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女性はなぜ下着にこだわるのか。~ランジェリー100年の歴史とともに~

こんにちは、WannaBeMEです☺️

唐突ですが、皆さんは下着に対する「こだわり」ってありますか?
私自身、普段はあまり意識していないけれど、
楽しみな旅行や大切な面接の日など、日常の場面に応じて下着を選んでいる自分がいる気がします🌿

実際に、『女性の心理と下着に関する意識調査(2007)』によると、約9割の女性が「特別な時や大切なシーンで身につける下着」すなわち、「お気に入りの下着」があるそうです。

そこで今回は、化粧や洋服と違い、隠れているのにもかかわらず、下着にこだわりをもつ女性の心理に秘められているものを探りたいと思います。
まずは、女性の下着がたどってきた歴史を紐解いていきます。

女性下着の歴史

ブラジャーの登場
明治初期になると衣服の洋装化が始まります。
しかし、洋装化の流れは政府高官や貴族などごく一部の階層の人々に限られており、西洋のドレスはもちろん、下着ですら多くの人々にとっては非日常的で高価な衣装だったのです。

ブラジャーという下着が生まれ、初めて日本に登場したのは今から約100年前の大正3~8年でしたが、普段は着物で過ごしている当時の一般女性に洋装下着はほとんど普及していませんでした。

そして、戦時体制への移行にともない、洋装文化の勢いは止められてしまいます。

洋服の“裏方”としての下着
そして戦後、それまで和装が主役だった一般女性の日常生活に初めて登場したときは、ブラジャーという名前すら知らない人が多くいました。
そんな中、アメリカの華やかな文化が流れ込み、女性のファッションにも変化が生まれます。
欧米のファッションに倣って女性たちが自由におしゃれを楽しむようになるとともに、それらのファッションを綺麗に着こなすための手段として洋装下着の存在が広まりました。

着物では胸を押さえて直線的なシルエットをつくるがゆえに、戦前のブラジャーは「乳房バンド」「乳押さえ」などと呼ばれていましたが、洋服の場合は異なります。
ブラジャーでバストを上げ、パッドでボリュームを演出し、コルセットでウエストを細く絞り、パニエでスカートを膨らませるメリハリのあるスタイルが流行します。

このように、洋服自体のシルエットを形作り、体型を補正するものとして、
下着に対する女性たちの関心を集めていきました。


下着ブーム~男性目線の下で~

当初、ブラジャーやコルセットは、あくまで洋服のシルエットを美しく形作るための“裏方”として受け入れられましたが、下着自体がおしゃれな「ファッション」として取り上げられることも少なからずありました。
しかし、それらの記述の多くは、女性の下着に対する男性の目線を意識したもので、下着を提供する側も「女性の美が男性の対象として存在する」と述べていました。

このような執拗な男性の視線に疑問を投げかけ、女性の下着は女性の心を解放し、より自由な生き方へ導いてくれると主張したのが、1956年の「下着ブーム」を率いた下着デザイナーの鴨居羊子さんでした。
鴨居さんによれば、「性のモラルの変化」が下着ブームの大きな要因であり、「肉体の魅力を堂々と発揮すれば、異性に優位に立ち向かえることを頭の中の知識でなく肉体で理解し始めた人は、その効果的な手段を下着に求めるのです。」と分析しています。
鴨居さんは、下着は白に限るという固定概念を打ち破り、女性の健康的な官能性を解放する象徴として、豊富なカラー展開、さらには大胆なカッティングやプリント柄の下着を世に送り出しました。
彼女がもたらした変化は、これまで陰に隠れていた下着に光を浴びせただけでなく、女性の身体そのものの魅力を輝かせたことにもあると言えます。

女性下着市場の変遷
戦後60年ほどを経た現在、女性の下着市場規模は1975年をピークに、縮小傾向にありますが、言い換えれば、その時期にほぼすべての女性にブラジャーが普及したことになります。

その間、下着はその機能やデザインを多様化させることによって、様々な女性のニーズに応え続けてきました。つまり、女性のこだわりを叶える下着は、洋装文化における必需品という“陰の存在”から、それ自体に価値がある衣料品として存在感を高めてきたのです。

下着における女性の心理

白色しかなかった下着も、時を経た現在は、実に様々な色やデザインのものがあります。
その中から好みのものを選び、そして特別な日にはお気に入りの下着を着る。
外からは見えない下着の外見に、なぜ女性はこだわりをもつのでしょうか。

『第2回:女性の心理と下着に関する意識調査(2008)』によると、「お気に入りの下着」を着用したときの心理的効果は、「アピール」「気合い」「安心感」の3つに大きく分けられるそうです。

アピールの効果
「好きな異性に下着姿を褒められると嬉しい」「恋愛気分を盛り上げてくれる」などと、特別な関係にある異性に自分の魅力を主張するケース。異性・同性問わず、他者の目に下着が触れ、アウターとしての役割を担う状況において、下着は自己のイメージを演出するアイテムになる。「アピール」の効果を期待する場面としては、「恋人やパートナーと初めてデートをするとき」や旅行に行くとき」「友人と旅行に行くとき」など。

気合いの効果
「心が引き締まる」「やる気を起こしてくれる」など、スイッチが入って積極的な気持ちになれる。場面としては、「大切な試験を受けるとき」など、プレッシャーを受ける状況とも関連している。(おまじない、願掛けのようなもの…?🧚🏻‍♀️)

安心感の効果
お気に入りの下着を着けると「ほっとする」「リラックスできる」といった心の癒しやゆとり感。「落ち込んだ気分から立ち直りたいとき」などに、マイナスの感情が低減され、気持ちが和らぐという効果。

これらの心理的効果は、下着の持つ「デザイン性」「補整性」「ブランド性」「つけ心地」などの特性によって作り出され、下着にこだわる「意味」を与えています。

女性の解放とともにあった女性の下着の歴史と、下着がもたらす心理的効果を見てきましたが、お気に入りの下着を着ているという実感は、単に自己満足なだけでなく、個人が社会と関わる際のポジティブなエネルギー源とも深く結びついているのではないかと思いました。

ボディポジティブ

近年は、「痩せている体=美しい」という過去の固定概念に縛られず、自分自身で美しさの基準を決め、プラスサイズの体をありのままに愛そうというボディポジティブの考えが広まり、体型にも多様性を取り入れた女性の下着ブランドの広告が増えています。

しかし、日本女性の自分の身体に対する評価を見てみると、自身のプロポーションについて、「満足」と応えた女性は、パリで57%、ニューヨークで41%に対して、東京ではわずか10%。『World Women Now(ワコール、2002)』)

自分の身体のコンプレックスをすべて無くし、満足することは難しいかも知れませんが、
ボディポジティブのマインドがもっと広まることで、ありのままの自分の体形を少しでも好きになりやすい世の中になると思います。

~おわりに~

女性の身体と心に密着する下着は、普段は人目に触れないからこそ、
外からの目線に惑わされることなく選ばれ、私たちの自信や活力にもなります。
そして、日々社会の目に触れる私たちに、見知らぬ誰かが決めた理想の体型なんて気にせず、
なにを身に纏い、どのように自分の身体を表現し、そして生きるかは自分自身のものさしで決めていいのだということを教えてくれるような気がしています。
そんな風に考えると、何気ない毎日の下着選びが少し楽しみになりませんか?💐

参考文献
菅原健介+COCOROS研究会(2010)『下着の社会心理学 洋服の下のファッション感覚』朝日新聞出版

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