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U-NEXTのイマーシブブックリーダーは初めての実用XR電子書籍体験である

XR(VR/AR)で電子書籍を読むのは、実用的なVRヘッドセット(HMD)の利用分野として一番わかりやすい。
すでに、MetaQuestやVisionProでは、ブラウザや電書アプリを使って、「空中に浮かぶウインドウ」のインターフェイスで電子書籍を読むことができる。スマホやタブレットと同じUIではあるが、眼の前いっぱいに大きく拡大して読んだり、手で持つ必要がなく楽に読める、といったメリットがあり、HMDを利用して読むことの価値ができている。

一方で、「XRならでは」のインターフェイスとして、書棚や物理本をVR空間に導入するという試みはなされてきたが、いずれも技術デモの域を出ていない。

過去の例として、KADOKAWAが、イベント用に「VR空間書棚」を作ってみせたが、これは普通のストアにリンクするだけで、本を読む体験はなかった。

また、かつてMediaDoの電書ストアだったコミなびが、MetaQuest用にアプリを作ったこともあった。これは、物理本を開いてページがめくれるような演出をVR空間でするものであったが、一部のサンプル漫画が読めるに留まっている。

VRChat内で、青空文庫の本が読めるアセットやワールドというのもいくつか作られている。こちらは、読みやすいかどうかはともかく、物量があるという点とVR内での読書体験の試みとしては評価できる。


さて、AppleのVision Proが日本で発売されたときに、U-NEXTがいち早くアプリで対応したのだが、この時点で、動画のみならず読み放題雑誌やBookストアの本も平面UIで読めるようにはなっていた。
その時点で「イマーシブブックリーダ」を予告していたのだが、10/25日についに公開されたのだ。

こちらをVisionPro実機上でレビューしてみる。動画の撮影は抑制されているので静止画しか撮れないが、動いてる様子は上の公式の動画で見ることができる。

まず、本の一覧で「イマーシブモード」ボタンをタップすると、ARで本棚が表示される。5個の本棚が左右180度に広がって、本の表紙が見えるように面陳されている。中央に自分の読みかけの本が並んでいるが、それ以外はおすすめの無料試し読みのようだ。特に本棚を入れ替える機能は今のところ見当たらない。まあこれは今のところオマケ的なものだろう。

イマーシブ本棚

ここで本を選択して「読む」ボタンをタップすると、実際に本が開く。これが、本のページが横につながって、左右180度以上に展開するという、「VRならでは」の特徴的なものとなっている。

指のピンチでスワイプして左右にシームレスにスクロールして読むことができる。現状位置やサイズを変えられないようだが、Vision Proの解像度の高さ故に細かな部分も鮮明に見える。

漫画はこのように左右にぐるっと9ページ分が同時に見えている。このキャプチャ画像は解像度が落ちているので鮮明さの当てにしないでほしい。

右見て
真ん中見て
左見る
西尾維新+大暮維人「化物語」より

この没入体験はなかなか面白い。あえてページの概念をとっぱらって本を再構築して、「本に没入する」という体験を生み出している。

漫画などの場合、断ち切りがあるとそちらがつながってしまい、ページの境目がわかりにくくなることがあるのが改良ポイントかもしれない。

本棚に出てない本は、一旦2Dインターフェイスで開いたあとに、右下に出てくる「イマーシブモード」ボタンで開くことができる。ただし、現状イマーシブモードで文字モノ(リフロー)の本は読めないようだ。漫画といわゆるfixフォーマットの本が対応しているようだ。

2Dモードの画面
イマーシブモードに
荻窪圭「古地図でめぐる東京さんぽガイド」より


U-NEXTには雑誌読み放題サービスがあるので、読み放題雑誌もイマーシブで読める。雑誌の細かい文字も問題なく読めて、スクロールも高速なので、「雑誌をぱらぱら見る」という体験が可能だ。

雑誌の見開きはでかい
アニメージュ2024年11月号より

このイマーシブモードがベストの読み方であるかどうかは意見が分かれるかもしれないが、VR電子書籍として、物理本をシミュレートするのではなく、新たな体験として出してきたところを高く評価したい。また、fixフォーマットに限定されているが、ストアで購入できる本がどれでも読めるということで、実用上も十分と言えるだろう。

まだ出たばかりでUI的にこなれてなかったりバグらしき部分もあるが、今後の改良に期待したい。

とりあえずは、購入したりお気に入りに入れた本でイマーシブな本棚を編集できるようにしてほしい。文字モノもそのうち読めるようになるといいな。

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