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里道の詩

里道(さとみち)と呼べば、冬の陽だまりのようなあたたかさがあるけれども、里道(りどう)とすると、どうも行政用語じみてくる。

里道(さとみち)は人の温もりが息づく道だ。
旧くからその辺りで暮らしてきた人々の歓びや哀しみに染まっている。
千年続いてきた道もけっこうあろう。

道の中でもっともありふれたものなのかもしれない里道。
しかしまた、本当にそれらしいものは限られているかもしれない里道。

里道は、道と、道に面した民家や庭や畑との境がやわらかい。
厳密な区切りはたいがい希薄で、互いに浸透し合っている。

そこでは世界は親密さの言葉を語っている。
個人の所有、公の所有、そんな風に無粋に区切ったりしない。

近代産業主義がこさえた道は、多く分離から成っている。
そこを通行するものを分け、道と隣接地を分かつ。

里道は逆につなぎ、関係付け、和合させる。
それを無言で、なんの旗印もなくやっている。

それでも里道は偉くなったりしない。
どこかの旧街道のように、偉くなって威張ったりしない。

そこが里道の偉大なところなのだ。

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