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車いすからベッドへの旅

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毎日、天井を見つめている。ベッドで横になっていると、ぼくの六畳の部屋半分と、ヘルパーさんが仮眠する隣の四畳半三分の一ほどしか視界には入らない。 かぎりなく狭い世界の中で、なにを考…
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#ひとり暮らし

春を待つ手紙

 政治に携わる人の演説を聴いて、投票したい気持ちに駆られたことがあまりない。 思想をこえ…

自分

 昨夜、とっくに結果はわかっていても、まだ観ていなかったお正月の大学ラグビーのビデオを眠…

日記

 午後三時、ひとりの時間を過ごせるように、気兼ねなく読書ができるように、ネット環境の課題…

手を入れる

 おととい、コチュジャンをきかせてホルモン煮込みをつくってもらった。  旨かった。 行きつ…

言いわけ、疲れ、ノスタルジー

 ほぼ毎日、つづけていたnoteへの投稿が一日あいてしまった。 文章の長短にはかかわりな…

犬小屋にて

 ふたりとも、ずいぶん酔っぱらっていた。 住宅街のこじんまりとした焼肉屋で、好物の塩タン…

いま

 インフォメーションへ行くと、いちばん近くのレジで彼女は溜まったおカネの勘定をしていたのか、機械の調子を見ていたのか、ぼくたちに背をむけていた。  黙って待っていると気配を察したのか、こちらをふり返るまもなく用件を聴きに来てくれた。小走りだった。    表情を確かめられる距離まで近づいたとき、声が出てしまいそうになるくらいにぼくは驚いてしまった。  なにかの理由でお化粧をする時間が持てなかったのか、よほど体調が悪かったのか、肌がくすんで、明らかにやつれていた。  なによりも、

赤い傘

 朝から、ぼくは勝負に出た。 昨日、おとといと腰の具合が芳しくなくて、目標の二時間にはは…

苦手と嫌い

 その夜、ぼくは慣れない道を電動車いすで歩いていた。  歩道は広かったけれど、横傾斜の具…

包みこむ

 「友だち」を幅広く捉えれば、暮らしをサポートするヘルパーさんたちから立話(ぼくは電動車…

タイムリミット

 真夜中から明け方にかけての豪雨がうそのように上がって、いつもの訪問入浴の人たちが帰った…