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なぜ海の中から生命が誕生したのか?

先日投稿した「生命の起源 ~化学進化説~」において、最初の生命は原始海洋から誕生したと書いたと思う。だが、そもそもなぜ生命は陸上ではなく海洋から誕生したのだろうか?

化学進化説では無機物から低分子有機物が生じたと書いたが、より詳しく説明すると紫外線や雷の激しいエネルギーにより空気中の無機物から低分子有機物が生成されたという説があり、これはミラーの実験でよく知られている。また、海洋底の熱水噴出孔付近では水の沸点が数百度にもなりアミノ酸をはじめとする多くの有機物が生じたという説や地球に衝突した小天体(隕石)から有機物がもたらされたという説まである。

話が少し逸れたが、とにかくこれらの有機物は雨とともに降り注ぎ海に蓄積されていった。これが原始海洋が「有機物のスープ」と言われる所以だ。アミノ酸や糖などの低分子有機物は互いに繋がりやすいという性質を持っているので海底にある火山から供給される熱エネルギーによって低分子が結合し、タンパク質や炭水化物といったより複雑な高分子有機物が生成された。また、海底に堆積する金属化合物は有機物を吸着することで低分子が繋がっていく化学反応を促す触媒の役割を果たしていたと言われている。

仮にこの変化が地上で起こっていたら、高分子有機物は地表を飛び交う紫外線荷電粒子によってズタズタにされていただろう。海がこれらの脅威をはねつけ高分子有機物を守っていたからこそ生命の誕生まで辿り着けたのだ。

およそ46億年前に地球が誕生し、40億年前頃になると地上のマグマが冷やされ陸地ができた。その際に発生した水蒸気が海をつくったことで生命の誕生の準備が整ったというわけだ。

※荷電粒子・・・電荷を帯びた粒子のこと。電子や陽子、アルファ粒子、イオンなど。

参考文献:廣澤瑞子,「眠れなくほど面白い 生物の話」,日本文芸社出版,(2017).

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