見出し画像

歴使用感

歴史に疎い。
安政の大獄と言われても「怪談のタイトルみたいだな」という感想しか抱けず、武家諸法度と言われてもその「ぶけしょはっと」という可愛い響きからサンリオのキャラ的なイメージしか連想できず、新撰組がどういった者たちだったのか説明しろと言われても「なんか、ワーっとした時代の流れの中でギャーって男たちが声を上げてドドドーってなって」と擬音の含有率の高さでお茶を濁すことしかできない。
すべては歴史の教科書が悪いのだと思う。歴史用語をただ羅列しただけの教科書は開くだけで学生時代の私の学習意欲を大幅に奪ったものだった。
思うに、歴史の教科書には「ユーザーの声」が足りないのではないか。歴史を実際に体験・使用したユーザーたちによる生の感想が載っていれば、なじみのない用語もピンとくる。そう、歴史の教科書には以下のような「ユーザーの声」が必要だ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


☆☆冠位十二階☆☆
「いろんな色があって可愛い!カラーによる階級分けも一目瞭然です。こんな身分制度を待っていました!」


●〇刀狩〇●
「いままで他人に刀を狩られる経験がなかったので少し不安もありましたが、いざ狩られてみるとスッキリ!刀を狩られるって、こんなに気持ちがいいんですね。次に狩られる日はいつだろうと心待ちにしている自分がいます(笑)」


◎◆☆太閤検地☆◆◎
「うわ…私の年貢、低すぎ…?そんなずっとモヤモヤしていた気持ちが、太閤検地で解消されました。スタッフのみなさんの検地にかける情熱には頭が下がります」


◆◇◆ええじゃないか◆◇◆
「初めは戸惑いました。『本当に働かなくっていいんだろうか…』って。でも使用してみてびっくり。みんなで踊っているうちにメキメキと労働意欲が下がり、すぐに鍬を捨てることができました」
「いまでは家族全員で農作業をさぼって、ええじゃないかに夢中です。みなさんも一度体験してみれば、ええじゃないか!」


≪期間限定≫墾田永年私財法≪いまだけ≫
「墾田が永年の私財ではなかった頃、本当に不満だらけでした。耕しても耕しても墾田は自分のものにはならず、家庭内の空気もどんどん悪くなっていきました。ところが墾田永年私財法を試してみたところ、まさかの墾田が永年の私財に!家庭の雰囲気も明るくなり、夜の夫婦生活もカムバック。来春8人目の子どもが生まれます」


◎生類憐みの令◎→愛犬家さん要チェックです!
「生類を憐れんでよし。生類を憐れまない人をお上に密告してよし。こんなに多方面で活用できるツールを他に知りません。犬だけでなく、猫や虫など幅広く生類をカバーしているところもGOOD」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
こんな感じで、もっと気の利いたカタログにしてほしい。歴史用語という商品をもっと気軽に心で通販できる、そんなカタログにしてほしい。それが私の歴史教科書に対する願いである。ネットでも展開する際は「楽市楽座」ってサイト名がいいと思う。

――――――――――――

テレビブロス連載『夜の墓場で反省会』より


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?