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ペルジーノ展によせて

本稿は、「ウンブリアの巨匠|ピエトロ・ペルジーノ展」のキュレーターを務めたスタッフより、お届します。

大学〜大学院時代に初期ルネサンス美術について研究。
大学院修了後は複数の美術館・博物館にて学芸職などを務め、
美術がもっと身近になる日常の実現を目指すため、日々模索中。

という、HASARDの新スタッフです!


ペルジーノの研究を始めたきっかけ

ペルジーノの作品をまとめて見たのは、2007年、東郷青児美術館(当時)の企画展でした。

その当時の私は、イタリア・ルネサンスといえばミケランジェロの「最後の審判」やレオナルド・ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」に代表されるような、写実的で動的な表現だと思い込んでいました。それが、時代を少し遡るとこんなに静謐で甘美な表現になるのだなあ…と思ったのが、ペルジーノの魅力にはまることとなったきっかけです。

その後ペルジーノの構えていた工房の画家全体に興味を持った私は、イタリアのウンブリア州を訪れました。有名なペルージャ、アッシジはもちろん、スペッロ、モンテファルコ、フォリーニョなど、ガイドブックにもなかなか載らないような街にも、関連する作品があると聞けば出かけていきました。間も無く、私の旅行ノートの記録はペルジーノに関わる作品でいっぱいになりました。

ペルジーノを初めて見る方に伝えたい、注目すべきポイント

私の思うペルジーノの魅力は、先にも書いたように「静謐で甘美な表現」です。ルネサンスの迫力のある絵画と比べると、ペルジーノの作品には地味な印象を持つかもしれませんが、ぜひその静かで落ち着いた空気感を味わってほしいと思います。

今回展示している作品は壁画が多く、現地に行かないと見ることができないものもあります。そうした作品も一度にまとめて、周囲の環境を気にすることなくじっくりと見られるのもオンライン美術館の良さの一つと考えています。

また、ペルジーノの前後の影響関係にもぜひ注目してほしいと思います。今回の企画展は、基本的には時系列順に作品を展示しているのですが、第二章の冒頭のラファエロとピントゥリッキオの作品は、時系列とは異なる掲載順序です。こちらの二つは、ペルジーノの「マリアの結婚」の影響を強く受けており、ペルジーノの生涯をじっくり鑑賞した直後に見ていただきたいと思い第二章の最初に配置しました。

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ペルジーノ『聖母の結婚』


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ラファエロ『マリアの結婚』


日本では耳慣れない名の画家も多くいることと思いますが、ぜひ心ゆくまで堪能してほしいと思います。


ペルジーノ展『ウンブリアの巨匠|ピエトロ・ペルジーノ展』はこちらから



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