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クラシックなリール

アンバサダー(Ambassadeur)と呼ばれるクラシックなリールがある。製造元は、旧のABU/Garcia社。血統的にはスウェーデンのリールだ。

その中でも、細いライン用のリールとして、2500C、1500Cという製品が良く知られている。

英語版の Wikipediaでは、この2機種を、”The Legendary Light-line Fishing Reels” と評した著作を紹介している。

画像は両方とも2500C。手前がシルバー、奥側がブラックだ。仕上げだけでなく、ドラッグのフォルムも少し違う。

ルアーでのバスフィッシングに熱中していた頃、いやというほどこの2台のリールを使った。ベイトキャスティングリールは何台も買ったが、結局2500Cが自分にはいちばん扱いやすかったからだ。

ベイトキャスティングリールはロッドの上側に取りつけて使う。より一般的なタイプであるスピニングリールに比べて飛距離が出ない、ごく軽いルアーは投げにくい、バックラッシュを起こさずに使えるようになるまで一定の修練を要するなど、いくつかの難点もあるが、慣れてしまうと使っていてこれほど気持ちの良いリールもない。

特に2500Cや1500Cの場合、節度のある遠心ブレーキ、精密で正確なドラッグ、感触の良いクラッチなどに加えて、キャストしたときのスプールの絶妙な回転音などが素晴らしかった。

そういう一生モノのリールであることは疑いを入れないが、1990年代前半は定価で2万円ぐらいだったように記憶している。

現在ではディスコンになってしまったらしく、中古市場でも高値で取引されていて、メンテナンスされているものはかつての定価を上回ることも珍しくない。

ベイトキャスティングリールのメリットとしては、巻き上げ力が強い、ラインがよれにくいために長持ちするなどがあるが、キャスト時にスプールを親指で軽く抑えるサミングによって、ルアーの飛距離をコントロールすることができる点も大きい。

これはボート上から岸辺や障害物ギリギリにトップウォータールアーを打ち込んでいく場合などにまことに都合がいいのであった。

2500Cや1500Cには、古典ランドナーやロードのメカニカルなデザイン言語と同様なものが現れており、眺めるにつけ飽きない。

開高健氏がアンバサダーを評して、「時計の精密さと起重機の頑丈さを兼ね備えたリール」のように語っておられたことは有名だが、まさにその通りの使用感をこれらのリールは体現している。

あとどれくらいこれらを使う機会があるのかわからないが、生きている限り、自分も手放すことはないだろう。

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