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精進湖西湖本栖湖・鳥見車中泊ツアー

7月7日(日)にかけて、静岡市では40℃にまで達する猛暑が数日間続いた。これはたまらん、ということで、7日の夕方にわが家の中古小型キャンピングカー「ピクニック・ゲリラ号」で出発した。

給油と買い物を済ませ、東名高速から連絡路を経由して新東名に入ればもう20時近い。市内で買いこんできたオムライス弁当を食べるために、パーキングエリアのネオパサ清水に立ち寄った。

きょうの泊地である精進湖県営無料駐車場に着いたのは22時頃。富士宮、朝霧高原と標高を稼ぐうちに気温は少しずつ下がってゆき、精進湖ではもう20℃にまで下がっていた。別天地である。

車外に降り立って夜空を見上げると、雲は多少あるというものの、星が凄い。3等星ぐらいまで見えている感じである。富士山の方角にさそり座が見えたが、その見え方が平地と全然違う。私は8×42、かみさんは6×30の双眼鏡をそれぞれ取り出して見ると、視野の中いっぱいに星の光が広がる。4等星以下まで見えている感じだ。

車内を整理して、例によって車中泊できる状態にしたあと、24時頃に就寝モードとなる。涼しいとはいえ、車内には多少熱もこもっているので、寝台部分の窓と天井の換気扇カバーを開けて通風しておく。

翌7月8日は、午前5時頃に起き出して湖の方向を見やれば、富士山が見事なシルエット。大室山の寄生火山が手前にある、いわゆる「子抱き富士」の景観だ。涼しくて心地よい。

「子抱き富士」の図。月曜の早朝とあって、湖面はとても静かだった。

車内のカーテンも開けて朝食の支度でもしようかと思っていた頃、車のリヤゲートのすぐ後ろにある植え込みに小鳥が来た。シジュウカラに似ているが、特徴的な胸のネクタイがない。どうやらヒガラのようであった。

朝食にする。夏なので、窓や換気扇を開けたとしても車内で火を使う気にはなれず、買ってきた食パンをトーストせずに、オイルサーディンとサラダを挟んで食べることにした。

野外では食が進むが、この日の朝は少々パンを食べ過ぎてしまい、あとでしゃっくりが止まらなくなったりしたのであった。

6時前くらいに朝食を終え、今度はフライフィッシングの準備。久しぶりに持ってきたウエーダーを履き、フライベストを着て、タックルをセットする。かみさんは釣りはしないが、車内で待っていても所作がないので、一緒に湖畔までついてきてくれることになった。

精進湖で良い型のバスを釣り上げたのは2016年の7月のことで、もう8年も前の話。もっとずっと前の1990年頃には、ボートなら1日で30本くらい釣れていたくらい、バスが増えていた。しかし今は、そんなことも過去の話になってしまった。だいたい、ブルーギルですから姿をあまり見なくなったのだ。

湖畔に沿ってかみさんとしばらく歩いたあと、流れ込みのあるワンドに到達する。ここは水通しが良いので、釣果が期待できる。しかしさっぱり反応がない。フライキャスティングも久方ぶりなので、最初はなかなかループがうまく作れず、釣果を諦めて水から上がる頃にやっとダブルホールがなんとかできるようになったという体たらく。

岸辺を歩いて駐車場にまた戻るのは大変なので、道路を歩いて戻る。車に着いたらウエーダーなどを脱ぎ、タックルをまた仕舞う。時刻は8時を回っていた。今度は車を出す出発の準備だ。

さきほどヒガラを見、前回の車中泊ツアーでヤマガラが手に乗ってきてくれる感動的な体験をしたこともあって、西湖の野鳥の森公園に行こうと二人で決めた。

野鳥の森公園に着いたのは、9時過ぎ頃。建物の裏庭にあたる観察好適地で手のひらにヒマワリの種を載せ、しばらくヤマガラを待ったものの、今日は手に乗ってきてくれなかったので、様子を見ようということになり、件の場所をよく観察できる二階の窓辺にいたところ、ベテランのバード・ウォッチャーらしきご夫婦が現れたので、さきほど見た、ヤマガラより少し小さいくらいでヒガラの色を薄くした感じの小鳥が何か聞いてみる。

