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ルアーのセンチメント

ルアーキャスティング用のリールのラインを巻き直したことは、前回記事で書いた。その延長線上で、30年ぐらい前によく使っていたルアーを非常に久しぶりにケースから引っ張りだしてみた。

ほとんど淡水で使っていたために、フックの錆なども生じておらず、一部塗装が汚れていた程度だった。これなら、まだ充分に使える。

上の画像のルアーは、重量1/4oz(オンス)=約7g程度のもので、自分にとっては一番使いやすいサイズだ。実際にもよく使った。

塗装もなかなかよく出来ていて、魅力的だ。US製のヘドンというメーカーの、ザラ・パピーというモデルなのだ。オリジナルはザラ・スプークと言って、もっと大きい。

大きいルアーにヒットするのは大物とだいたい相場が決まっているので、一発ホームランを打つのには良いサイズかもしれないが、バスフィッシングでアベレージの25cm前後のサイズの個体には、ちとでかすぎる。

私は謙虚に小さめのルアーを投げるのが好きだから、7gのザラ・パピーになる。これはペンシルベイトというタイプのルアーで、非常にシンプル。一般的なプラグのようなリップも付いていないので、ただリールを巻くだけでは何もアクションを起こさない。

ロッドの先でチョンチョンと煽ることによって、首を左右に振り、水面を波立てる。何か生物が泳いでいる感じになる。そういう部分も面白い。

当時よく使っていたルアーの一部。小さめのものはスピニングリールで投げた。それ以外のものは、ABU2500Cのベイトキャスティングリール等で投げていた。

私の使っていたルアーは主にラージマウスバス用なので、どちらかというとファンシーなデザインがされているものが多い。トラウト用のミノープラグなどはリアルなものが多い。

特にリアルなルアーは、思わず「美味しそう」となるぐらいだ。そういうルアーはもちろん実際にも釣果は出るだろうが、その前に人間が釣れる。

ルアーメーカーは「このルアーなら、大ヒットしますよ」というような謳い文句を書き連ねるのだが、本当に釣りたいのは魚というよりもアングラーなのだ。アングラーが釣れるということは、そのルアーをお買い上げになったということなのだ。商売、商売。

そんな風に考えるとなんだか切なくなる、そういう意味のことを開高健氏も書いている。魚を釣るために、人は情熱をすり減らしてまでルアーを作ったりフライを巻いたりするのだ。

また、特にベイトキャスティングリールを使ったルアー・キャスティングには、射撃の要素が含まれている。人はそのことをあまり意識しないが、ルアーというのは一種弾丸なのであるし、ベイトキャスティングロッドには「ピストルグリップ」と呼ばれる、人差し指を引っ掛ける突起が付いている。

まあだからルアーというのは、ものものしいトレブルフックが付いていて、いかにも危なっかしい。そういう遊びなのであるが、鳥類や哺乳類を撃つような狩猟からすると、幾分かはソフトだろう。

射撃ではキャッチ&リリースなどは望むべくもない。撃てば、ゲーム(対象の生物)は命を奪われるのだ。

キャッチ&リリースが慈悲の行為かどうかは、文化による。ゲームフィッシングをやる国の大半がキャッチ&リリースを認めて、多くの場合に推奨していることは知られているが、スイスではこれを虐待と考えているようだ。

まあそもそもルアーフィッシングなどは、リリースしようがしまいが、魚をいじめていることに変わりはないので、私も特段にこの道楽を人に薦めようとは思わない。熱心にやっていた頃からは30年あまりが経過しているし、普段の釣りはほとんどフライフィッシングになっている。

でもたまに、2500Cのスプールから水煙を上げつつ、狙ったポイントにルアーを打ち込んでゆくような遊びをしたくなるのだ。水面でバスなどを釣るトップウォーターゲームには、言い難い面白さがあるからだ。

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