ようこそ就学相談会へ(4)
《まどみちおの詩と私たちのおもい》
まどみちおさんの詩。つづき。
空気
まどみちお
ぼくの 胸の中に
いま 入ってきたのは
いままで ママの胸の中にいた空気
そしてぼくが いま吐いた空気は
もう パパの胸の中に 入っていく
同じ家に 住んでおれば
いや 同じ国に住んでおれば
いやいや 同じ地球に住んでおれば
いつかは
同じ空気が 入れかわるのだ
ありとあらゆる 生き物の胸の中を
きのう 庭のアリの胸の中にいた空気が
いま 妹の胸の中に 入っていく
空気はびっくりぎょうてんしているか?
なんの 同じ空気が ついこの間は
南氷洋の
クジラの胸の中に いたのだ
5月
ぼくの心が いま
すきとおりそうに 清々しいのは
見わたす青葉たちの 吐く空気が
ぼくらに入り ぼくらを内側から
緑にそめあげてくれているのだ
一つの体を めぐる
血の せせらぎのように
胸から 胸へ
一つの地球をめぐる 空気のせせらぎ!
それは うたっているのか
忘れないで 忘れないで…と
すべての生き物が兄弟であることを…と
◆
この詩を読みながら、私は「呼吸器」を使っている子どもたちとの空気を思いました。まどさんの詩の通りに。
◇
呼吸器
わたしの 胸の中に
いま 入ってきたのは
いままで ママの胸の中にいた空気
そしてわたしが いま吐いた空気は
もう パパの胸の中に 入っていく
同じ家に 住んでおれば
いや 同じ教室に住んでおれば
いやいや 同じ地域に住んでおれば
いつかは
同じ空気が 入れかわるのだ
ありとあらゆる 子どもの胸の中を
きのう 庭のアリの胸の中にいた空気が
いま 呼吸器の中に 入っていく
空気はびっくりぎょうてんしているか?
なんの 同じ空気が ついこの間は
南氷洋の
クジラの胸の中に いたのだ
4月
わたしの心が いま
すきとおりそうに 清々しいのは
見わたす子どもたちの 吐く空気が
ぼくらに入り ぼくらを内側から
級友にそめあげてくれているのだ
一つの体を めぐる
血の せせらぎのように
胸から 胸へ
子どもの宇宙をめぐる 空気のせせらぎ!
それは うたっているのか
忘れないで 忘れないで…と
すべての子どもが子どもであることを…と
◆
どうしてだろうと
まどみちお
どうしてだろうと
おもうことがある
なんまん なんおくねん
こんなに すきとおる
ひのひかりの なかに いきてきて
こんなに すきとおる
くうきを すいつづけてきて
こんなに すきとおる
みずを のみつづけてきて
わたしたちは
そして わたしたちの することは
どうして
すきとおっては こないのだろうと・・・
◆
「どうしてだろう?」 8才のときから 思いつづけてきたことば。
「どうしてだろう?」50年以上、感じつづてきたことば。
◇
こどもたちへ
どうしてだろうと
おもうことがある
どの子にも きょういくが
ひつようと いわれてきて
ひのひかりの なかに いきてきて
どの子にも つながりが
ひつようと いわれつづけてきて
こんなに やさしい
こどもたちに であいつづけてきて
わたしたちは
そして わたしたちの することは
どうして
すきとおっては こないのだろうと・・・
◆
「どうしてだろう?」の、いまの私のこたえ。
◇
授業というおんがく
ひとりで楽譜をみても
音はきこえない
先生だけのことばに
おんがくはきこえない
みんなで演奏するから きこえる
あたらしいことばが きこえる
みんなのふしぎが きこえる
みんなのまなびが きこえる
しらなかったことを しる
わからないことを なやむ
かんがえることを まなぶ
つたわりあうことを よろこぶ
みんなと演奏するから きこえる
みんなの声が きこえる
じぶんの声が きこえる
あたらしい学びにであい
あたらしい自分にであう
授業というおんがくが きこえる
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