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消え行くのかビカビカの友よ

あのさ、昔の自転車部品ってのは品があってね。
そんでもって、品があるのはね、たいがい手間がかかってるんだ。
女性に似たところがある。
ちゃんと努力してキレイどころになってるんだよ。
生まれたままでそうなってるわけじゃない。
立居振る舞いってものはね、文化かアートなんだ。
教養ってのは、一流企業の入社試験に通るためのものじゃないんだよ。
何が贋物で何が本物か見極めるための知恵のようなものさ。
ビカビカ光ってる部品というのも、女性と同じさね。
ピカピカ光ってるのは世の中にいっぱいあるよ。
ピカピカは軽いからね。
ビカビカはそうじゃない。
ピカピカ光ってるような相手は、たいがい飽きられて捨てられる。
ビカビカ光ってるのは、一生それを磨き続ける責を負うのさ。

     *

ビカビカの自転車部品には何種類かあってね。
スチールはクロームメッキだ。
キャリアとかラグとかが代表的だな。
近頃じゃ、産廃の規制で良いクロームメッキが困難になったらしくてね。
昔のブルックスのワイヤーみたいなわけにはなかなかいかない。
アルミ地肌のものはバフがけをする。
当然仕上げの手間はかかるけど、そりゃ当たり前だな。
アルミ部品でビカビカに光っているのはたいがいこれだ。
アルマイトでも光っているやつがあった。
クロームメッキやバフがけほど輝きは強かないが、曇りにくい。
そうなんだよ。
ビカビカにもいっぱいあるのさ。

     *

こないだ友達が通販でブレーキレバーを買ってさ。
バフがけだと思ってたら、なんと、シルバーの塗装だったと。
ひでえ話でね。
ま、今の人はシルバーの塗装も「ピカピカ」の範疇なのかもしれない。
もちろん俺らは違う。
昔のプラモデルだって、ちゃんとクロームメッキは区別してたからね。
メーカーにしてみりゃ、シルバー塗装のほうが楽なんだ。
そのほうが手間がかからず、コストダウンできる。
可愛い子を廉価で大量生産しようってところかもしれない。
そこに無理があるんだよね。

     *

フレームがカーボンで、あっちこっち部品も真っ黒けだから、
ま、今じゃそれでいいんだろう。
カンパの光り物も、下級グレードのごく一部だけになっちまったらしい。
そういう自転車文化には俺らは興味はないから、
昔のものを磨いていたほうがいいんだよ。

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