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invitation to MAKERS 第4回 TiNK――シェアリングエコノミーを加速させるスマートキー 株式会社tsumug 牧田恵里【不定期連載】

今朝のメルマガは「invitation to MAKERS」をお届けします。第4回は、株式会社tsumug(ツムグ)の代表・牧田恵里さんのインタビューです。不動産向けのスマートロックSharing Key とTiNKを手がけるスタートアップtsumugは、さまざまな企業のテクノロジーをつむぐことで、シェアリングエコノミーを加速させる「鍵」を作ろうとしています。開発の経緯から、拒絶ではなく信頼をコンセプトに置く鍵が作る未来のビジョンまでお話を伺いました。(構成:高橋ミレイ)

▼プロフィール
牧田恵里(まきた・えり)

株式会社tsumug 代表取締役
東京理科大学理工学部建築学科在学中、日本のフラッシュカードメーカーを親会社として版権事業を行う、東南アジア企業との合弁会社を代表取締役社長として設立。2013年4月より孫泰蔵率いるMOVIDAグループにジョイン。2015年末に不動産向けカギデバイスの開発会社tsumug(ツムグ)を設立。

不動産業の課題をテクノロジーで解決する

――御社の業務内容やサービスを聞かせていただいてもいいですか?

牧田 tsumugは、シェアリングエコノミーを加速させる会社を作りたいと思って作った会社です。私自身が以前に不動産会社で働いていたこともあり、不動産業の持つ課題を解決しながら、将来的にシェアリングエコノミーと結びつけられるテクノロジーを活用できると思ったんです。シェアリングエコノミーを加速するといっても、まだ日本はこれから民泊やAirbnbが普及していく段階です。なので、今の段階ではスマートロックを不動産業界に普及させるために、BtoBで提供していく形をとっています。

電子錠自体は今までもありましたが、通信できるものが出てきたのはごく最近のことなんです。ですから、まずはユーザーの方に使い方や便利さを実感してもらったり、管理会社に「鍵の管理コストが減った」「内見数が増えた」「内見からの成約率が上がった」というメリットが十分に伝わった段階で、次のステップに行くタイミングになるのかなと思っています。

あとスマートロックの事業をやっていて思うのが、女性の方にニーズがあるということです。一人で生活していて不安、誰かが鍵をいじっているかもしれない、彼氏に鍵を渡したんだけど別れた後返してもらえないといった不安を解消するツールになりそうです。

――特に女性なら防犯上のことは気になりますよね。

牧田 ええ、賃貸物件の条件検索ワードのトップは「オートロック」だそうです。でも実はオートロックって、それほど安全ではないんです。入居者の後に続いて一緒に入れてしまうし、多くの場合は施錠扉をガラスの自動ドアにしているので、強度は弱いなどの問題はあります。オートロックよりもセキュリティを強化する方法はあると思います。

――今年1月に新製品をCES(Consumer Electronics Show:毎年1月にアメリカのラスベガスで開催される世界最大規模のエレクトロニクスショー)に出展されたそうですが、それについて詳しく伺えますか?

牧田 今回のCESではグローバルに向けて、うちで作っている商品がどう受け止められるのか、ディストリビューターがどう思うのかをリサーチしたいと思いました。コンセプトモデルを展示して、tsumugがやりたいと考えている、シェアリングエコノミーが加速するデバイス開発という面を全面的に押し出しました。それが「TiNK」というデバイスで、今プロトタイプを作っています。CESでは指紋やジェスチャーで認証したり、顔認識、NFCに対応しているものを発表しました。

――ブースに来た海外の方の反応はいかがでしたか?

牧田 まずデザインに惹かれる方が多かったようです。今回のCESでは、スマートホームやホームテックを展示している企業が多かったんですけど、そこの人たちが見に来てくれました。海外版に関してはディストリビューターが多かったですね。プラットフォームとしてセンサー類をすでに持っている企業から、自社の商材のひとつとして欲しいというコメントがありました。

――指紋認証だけでなく、音声認識や顔認証、登録している図形を手で描くなどいろんな認証方法が可能なのですよね。

牧田 海外版もふくめるとそうです。今国内で使われている認証は、テンキーやスマートフォンですね。インターフェイス部分はオプション的な感じで必要なセキュリティ強度と用途に合わせて変えるといいと思います。CESでの展示では指紋認証と顔認証を組み合わせました。顔認証だけだと、登録した人の顔写真を提示しただけで開いてしまうケースもあるからです。

――確かに指紋認証と顔認証ならば、よほどのことがない限り安全ですよね。また、それとは逆に認証を緩くすることも可能ですよね。

牧田 そうですね。そこは今後さらに研究していきたいと思います。一時的な利用者であれば、その人が来たという通知とログだけが残ればいい場合もあります。

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