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一人芝居『I dig』備忘録

劇団わに社 副社長の浅井千寿代です。

おかげさまで、劇団わに社10周年記念営業『しがみつく鰐』が無事に終演しました!!

株主様(よしくん様)が撮影してくださったお写真


営業(公演)についてのお話は、Twitterをご覧ください!

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ということで、今日書きたいことは第10営業のことではありません。昨年、名古屋、大阪の2都市で上演させていただいた一人芝居『I dig』について、noteでは書いたことがなかったので最後の振り返りとしてまとめたいと思います。

一人芝居『I dig』備忘録


「モノ作りをするとき、制約があるからこそ面白くなることもある」

その言葉を聞いて、私が昨年出演した一人芝居『I dig』の制作期間中ずっとそのことを感じていたことを思い出しました。

『I dig』は、数々の制約がなければ生まれていなかったです。

現在、新しい一人芝居作品に向けて動き出しているのですが、この機会にあの作品がどうやって生まれたのかを書き残しておこうと思います。

制約だらけのスタート

一番の制約となったのが「穴を掘る」ということ。

なんにも構想のない段階から、この物語の主軸である「穴を掘る」という行為をすることだけが決まっていました。随分前からそれだけは鰐塚先生のやりたいこととしてあって、私も面白いと乗っかりました。

そこから始まって「なんのために穴を掘るのか」脚本家の鰐塚わに先生、演出家の林優さん(社長)、出演の私の3人で意見を出し合いました。

第一に、この作品は 最強の一人芝居フェスティバル INDEPENDENT:NGY22、その先のINDEPENDENT:22で上演することを目的にしたものでした。

なので、諸々締め切りがあります(笑)

まず、東海地域版インディペンデントINDEPENDENT:NGYに応募をするところから始まります。
そのタイミングで、あらすじの提出が必要でした。本来ならば脚本を完成させておきたかったのですが間に合いませんでした。(次はそうならないよう、現在鋭意制作中!)

※追記:あらすじは必須ではありませんでした!作品の内容を書ける範囲でとのことだったのを記憶違いしていました。

ということで、あらすじが先に出来上がりました。それがこちら。

『I dig』あらすじ

頭の固い時代とはおさらばだわ。私、これから罪を犯します。だから穴を掘るんです。めちゃくちゃ素敵な犯罪をするの。石油も温泉も出ちゃうかも。だから、この穴は私のために掘ってる。決して誰かの罪滅ぼしじゃない。私の決意表明よ。あはは。泥だらけになるのなんていつぶりでしょ。今日も明日も掘ります。そこからダイヤも飛び出てくる。きっとキラキラの私のために今日も血豆と汗と泥をまとって掘り続けるんだわ。ああ、素敵。


これは、降ってきたのかのように
鰐塚先生がすらすらと書き上げました。

(もしかしたら、ずっと考えてたのかもしれないけど)

私はこのあらすじを最高だと思いました。すごく胸がときめいてワクワクして、この作品を観たいと思いました。

あらすじができたことにより、なんとなく作品の雰囲気や方向性が見えてきました。同時に新たな制約ができました。そりゃそうです。あらすじと、あまりにもちがうことはできません。

「罪ってなんだ?」「なんの決意表明?」

私がやりたかったこと

ストーリー以外にも、私はこういう作品がやりたいっていう構想がたくさんありました。この時のために、3年かけて自分の好みの素材を集めるように色んな一人芝居を観ました。

その中でも特に大事にしたかったことは、役者がやる人、観客が観る人だけの関係ではなく、もっと相互的に作用する関係になること。劇場にいるみんなで一体感を味わいたい。一緒にラストまで進んでいきたい。

そのため、極力主人公以外を登場させたくない。観客に向かって語りかけるスタイルでやりたいとお願いしました。

他にも小道具は最低限にとか、私の魅力を発揮できるようにしようなど、社長も私も一度インディペンデントを経験したからこそ考えていた要素を取り入れていきました。


素材は集まったけど…


・穴を掘るということ
・あらすじ
・作品のスタイル、方向性

ここまでは決まったものの、ここからが難関。

「罪」とはなんだ、なぜ穴を掘るのか。

最初に鰐塚先生が書いて見せてくれたのは、とある「女優」の女の子とお母さんのお話でした。6~7割ができた段階のものを読んだとき、自分のために穴を掘るというところは最終的に完成したものと同じだし、普通に観たら面白いとも思いました。

でも、私達がインディペンデントでやると考えたときに「これでいいのか?」と思ってしまった。

鰐塚先生なら絶対もっと面白いものが書けると思いました。でも、脚本の締め切りも近いし、ここまで書いてくれたものを書き直してほしいと言うのも…など色んなことを考えました。

考えた結果、そのまま伝えました。

そしたら、やっぱり鰐塚先生も同じことを考えていてくれて最初から書き直すことになりました。
正直このタイミングで振り出しに戻るのは、冒険すぎて精神的に3人ともしんどかった。

でも、ここで妥協しなくて本当に良かった。

INDEPENDENT:22 トライアルを観て


この辺りのタイミングで、私が所属する劇団わに社の正社員(劇団員)のミヤマまゆが出演する「INDEPENDENT:22 トライアル」を観に大阪へ行きました。

そこで、15分の一人芝居を5作品観ました。
前日に行われていた4作品と合わせて9作品の中から2作品が選出され、大阪本戦でのオープニングアクトを務めるというものでした。

