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日本語教育コースデザイン実践 vol.1

数日前、とあるインタビューで夢を聞かれたので、「近い将来としてはコースデザイン」と答えたら、降ってきた、思わぬ形で。

私の中でコースデザインはインストラクショナルデザイと直結する。そして、インストラクショナルデザインは行動中心主義と相性がいいと思うので、そういうことになる。が、コースをデザインするって、実は、いきなり直前になってフられる(仕事として)とか、教材がない、注文する時間もないとか、目的が曖昧、みんな若干違うことをいう、いうことが変わる、そもそもコース期間がはっきりしないとか、そんなケースはごまんとあるんだろうなと。きっと、想像していたような潤沢な時間とお金とか、明確なデザイン条件とか、じゃなければ自由とか、そんな恵まれた環境でデザインできることのほうが稀なんだろうなと。ここ数年の観察からも思うわけです。

とはいえ、はじめてのゼロからのデザインなので、いろいろ書きたい。


目的を設定する

現状を鑑みて、とりあえず書き出す。
・JLPT N1取得
・会話
 ビジネス会話、マナー
 生活会話
 談話能力向上
・漢字読み強化
・パソコン入力
・日本事情的なもの
・作文(必要か?)
・履歴書
・とにかくアウトプット

いくつかは会社の意向であり、いくつかは日本で働くにあたり不足していると思われるものであり、いくつかは書き出してみたものの必要ないんじゃないかというもので、わたしとしては、なんせゼロ初級からJLPT一辺倒で勉強してきた学生なので、とにかくアウトプットを通して日本語を使うことの底上げが必要じゃないかと感じている(インプットに基づいたアウトプットも含め)。ただし、生活会話ぐらいは本人がなんとでもするから(さすがにJLPTといえどもN2受験までいけば、そのくらいの能力はあるはず)とくに扱うつもりはない。ちなみにN1取得は会社の意向だけど、教材が一切ない上に1か月後には渡航して勤務開始という環境で、今じゃないだろうと判断。

そんな感じで、大枠の次のように設定した。
・ビジネス会話、マナー(会社と同僚の意向)
・談話能力向上(経験や意見を述べる)
・漢字読み強化(仕事、生活で必要な上に苦手) 
・パソコン入力
・日本事情的なもの(動機づけを考慮)
・履歴書(会社の意向、ワークショップ的でよい)

これらをCan-doに落とし込んでいく。ただ、その前にどうしようもない制限や縛りを反映させざるをえない。このあたりで行動中心主義が崩れ始める。

Can-doを設定する前に…

どうしても以下の条件が立ちはだかる。
・教材がない、注文する時間もない
・プリント(紙)は基本使えない
・プロジェクターがない(ホワイトボードはある)
・デバイスは学生のスマホのみ(Wi-fi 学生負担)
・1日6時間週6日の授業を教師2人で回す(他の授業も担当する可能性あり)
・期間は一応1か月だが(勝手に決定)早く抜ける学生もいるし、さらに数ヶ月残る学生もいるらしい

必然的に教材はオンラインで無料のものを見繕う、プリント類は極力コンパクトにしてデータ化しWhatsAppグループで共有、翌日の準備を1日3〜4時間で終えられる内容などが避けられないのではないかと思うのだが、もっとMind Shift すれば道があるのだろうか。とにかく、Can-doがあっての教材・授業内容ではなく、使用可能な教材・実現可能な授業内容あってのCan-doになるわけで、これをやってしまうともはや行動中心じゃないと思うのだけれども、前に進むしかない、あと数日で始まるし。

とにかく教材を探す

国際交流基金のみんなの教材サイトがですね、こんなに充実しているとは知らなかったんですね。本当は「ひきだすにほんご」も使いたかったんだけど、プロジェクターがないなどの環境的理由から断念。現状から劇的な変貌を遂げるとロクな結果にならないというトラウマから、反転授業などは考えていない。ということで、みんなの教材サイトをフル活用して教材確保、科目設定を行なった。

★使用教材と科目
①日本では今
 日本事情として扱い、インプット(読解)からアウトプットにつなげる
②B2教材
 レベル的に適当なので、ここでしっかりアウトプット活動(成果物)
③NHK Web News
 漢字・語彙に触れて、情報が得られることを目的とする
④ビジネス会話・マナー
 どちらも教材があるのでそれを使用
 日本vsスリランカという方向にはしたくない

もう、ここなんだよね。使用可能な教材で全てが決まってしまったと感じるわけ。ここまで決めておいて、各科目のシラバス的なもの(全く求められていない)を作成するときにはじめて、Can-doへの落とし込みをしたのです。

不安なわたしにひっかかった谷繁元捕手

実はこれが書きたくてNOTEにしようと思ったんだけど(笑)。野球好き(楽天ファン)のわたしは、野球系のYoutubeをマメにチェックしておりまして、その中で谷繁さんがおっしゃったこと。

ある程度理想っていうか、そういうものを思いながら全てやるわけじゃん?でも、できないでしょ?難しいんです、できるわけない。それは相手がいることだし、ピッチャーもやっぱり人間だし、試合も常に動きがあることだから

谷繁ベースボールチャンネル(Youtube)

キャッチャー論の中で出てきた話。キャッチャーには我慢が必要で、それはどういう我慢かというと、自分がイメージした通りにできないことに対する我慢だそうです。なんかすごくコースデザインと共通するものがある気がして、はっとしました。こんなにすごい選手が「できるわけがない」っていうんだから、というかその通りだし、コースデザインにも我慢が必要なのではないかと思った。どんなに考え抜いても(作り手が理想とする)結果につながるとは限らない。それを積み重ねていくしかないし、それが大事だし、それをするには我慢、もしかしたら寛容さともいえるのではないかと思うんだけど、そういうものが必要なのではないでしょうか。

ということで、むやみに不安に思う必要はないという結論。やっぱりですね、プロ野球選手って一流なわけですよ。その一流な人たちの頭の中ってすごいんだなと思う。受け手が野球好きであるという条件は必要だと思うけど。