樹冠の影に隠れ、彼女は陰陽師の呼び出した人形と鵺の対峙を見ていた
長編ファンタジー小説 獣の時代〈第1部〉
第1章 鵺の夜⑤
暗い森の中を数台のバイクが疾走していた。時おり樹間を走る光の中を黒くて細いモノが出たり入ったりしている。
送電塔の樹冠との境辺りに隠れるように座り、湖澄は治神団の動きを見ていた。
巷で「鵺」と呼ばれるこの存在が世間で騒がれ始めてから、もうすぐ2ヶ月ほどか。本来なら人の目に触れないはずのこれらが偶然目撃され鵺と呼ばれるようになったが、彼らはもともとは龍脈と呼ばれる国土を流れるエネルギーが千切れ、地上に出た