ちょっと見てみましょうという感じで、四人で窓を開けて二階から餌場を観察していると、「ヤマガラの幼鳥のようです」と教えてくださった。そう言えば、模様はヤマガラにそっくりで色が違うだけだ。

ご夫妻と話をすれば、千葉からお見えとのことで、昨日は柳沢峠で観察をしたということであった。ご主人は超望遠レンズ付のカメラを2台お持ちで、撮った画像も見せてくださった。

それからしばらくわれわれは観察を続け、印象的だったのは、ちょっと大きめの小鳥が水場にやってきて、色が鮮やかだったのを、「シメですね」と教えてくれた。われわれだけだったら同定できなかったに違いない。私はちゃんと聞くことができなかったが、「ホイホイホイ」と鳴くサンコウチョウも近くに来ていたらしい。

バード・ウォッチャーとの情報交換は愉しい。小鳥のことは奪い合う必要はなく、分かち合うことができるのだ。

西湖野鳥の森公園の水場と餌場。ここにヤマガラ、シメ、シジュウカラ、ヒガラ、エナガなどが追現れる。家形の餌台のそばで、手乗りしてくれるヤマガラとも出会った。

1時間ほど一緒に探鳥してから、千葉からのご夫婦はもう少しまた歩かれるということで、われわれも車に戻って出発した。次の目的地は本栖湖キャンプ場である。樹海の中を行く国道139号線で西進する。

本栖湖キャンプ場に着いたのは13時頃。月曜の昼頃とあって、空いているだろうなと予想していたら、案の定、場内は混んでいない。事務所で受付を済ませ、奥のほうに進んでいったら、そちらはもうガラガラ。

われわれがキャンプ仲間と「1等地」と呼んでいるあたりに先着パーティはおらず、早速そこに車を入れる。テーブルやチェアや焚火台などを車の中から取り出して、設営する。近頃はタープを張ることはほとんどないので、ものの10分ほどで設営は完了。

本栖湖キャンプ場の中でもいちばん気に入っているあたりに設営できた。水場は目の前、トイレにも遠くなく、売店も数分歩けば行ける。

早速昼メシにする。簡単にしようということで、パスタを茹で、ボローニャソースをかけた。荷物を減らすためにクーラーボックスは持ってきていないので、常温保存できる食品がメインなのであった。

茹でるとき、うっかりパスタを1人前で茹でてしまったので、1束目はボローニャソースで、2束目はバジルソースで食べた。

腹もふくれたところでコーヒーを淹れる。パックコーヒーだが、野外で淹れると実にうまい。チェアリングしつつ、何か鳥が来ないかと待つ。

そうしたら、キビタキが現れた。いや、最初はキビタキとは分からなかったのだ。いつも正面から見ているので、斜め後ろから見たキビタキを見るのは初めてであったからかもしれない。スマホで検索してみて、キビタキだということが分かった。きれいな声で鳴いていた。

焚火もやった。前回持って帰った一束近い量の薪を、キャンプ仲間からもらったピコタイプの焚火台で点火した。かみさんが焚き付け用の小枝を拾うのに協力してくれたこともあって、キッチンペーパー2枚で着火できた。

友人から頂戴したピコタイプの焚火台で薪を燃やす。組み立て方が間違っていたらしいが、何とか使えた。

そんなこんなでもう夕方である。暗くなってからランタンの準備をするのは面倒なので、まだ明るいうちにSOTOのカセットガスランタンに点火する。

それから米を水浸する。小一時間浸けておいたところで、炊飯開始。1.5合メスティンで1.5合炊くのである。きょうはほとんど無風状態なので、火力の調整が楽だ。炊き上がったところでレトルトカレーの準備開始。

いつもならポーク缶を炒めるのだが、今回はともかく準備をする下界が暑かったこともあって、いろいろと簡単にすることになったのだ。その代わり、レトルトカレーは少し高いものにした。

レトルトのドライカレーで夕食。あとで味噌汁も飲んだ。

ランタンは18時頃に点火したので、カタログ通りの燃焼時間なら3時間というところだが、出力を少し絞ってあったせいか、22時を回ってもまだ消えないため、消火して車内にしまった。

