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木蓮の花開くころ

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ここでは、かっこよくない障害者のぼくの半生を語ります。そこで出逢った友人はかけがえのない財産です。
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2021年4月の記事一覧

怒らない

  給食が終わり、ぼくはY先生に声をかけた。すぐに立ち上がり、ゆっくりとそばへ来てぼくの…

「オシッコ」とともに生きる

 生まれつきの障害をもったぼくは、あまりイタズラをしたことがない。やりたくても、大人は…

風呂敷先生

  U先生は、いつも唐草模様の風呂敷を下げて教室に入ってきた。 「これね、その日の資料の…

ねぇちゃん乱入

  普段、ぼくは姉を「ねぇちゃん」と呼んでいる。 六十歳を過ぎたのに、まだ「ねぇちゃん」…

電話だけでもかまわない

夕方、姉に電話をかけた。noteの中に登場することを了解してもらうために。  去年、ぼ…

別れのとき

 八歳から三十六歳まで、養護学校の寄宿舎をふくめれば、二十八年間も施設で暮らしつづけると…

赤いベストの少年

 十歳を過ぎたころだっただろうか。  ぼくを可愛いがってくれた看護婦さんがセザンヌの「赤いベストの少年」に、雰囲気がよく似ていると話していた。  幼いころ、心のどこかに棲みはじめていたプライドに近いものに導かれるように、本棚に無造作に並べてあった何冊かの画集を引っ張りだす午後があった。 その一冊にセザンヌはあったけれど、あまりお気に入りにはならなかった。  それよりも、ゴッホの耳を切り落としてしまった自画像に惹かれた。 いっしょに暮らしていたおばさんに耳をなくした理由を訊ね