ヨルシカ「盗作」全曲レビュー⑬幼年期、思い出の中
12.幼年期、思い出の中
ピアノの音だけで出来ている、最後のインスト曲。静かに余韻を残すような終わり方で、「夜行」の穏やかで綺麗なイントロへの、これ以上ないくらい心地良い導入になっている気がします。
あまり想像も膨らまなかったので、特設サイトのインタビューを引用させていただくと、
〝この曲は原っぱで寝っ転がりながら夕暮れを待っているという情景をイメージして作った曲ですね。〟
とのことです。夕方だったんですね。原っぱで寝っ転がっているのは当然、少年の頃の盗作男でしょう。時間のゆったりと流れる、うら寂しい環境で育ったのかなぁと思いました。
インスト曲の順序は、青年期→朱夏期(壮年期)と来て、幼年期に戻っていますから、タイトル通りですが、この曲は思い出の中の風景を描いたものでしょう。
他のインスト曲は全て、コラージュ的に色々な音が切り貼りされていますが、「幼年期、思い出の中」だけはピアノ一本。「思い出の中」だから、余計なものや、自分を取り囲む世界の細部が全て排除されて、本当に綺麗なものだけが残っているという意味での、ピアノオンリーなのかもしれません。
だとすれば、「幼年期の思い出」は、盗作男の求め続けたものに、とてもよく似ているんでしょうね。
そう気付いたら、彼はようやく自分の本当に作りたかったものが見えるようになったのかも。
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