上空にて

太った鯉のようなおかしな形をした乗り物はその腹に蓄えたエネルギーで、轟音を立てながら凄まじい動力を発揮し、夜の光に青白く染まった峰がアンデス山脈を象っている上空を滑空している。永遠の広がりにも思える紺碧の空があたり一面に広がり、その暗く澄んだ夜空にはいくつかの星雲が薄く広がっているのがわかる。何世代もの人々がその生涯を費やし、どれだけの長い歴史が、どれだけの人々がこの機体にその人生を費やしたのかということを踏まえたとて、風に合わせて人工的に動く機体の羽は、窓の外から見える宙や、荒々しく聳え立つ大地の讃美と比べればあまりにも脆く未熟なものに感じた。
 

2024 01 17

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