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大事なことはプラモデルが教えてくれた

 この記事は学生フォーミュラの現役学生、OB、審査委員などの関係者によって12月9日から25日まで一日一記事づつリレーしていくアドベントカレンダーです。
アドベントカレンダーはこちらからどぞ。
 前回の記事はあちゃぴいさんの『チーム内ロストテクノロジー:ターボ搭載初年度開発日記』でした。


みなさんこんにちはwankonyanです。
私が誰なのかというのと学生フォーミュラについての話は丁度いい具合に記事が出たのでこちらを参照頂ければ。

今年のF1日本グランプリ、悪天候で土曜日のセッションが中止になり、その時にグロージャン選手がタミヤ製タイレルP34のプラモデルを組み立てたことがtwitter上で話題になりました。

今でも流通しているこの商品ですが、元々最初に日本でF1レースが行われた翌年の1977年にタミヤ1/20グランプリコレクションシリーズNo.1として発売された物の改修版なんです。
タミヤのサイトを見るとかなりの商品が廃番になっていますが、タイレル6輪車は21世紀に入ってからパーツを追加して1977年モナコ仕様として復活しています。時代としてはスーパーカーブームが一段落してちょっとしたF1ブームが有ったのですが、その頃の商品です。
他のF1マシンが4輪車なのにこのタイレルP34だけ6輪車。それでいてそこそこ速くてビジュアルもインパクトが有る。当時小学6年生だった私はなけなしのお小遣いをはたいて買って作りました。
以後マクラーレンM23ロータス78ウルフWR1ブラバムBT46フェラーリ312T3とバリエーションが増えるごとに買い求めました。
ラインナップは最初コスワースDFV搭載のいわゆるキットカーが多かったのですが12気筒、ウイングカー、ターボと時々のトレンドが盛り込まれたマシンが模型化され、リジェJS11ウイリアムズFW07ブラバムBT50/BMWと続き10作目のルノーRE30Bが出るころに私は高校生になっていました。

今と違って当時普通に触れることが出来るF1情報は主としてオートスポーツをはじめとする雑誌、動画はひと月以上遅れてダイジェストのテレビ番組。レースの結果を速報で知るにはスポーツ新聞や全国紙のスポーツ面で優勝者のみとかいう頃です。たまに速報的にTVKの英語ニュースとかで報じられたりして見れたらラッキーでした。

そんな状況の中、立体的にF1マシンが捉えられるタミヤのプラモデルはおぼろげにレーシングカー(実物)を作りたいと思い始めた私には格好の教材でした。

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このように同じスケールで並べると各車年代の違いがわかったり


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ウイングカーってこうなってるんだぁってわかったり

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実車同様エンジンがフレームの一部になっているので車両組み立ての疑似体験が出来たり


初めの頃は無邪気に組み立てていただけなのに台数をこなし、また同じものを何度も作るうちに経験的に出来上がりは良くなるし、小学生だった頃から高校生にもなると工学的な知恵も付いて色々なことが見えてきました。

薄いプラスチックを張り合わせて立体的なモノコックを作ると剛性が出る。
サスペンションアームを組み立てて立体的になると細いプラスチックの棒でも重量が支えられる。
なるほど、そういうことなのね!と

資金的に余裕が出来ると今度は1/20では満足できずに1/12スケールにも手を出します。

タミヤのサイトを見るとこちらも生産休止品ばかりで売ってるものはプレ値が付いて高いですね。

スケールが大きい分こちらは更に精密に出来ていて、サスペンションがリンクで動いたり、エンジンの再現性が上がっていて、燃料噴射のホースまで付いていてマシンを組み立てる疑似体験の精度が高まり、細かい部品の名前も覚えることが出来ます。
かのエイドリアン・ニューウェイもきっかけはタミヤのプラモデルからだったとか。


設計者にとって大切なことは3次元でモノを考えることが出来ること。今でこそ3DCADで設計することが当たり前になっていますが、昔は2次元の図面で干渉なくスマートにレイアウトすることが必要で腕の見せ所でした。
「ここにこれぐらいのスペースが有るなぁ」とか「この配管はこことここの間を通してこっちに曲げて」とか設計を攻めれば攻めるほど難解になるわけでそこを上手くまとめるにはプラモデルで養われた素養が効いたような気がしています。

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ラジアスロッドとエキパイと水配管の3次元的な場所の取り合い


初めてタイレルを作って約10年、社会人になった私は勤務先の設計室でタミヤのプラモデルで散々作ったコスワースDFVの実物と対面します。
その時は「ついにオレもここまで...」と思いました(笑)
長きにわたりF1で使われ、生産台数も多いDFVを利用したF1の下のカテゴリーF3000のマシンでも使われたのです。
設計したエンジンマウントでパチッとエンジンとモノコックが繋がる嬉しさを実物で体験できました。

先に述べた10作目のルノーRE30B(1982年)以降タミヤのグランプリコレクションは休止状態になります。その後ホンダのF1復帰(1983年)からしばらくたった1986年、チャンピオン争いをしたウイリアムズFW11がモデル化されました。レギュレーションがフラットボトム化されたのに伴い、作りやすさを追求してかモノコックとエンジン/トランスミッションが床の上に乗る構成になっています。
レイアウトは解っても作る楽しみが少ないんだよなぁ。
最近はプラモデルを作る人が少なくなって販売個数も見込めず、模型メーカーがチームに支払うロイヤリティも高くなり新商品が年々減っている状況です。
エブロのロータス88は高いけどCAD/CAMのお陰で1/20でも緻密でいわゆるツインシャーシがどうなっているのかわかるのでお勧めです。


学生フォーミュラチームのメンバーでフォーミュラカーのプラモデルを作ったことが無い人は一度組み立ててみることをお勧めします。
少し道が開けるかもしれませんよ。

そんなわけで強引に学生フォーミュラに繋げたところで明日はきくいさんの「とある空白の一年の話(仮)」です。


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