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土地読みの夢

自分がしたかったことのひとつは、風土的感性を読み解くことだった。その土地のオーラを読むことだと言っても同じだ。

自転車での野外活動にはいろいろな愉しみがある。身体を動かして前に進み、解放感や達成感を得ることもそうだし、知らない道を辿って未知の世界と向き合うことももちろんそうだし、ランドナーのような独特の様式の機材の味わいを大切にしながら固有の旅の世界を創っていくこともそうだ。

そのどれもが魅力的だ。どれもが私の自転車での野外活動に必要なものだった。でもそれらの根幹を成すことは何かと問われれば、私には、その土地や風土が語りかけてくることに耳を傾けることだとしか言いようがないような気がする。

困ったことに、それらの言葉は人間の言葉と違うから、文章にして語ることは容易ではない。詩に翻訳不可能な面があるように、土地土地の持っている独自の感性を人の言葉で表現することは難しい。

それでも書きたくなるのは、そうでもしなければ私の自転車の旅は収まりがつかなかったからだ。存在のあるエネルギー状態やそれを発している力を表現しようと思ったら、小説のような遠回りの回路を創り出さなければならないことと似ている。

世界の多様性は無名の路傍にもある。何かが何かと違うというより、それぞれがそれぞれの語りを持っていると言ったほうがいいのかもしれない。道の数ほど、それはあるように思えてならない。


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