ、みんな産みのお父さんのこと知らないんだ。(知らないのは)私だけかと思ってた」「まじ、人それぞれすぎる!」「初めて参加したけど、自分と同じこと考えてたんだってわかった」など、自分との相違を感じる機会になったようです。

※今回の手紙の何通かは、「特別養子縁組で育った子どもたち」展で展示されます。

写真中央:環の会・Youthの会の志村歩会長

【「特別養子縁組で育った子どもたち」展のご案内】
 特別養子縁組の支援を始めて32年になる環の会で育った子どもが、環の会の家族たちを写真とメッセージでご紹介します。
期間:8月16日(水)~20日(日)
会場:私のぎゃらりぃ(福岡県宗像市土穴3-15-1)


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