最後の就学相談会(その9)

《この子を歓迎しない社会》

「この子を守りたい」

守る? 

何から?

「この子を脅かすものから」
この子を脅かすものは何?

「この子を歓迎しない社会」

保育園も地域の小学校も、この子を受け入れてはくれない。
校長先生に「いじめられますよ」と言われる。


「どうせ分からない授業を聞いているだけなのに、教育なんて意味があるの?」といわれる。

ときには、この子のせいできょうだいがいじめられたらかわいそうでしょうという声が聞こえてくる。


「どうしてもというなら、お母さんが面倒みて下さい。担任は一人でクラスの全員をみなければいけないんです」。「この子もクラスの一人」という言葉をのみこまなければ、受け入れてはくれない。


遠足もプールも運動会も、親がつきそうのが当たり前といわれる。
修学旅行さえ、バスの後を車で追いかけ、ホテルの部屋でこの子と二人。

こんなにも「歓迎されない」場所に、どうして6歳のこの子を行かせられる?
これだけでも、守る理由は十分でしょう?
親なんだから、まだ小さなこの子を守るのは当然でしょう。
親なんだから、きょうだいを守るのは当然でしょう。

子どもだけじゃない。この子を学校に入れれば、親も孤立させられる。
PTAの会報に「めいわく」と書く校長もいた。
クラスの保護者会で、どうしてここにいるのかと問い詰められた親もいる。

「この子を歓迎しない社会」
「この子を地域の小学校に入れようとする親を歓迎しない社会」
そんな社会から、この子を守れるのは親だけでしょう。

       □

こう書いてきて、あれっと思う。
ふつう学級の「怖れ」から、子どもを「守る」ためにあきらめる、その理由を考えるつもりだった。

でも、ここで「例」としてあげたのは、どれも「ふつう学級」の親から聞いた話だった。
私が聞いてきたのは、「怖れ」から「守る」ために、「あきらめない」話だった。

「この子を歓迎しない社会」から、この子を守る。
「この子を歓迎しない社会」から、この子の子ども時代を守る。
「この子を歓迎しない社会」から、この子の今を守る。

今。
次は?
この子はどうやって「この子を歓迎しない社会」に出ていく?

守る。

今も。

次も。

「この子がいることが揺るがない場所、つながり、私たち」を守る。

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