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「君は子供みたいに振舞うんだね。」「…イイ男ってのは子供心をいつまでも忘れないものさ!」_YEAR OF THE DRAGON(1985)

ベトナム帰還兵でもあるスタンリー・ホワイト警部(ミッキー・ローク)が、チャイナタウンに転属することになった。チャイナタウンに巣食うチャイニーズ・マフィアを壊滅するために若きボス・ジョーイ・タイ(ジョン・ローン)を追いつめていく。ジョーイ・タイもホワイトの妻を殺害し報復。暴力の応酬はとどまることなく…。
以上、あらすじからして、「ランボー」同様ベトナム・ベテランがベトナムで味わった挫折、失われた自己肯定感を、他所の野蛮人の土地で正義のヒーローとして暴れる中で取り戻す「汚名返上」劇の亜流ともいえる「イヤー・オブ・ザ・ドラゴン」(1985・アメリカ)より。

製作:ディノ・デ・ラウレンティスが提示したそもそものコンセプトが安易なせいか?せっかくオリエンタルな素材を扱ったにもかかわらず、二三度見てもほとんど印象に残らない映画だ。香港の暗黒街映画にある様な「暗部、底」を感じさせる描写が弱いのも原因。ラストは橋の上で、ホワイトとジョーイが相手に向って走りながら撃ち合う男くさいシークエンスらしいが、そこすら全く、覚えていない!
アメリカに巣くうチャイナタウンが舞台で中国人が中国人を演じ大勢画面を支配する図も、基本ハリウッド映画しか見ないアメリカ人にとっては(公開当時)衝撃的だったろうが、一般には香港映画、もの好きは台湾や本土の映画に慣れ親しんでいた(公開当時の)日本人にとっては「ふーん」の一言で物珍しくもなかったこと、間違いない。ジョン・ローンとミッキー・ロークが見た目通りにカッコよかった頃の全盛期とあって、少数のファンは黄色い声をあげたらしいが。

とはいえ、チャイナタウンをサイゴンと勘違いして暴れまわるホワイト警部を軸とした、バイオレンスシーンを容赦なく見せる演出はさすがチミノ、みごとなもの。
東洋のグロテスクな美、猟奇心を豪華絢爛な小道具で飾り立てたチャイナ・タウンの美術もチミノ好みと言ってよい。
常に一方的で自分勝手な憎しみをまき散らすミッキー・ロークの病んだ演技も(「ディア・ハンター」の延長戦にあると思えば)大したものだ。
そんなホワイトの為人についてジョーイが冷静かつ客観的な評を下す、対してホワイトが見苦しく言い訳をするシークエンスより引用して、本記事を締める。

Tracy Tzu: You're acting like a child.
Stanley White: Well, a great man is one who in manhood still keeps the heart of a child.

IMDBから引用



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