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「ほんとの話だったの!?」「ほんとの話だったさ!」_『Secondhand Lions』(2003)

映画「シックス・センス」は、フィラデルフィアの小児精神科医であるマルコム・クロウ(ブルース・ウィリス)が、9歳の少年コール・セアー(ヘイリー・ジョエル・オスメント)の治療を受け持つところから始まった。コール少年は、死者と対話できる能力のために、心がすっかりねじくれてしまっている。
いまとなっては手垢がついてしまった衝撃の結末を除いて観ると、「シックス・センス」本編は、極めて真っ当な「グッド・ウィル・ハンティング」や「いまを生きる」の系譜、90年代好みの「大人が子供を導く映画」そのもの。マルコムがコール少年を対話の中で癒していく過程もまた、見どころの一つのはず、だ。

そんなコール少年を演じたヘイリー・ジョエル・オスメントが、1960年代初頭のテキサスを舞台に、やはり心のねじくれた少年を演じた2003年の映画「ウォルター少年と、夏の休日」、原題は『Secondhand Lions』より。
ヘイリー演じるワルター少年が、母方の叔父、兄のガス(マイケル・ケイン)と弟のハブ(ロバート・デュヴァル)の経営するテキサスの農園に送られるところから、物語は始まる。

ウォルター少年は、笑うということ、喜怒哀楽の感情のうち「喜」を奪われてしまったような人物。理由は間違いなくワルターの母親の育児にあるだろう:「子育てが何か」が分からない、自分勝手な人間、そのもの。少年の面倒を叔父たちに見てもらうことに決めたのも、体の良い「世話の押しつけ」、子供ははなから自分にとって邪魔な存在だと思っている毒親だ。

なぜだか二人仲良く暮らしている、老いてもなお元気はつらつとしているガス(マイケル・ケイン)とハブ(ロバート・デュヴァル)は、じっさい変わり者。電話もなければテレビもない家に暮らす二人は、莫大な金を目当てにやってくる口うるさい親戚、保険の営業マン、金の亡者たちをショットガンで脅して追い払うことを楽しみにしているような人物。
老いてもなお豪快溌剌とする二人に対し、内向的になっていたウォルター少年は、当然、恐怖感から、最初、距離を置く。それが、ふとしたきっかけから、ガスが語る、複葉機&砂漠&恋の3点セットで飾られた、少年心くすぐる、ハブと共に経験した冒険譚に魅せられ、やがて三人で共に楽しく遊んで日々を過ごすようになり、次第に人間らしい感情を取り戻していく姿、天才子役ヘイリー・ジョエル・オスメントここにあり、といったところ。


「夏の休日」から17年が過ぎた。大人になったウォルター(演:ジョシュ・ルーカス)は、愛する二人の叔父が、複葉機の曲芸飛行で墜落したことを知る。
足を運んでみると、叔父二人の農園は、17年前から変わらないままだった。感慨にふけるウォルターの横に着地するヘリコプター。それは、ガス&ハブの冒険譚の出演者たるアラブの族長と、その孫の乗機。二人の死を悼んで、急遽はるばるテキサスまで飛んできた族長。叔父二人のことを知らない、族長の孫に向かって、ウォルターは懐かしくも、叔父二人のことを楽し気に語り始めるところで、映画は悲しくも、にぎやかに終わるのだ。

[last lines]
Sheik's Great Grandson: So, these two men from your grandfather's stories, they really lived?
Adult Walter: [wistfully] Yeah, they really lived...

IMDBから引用

まとめると、「Secondhand Lions」=年食ったライオン二頭が、かつて万能感にあふれていた若き獅子だったころの息つく間もない冒険譚を、自分隊の孫のような慈しみの感情をこめてウォルター少年に向けて語り、やがてその語りの力がウォルター少年に委ねられることで、獅子たちの物語は永遠の命を得る…いわば「ビッグ・フィッシュ」的な、力強さに溢れた本作。
テレ東の午後ローで、2年に1回の頻度で、夏ころオンエアされる本作。放送日はチェックして、録画してでも決して見逃さないように!



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