就寝したのは23時半頃か。二人ともトイレには起きずに済み、回りが少し明るくなってから外に出て、トイレまで歩いた。風はない。やがてヒグラシが鳴き始めた。

特に撤収する日は、万事食事の支度は簡単にすることに決めているので、朝食はパック餅をトースターで焼き、醤油をつけて海苔を巻くスタイル。一人3個ずつ食べて終了。

それから車内を就寝モードから走行モードに転換し、荷物も少し整理する。昼メシは早めの11時頃にしようと決め、食器の洗い直しなどしなくていいように、売店でカレーヌードルを買ってくる。

薪も全部燃やし終わったので、灰を事務所前に捨てに行く。ゴミ袋の中味もだいぶたまってきており、本栖湖キャンプ場のルールに従って、可燃ゴミと不燃ゴミそれぞれのビニール袋に分別しておく。きょうはカラスに襲撃される恐れはなさそうだ。

11時に湯を沸かしてカレーヌードルを食べ、あとは撤収作業の仕上げ。チェアを折り畳んで収納し、テーブルも片付ける。前輪にかっておいた車止めを忘れないうちに外しておく。

12時をちょっと回ったところでサイトを離れ、事務所前の広場でゴミを捨てる。そのあと、うっかりしていて、テールゲートを開けたまま出発しようとして、キャンプ場の人が注意してくれたので助かった。ありがとうございました。

さてその後。早く帰ったほうが体が楽だということは分かっているが、昨日の野鳥の森公園が良かったので、もう1回リピートしようかということになった。かみさんも大賛成である。

13時前に西湖野鳥の森公園について、もう一度「手に乗ってきてヒマワリの種を食べるヤマガラ」に出会えないかとリベンジ。小学校の遠足らしき団体が近くにいて騒々しかったのでこれは難しいかなと思っていたら、なんとかみさんの手には6回、私の手にもヤマガラが2回来て、それぞれヒマワリの種を咥えて飛び去った。

途中でエナガの群れがやってきたのも良かった。小さい鳥であることは承知しているが、双眼鏡のいらないような間近で眺めると、本当に小さい。うずら玉子に羽根が生えたような感じなのだ。

しばらく愉しんだあと、15時頃に野鳥の森公園を辞した。道の駅あさぎりで小休止して、さて次はどこへ立ち寄るかというので、田貫湖に寄ってみることにした。ここは鳥を見るチャンスにけっこうムラがあるので、あまり期待はしていなかった。

車を止めた湖の奥の辺りでは、それらしい気配なし。遊歩道を右回りで歩き始める。その昔大きな虹鱒と15分ばかり格闘してとうとう逃がしてしまった岬のあたりまで歩き、そこから戻る途中で、ふと、一羽が水面上を飛び、小さなワンドの奥にある枝にとまったように見えた。

かみさんにそう説明すると、双眼鏡を目に当てた彼女から「いるよ」と返ってきたので、慌てて私も自分の双眼鏡を覗き込む。すると、きれいな光沢をもつ青緑色の背中がすぐ視界に入ったので、カワセミだということがすぐ分かった。少しずつ距離をつめて見ていたが、だいぶ近づいたところで飛び去ってしまった。

カワセミはそれほど珍しい鳥というわけではないが、美しさには際立つものがあって、実に印象的なのだ。カワセミと会えたことで、田貫湖に寄って良かったと二人とも実感したのであった。

田貫湖を出発したのは17時頃。新東名に入ってからは、ネオパサ清水に寄り、例によって「伝説のすた丼」を食べる。市内に戻り、少々買い物をしてから自宅に19時半頃に着いた。かなりクタクタになってはいたが、とりあえず荷物を全部車から下ろしたところで、バタンキュー。目が覚めたら夜中の1時過ぎだったので、車をガレージに入れるのは明日にしようということになった。そうしてきょう午前中に車をしまい、昼頃からこれを書いていたという次第。

30歳くらいの若い頃にはアウトドアと言えばルアーフィッシングやフライフィッシングだったのが、今は鳥見=バードウォッチングやキャンプが主体になっている。

釣りも以前は愉しかったが、最近では魚を傷つけることになんとなくやましい思いもでてきて、見るだけで満足できる鳥見のほうに惹かれるようになってきた。

それにしても、以前に大釣りをしかけた場所の目と鼻の先で、英名King Fisher のカワセミを見て喜んでいるとは、何かの冗談のようでもあり、ふるっている。


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