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幡ヶ谷駅のコンクリート

東京の街に出てきました
あい変わらずわけの解らない事を言ってます

この歌詞から始まる歌がある。
くるりの名曲「東京」
この後に駅でたまに昔の君が懐かしくなりますという歌詞が出てくる。
ここで出てくる駅は自分にとっては最寄の幡ヶ谷駅になるのだろうか。

新宿から京王新線で3分。
あの新宿からたったの3分だ。
田舎生まれ田舎育ちの自分にとっては信じられないくらい都会だ。
新宿なんて夜行バスで7時間くらいだったはずだ。
しかし、新宿からたった3分で着く幡ヶ谷駅の北口を出て右手にある六号坂通り商店街。
ここは自分の家から駅までの通り道になるのだが、これが素晴らしい。

安らかな生活の香りがする。

散歩してるおばあちゃん、電動自転車を引きながら子供と一緒に八百屋で買い物をするお母さん、疲れた顔で歩くサラリーマン。
都会の喧騒から離れ、落ち着いたとても良い街だ。
東京の人は冷たいとよく聞いていたが、そんなこともなかった。
近くの喫茶店の奥さんも気さくに話しかけてくれたし、映画が好きだと言ったらゴールデンウィークにウチで上映会をやるからおいでと言ってくれた。
この人からしたら僕は1人の客で、今日の売り上げの一つに過ぎない。
ただ宣伝でそう言ってくれただけかもしれない。
だけどそんな会話が妙に心地よかった。
それは上京した日に入ったラーメン屋でお店の人の背脂の量はどうしますか?が聞き取れなくてもう一度聞き直したら凄く面倒くさそうにあしらわれたことにあるのかもしれない。
そんなことで一喜一憂していたら東京では生きていけないのかもしれないけど、今の自分なんてこんなものだ。

たくさん恥をかいて生きていこう。

自転車を買うまでの間、しばらくは幡ヶ谷駅を使って渋谷、新宿まで出た。
駅では入学式を終えたスーツを着た10代の男女が何組かいた。
この人たちのことは知らないし、初めて会ったけどみんなスーツがよく似合っていてもうすっかり大人だった。

みんなかっこいいぞ。

そんないかにも上京したてであろう10代の子達に見せつけるかのように慣れた手つきでスマホをかざし、改札を颯爽と通り抜け、余裕のある都会人ぶった。
僕もこの子達と何一つ変わらないし、道を聞かれても全く答えられないのに背伸びをしてる自分が好きだった。
最寄りが幡ヶ谷駅なので幡ヶ谷に住んでますとカッコつけてはいるが、本当は中野区に住んでる。
いや、中野区も素晴らしいんだけど、なんか、ねぇ…?(中野区民の皆様、申し訳ありません。)
こんなところもいかにも自分らしい。

幡ヶ谷駅は混み過ぎないのがいい。
京王新線は分かりづらいが。
駅の中に狭い百均があるのもなんかいい。
この駅を利用する人たちのことを仲間だと思って嬉しくなるのもこの街が好きだからだ。
電車に乗ると新宿の二駅前とは思えないくらい空いていて、すんなりと座れた。
窓の外は、真っ暗なコンクリートしか見えなかった。

駅でたまに昔の君が懐かしくなります
君が素敵だった事ちょっと思い出してみようかな

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