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文学作品 “ロングポゼスト現象2014” - 2 -

また別の日。自分の部屋で横になっていると配信の声が聞こえた。今でも配信はどういう仕組みかわかっていない。周りを見渡す。ふと見ると、本棚の上に置いてある犬の置物が、こちらを見ていると感じた。よく考えると、あの置物は15年くらい前、この家に引っ越してきたときからあそこに置いてあったのだ。だが、オレは15年間この置物を全然意識せず過ごしてきた。引っ越してきたときに販売会社がくれたもので、オレの部屋の本棚の上にずっと置いてあった。あれが盗撮の機器だったらくやしすぎる。引っ越してきてからずっと盗撮されていたことになる。オレはバッっとその犬の置物を手に持つと、キッチンの方に持っていった。そして母親に言った。「ハンマーか何かない?これ壊す」。だが、母親は手伝ってくれるつもりはないようで、「落ち着いて」と言ってくる。オレは言う。「盗聴されてるかもしれないんだよ」。それでも母親はそれを否定してきて、「そんなわけないでしょ。壊すなんてお母さん絶対反対だから」と壊さないように言ってくる。オレは何故か壊すのはあきらめようという気になったが、何らかの対応はしないといけない。オレは犬の置物を元の本棚の上にもどし、犬の置物にカメラがあっても部屋の中が映らないように、犬の置物の頭がふさがるようにこの間買ったキャップをかぶせた。

父親に病院に連れてもらうことになった。配信のことは父親に言ってはないが、父親から見ても様子がおかしかったかもしれないし、すんなり話が着いた。大きい病院で見てもらう。病院に着いた。今日は休日で窓口が裏側の入口しか開いておらず、そちらから入る。お医者さんに見てもらう。大丈夫だが、きちんと診てほしい場合は平日に来てくれということだ。今日、診てもらいたいので、別の病院に行くことにした。別の病院もそんなに遠くなく、ここからわりとすぐ行ける。そちらの病院に着いた。この病院は混んでいて診てもらうのに時間がかかりそうだが、そのまま並んだ。時間はかかったが、結局特に異常はなしということだった。

今は夜だ。ふと思い立ってこの間の犬の置物を持って鏡に向ける。「左目だな」と配信を見ている人が言った。犬の置物を本棚の上に戻す。そこにこの間買ったキャップをかぶせる。もちろん左目が隠れるようにかぶせる。風呂に入ることにした。ところが「お風呂配信者だ」と声が聞こえる。犬の置物の左目がカメラだという意味じゃなかったのだろうか。念のためタオルで自分の両目を隠して見えないようにして入る。いつもの場所なのでモノの位置等は大体わかるので大丈夫だ。風呂はわりとスムーズにできた。自分の部屋でネットをやる。今は自分の意思でないとは言え配信している側ということになるが、このままでオレも他の配信を見る。オレがぼーっと配信を見ているとオレの配信を見ている人がオレが活躍しているような話をしている。「今のは長男が確信犯だろ」と言った。長男というのはオレのことだ。どうやらオレが母親に勝ったという話のようだ。オレは誇らしい気持ちになった。で、今日はもう寝ることにする。布団に入るが、オレの配信が止まらない。配信を見ている人の中にオレの知り合いもいるようだった。オレの知っている会社についての話題になっている。業界の悪事についての話題になっていて、オレが3つの秘密を暴いたという話になっていた。ただ、話題に出ている会社に今でも在籍している人の話題も出ていて、その人はここで悪事がバレているのに明日からもその悪事をやらないといけないのかという話にもなっていた。

外を歩いていると、オレの配信を見ている人達の声が聞こえてきた。「このままじゃ視聴率下がるぞ」と言う。オレは答える。「視聴率って言ったって、お風呂配信者とか言われてるんだぞ」。これで視聴率を上げようとするとか意味がわからない。「とにかく視聴率はゼロを目指す」とオレは言った。

今日は配信を見ている人からの情報によると、ある駅の近くにオレの知り合いがオレに会いに来るらしい。本当かどうか知らないが、オレはそこに行ってみることにする。電車に乗ってその駅に行き、駅の近くのカフェに入る。配信の人達の話によると、ここのカフェにオレの知り合いが来るらしい。1時間くらい経ったが来ない。まだ待ってみることにする。2時間待った。結局、オレの知り合いはここに来なかった。

何日か経った。オレは何故か配信を見ている人達に自分のゆかりの場所を説明している。配信にも慣れたし、自分のことも知ってほしい。電車で30分以上かかるようなあたりも行った。中学時代の塾のあたりも案内したし、大学にも行った。あちこち案内した。配信を見ている人達は配信の内容以外に自分達の会話もあるようで、「ウソの流れ、本当の流れ」等と言っている。もちろんオレの案内の内容は全部本当だ。配信を見ている人達にはひどい人が結構いて、オレは何も悪いことをしていないのに悪者扱いをしてくる。だがむりやり悪者扱いしていると思っている人も多い。「こいつはもうこの辺で良いだろう」等と言っている。

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