どの作品も凄く良かった!!!!!どのチームも本気度、熱量がめちゃくちゃ伝わってきて一人芝居のカッコよさを改めて実感しました。

そして、帰りの新幹線で絶望しながら自分の作品のことを考えました。面白い作品とはなんだ、みんなに愛される作品とはなんだと考え続けていた私の頭をガツンとやられるような作品ばかりでした。私には出来ない作品ばかりだった。自分が目指している作品が綺麗事のように思えました。

落ち込みきった結果

「私と社長と鰐塚先生が、面白いと思うものを作ろう」

という結論にいたりました。万人に受けるとか、こういうのに人は感動するとか、もう知らん。私は、なんだかんだ鰐塚先生の書く本がこの世で一番好きなんだ!綺麗事がなんだ!私達がめちゃくちゃ面白いと思えたらそれが最高だ!!!

帰ってすぐ、社長と鰐塚先生にその旨を伝えました。

そうして、愛子爆誕

INDEPENDENT:22トライアルで感じた悔しさが役に立ち、自分がどんな作品をやりたいのかがより明確になってきました。自分たちの魅力は、かっこよさよりも泥臭さ、滑稽さにあると思いました。

その時に、鰐塚先生に送ったLINE

ここから、どんどん動き出していきました。

こうして

『マッチングアプリで知り合った男に初デートで振られた復讐に、落とし穴を掘る』

クレイジーな女 愛子ちゃんが誕生しました。

これを思いついたのは社長なのですが、みんなで腹抱えて大爆笑しました。その後、鰐塚先生がすぐに書き上げてくれて稽古で本読みして、さらに大爆笑して、なのに、後半は泣けました。

私達らしい傑作が完成した瞬間でした。

全部は書きませんが、劇中に使った音楽、台詞の一つ一つにも色んなストーリーがあって、経験の全てを詰め込みました。

数々の制約と沢山の試行錯誤の末に生まれたこの『I dig』という物語は、私の宝物になりました。

最後に

『I dig』期間中、ここには書ききれないくらい、嬉しいことも苦しいこともありました。初めて社長に、喧嘩覚悟で色んなことを言ったし傷つけてしまったと思います。不安で情けないこともいっぱい言いました。社長の心の広さに感謝しています。

結果的には

INDEPENDENT:NGYでは、願っていた通りの客席と一体となって大盛り上がりして最高の時間を過ごしました!!!

そして、念願の大阪本戦へも招聘していただきました。大勢の応援してくれていた方々が、自分ごとのように喜んでくれて本当に幸せでした。

左)社長 中央)私 右)坂本


大阪本戦とっても楽しかった。今の自分が出来ることをやりきりました。後悔はない!でも、後悔はなくてもめちゃくちゃ悔しい!!!

思っていたような爪痕を残せれなかった。

一人芝居をやるとき、毎回これが終わったら役者辞めようって本気で思っています。こんなことやってたら寿命が縮む!稽古期間中から、ずっと緊張でおなか痛いし!

でも、大阪を終えたとき
ここで終えてたまるかと思いました。

ここからが始まりです。
また必ず、INDEPENDENTの舞台に立ちます。

社長と鰐塚先生と、もっとすごい景色を見に行きます。


ひとまず、この備忘録をもって『I dig』は完結です。

関わってくれた全ての皆さま、
『I dig』を愛してくださった皆さま

心から感謝しています。
ありがとうございました!!!

『I dig』を愛してくれたアーティストまっしゅななみが作ってくれた楽曲「I dig.」のMVもありますので、ここまで読んでくれた皆さまは、絶対に聴いてみてくださいね♡

では、また。


I dig. / まっしゅななみ

作詞・作曲: まっしゅななみ (劇団わに社)
編曲: tmy

−−−−−−−歌詞−−−−−−−−−

はじまる あなたが ここから はじまる
掘り起こした自分を抱いていけ
ここから これから

きっと才能なんてないこと
きっと特別なんてないこと
気づかないうちに気づいて
あなたも大人になった

夢だけじゃ生きていけない
理想は妄想に他ならない
気づかないうちに常識になって
あなたも大人になった

でも今、手に取った覚悟で
掘り起こす自分は惨めで
ガラクタばっか出てくるだろうが
あなたは進むと決めた

探していた愛はあなたが求めていた愛は
誰かじゃなく あなたがあなたを見つけること
どろどろになったあなたを誰かが笑った
ぼろぼろになったあなたをあなたは笑った

自分はヒーローじゃないこと
自分はヒロインじゃないこと
受け入れた方が楽だと気付いて
あなたも大人になった

なってしまった
出てきたガラクタは
確かに宝物だったのに
埋めて隠して 埋めて隠した
あなたはそれを掘り返す

愛で

夜明けを待つ今がどれだけ苦しくても旭が
昇るように這い上がる
汚れた宝石を手にして

探していた愛はあなたが求めていた愛は
嫌いごと全部 全部あなたをあなたが愛すること
誰でもなくあなたひとりが救われたならいい
誰でもなくあなた自身をあなたが愛せたらいい
それだけでいい


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