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ヴインテージについて

古くて愛しい音がして、形はなくて
優しい気配がする。
1年ぶりに開いた本のような、
寝ぼけたまま浴びる外気のような、匂い。

振り返ってばかりだ。ぼくらは。
毎日に靄が掛かって、はっきりしない。
それでも肯定したい、今を。
誰もが嗤うような毎日を。
今日も触れてみる、まだ暖かい。
そんな繰り返しだ。

未来は明るくない。
闘争の果て狂ってしまった時計の針が
こちらを見ているようだ。
蜂に刺されるような痛みなら、
想像に容易い。

死ぬまで光の射す方へ向かおう。
知性と誤認したまま育み続けた、
それが自分自身だと、
他人のような自分が云う。
才能は知性だ。

感情が高波のようだ。
消えない渦巻が尚も心で荒れる。
ゲインを上げてやる。
惨めに、しかし気丈に膨張した渦が
あの夜を代弁する。

光が指す方へ向かおう。
僕らの形が無くなって尚残る
よるべない感情が放つそれを
いつまでも眺めていよう。
終わりと始まりを永遠に繰り返す
種子を残す草花みたいに。

【説明】
この歌は朝から夜を、夜から朝だ。
オーケストラは、それに準じて行われる必要がある。何も珍しくない、リフレイン。
出来るだけ、主観から離れようとする行為そのものが主観的だと、書いていて呆れた。
それだけの能力や経験が無かった。
ならば電気音楽団が大声で謳うものに果たして死生観や宗教観が不要か?と問はれれば答えはノーである。それらの呪縛からは永遠に逃れられない。と、今は強く思う。
作業の中断や強制終了の警報がやかましい。永遠ではないのだ、すぐにくたばって、価値のない空気になって、無かったことになる。だから今で好いだろう。

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