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京都学生演劇祭2019 観劇レビュー Bブロック(9/19 13時回 観劇)

*観劇された人向けの文章です。 

*参加団体の皆様の今後の作品制作の一助になればと思うので、レビュー自体は超どストレートになります。

 *演劇祭アンケートに「MVPは?」という項目があったので、それもこちらに記載します。




①ゆとりユーティリティ「さとりストーリー」MVP:ガンジー

演出おおいけくんのバランス感覚が絶妙。
表現のレベルでかなり甘さはあるものの、今、自分たちが出来ることをバランス良く使ってやる、というのが全体に感じられた。

それゆえ無理なく物語が進行していくし、台車の裏のガンジーには抜け目のなさも見受けられる。こいつはタダのバカじゃねぇぞと。

ただ、メタが多い。
しかし、オチとしてはそのメタの積み重ねが大事になってくるという作り手の意図、意識があったのだろうが、メタの積み重ねは上手くいっていたとは言い難いし、客席を巻き込んで「所詮これは演劇だ」という姿には、かなりの置いてきぼりを食らわされた。

そういえば、向こう側の山に落ちたのは流星だと思っていたが、今日、感想を人と話し合っていた時に「いや、アレは京都タワーでしょ?」と言われて、これって僕がセリフを聞き逃していたのか?誰か教えてくれ。



②後方39999.999km「キロ」MVP:じゅういち

底ら変は「自分のいたアホの巣窟(多分自分も含めて)、演劇部」が嫌いなだけで、演劇は大好きなのがよく分かった。

彼は、頭では理解出来ていてもそれを全然上手く出来ない、というキングオブ不器用な男なのだが、今作においてはそれを笑いにも可愛げにも変換できるように調整して制作されていたので、彼を笑っている人達は、実は彼の掌の上で笑わされているということになるのだ。

しかも、魂の叫びは十中八九ノンフィクション。ゆえに言葉選びも端的で切れ味バツグン。

見立てやマイムなんかの、演劇のお約束もベタに取り入れつつ、アイキャッチ代わりのダンスシーンは微妙に下手。というかイケてない。でもそもそもそういう演出を入れる人達を小馬鹿にしているだろう精神が見え透く。

とても良い意味でイヤなやつだ。


ただ勿論というか、やはり普通に上手くいっていない箇所がいくつも散見されて脱線しそうになるのだが、2015年の主人公を演じるじゅういちが普通に上手いので、ギリギリ落ちないようにしてくれている。彼がいなければ、作品として成立はしていなかっただろう。

ちなみに、じゅういちがオファーを受けてくれなかったら、いらすとやを使ったスライドショーと会話する予定だったそうだ。それはそれで観てみたかった気もするが………、まあ皆まで言うまい。現状のものでも不安定さは凄まじかったしな。

あ、そうそう。不安定さが凄まじいということは、おそらく全3ステージでの差も凄まじいだろうし、演劇をもっと知っていけば、この面白さは出来なくなっていくだろう。あくまでも今の底ら変だからできる面白さであって、再現性は無いだろう。


導入は、四畳半神話大系よろしく、ループもののドラマが始まるのを少し期待させられたので、言いたいこと言いたい系の作品に収束したのはがっかりした。ただ、最初に言った通り、底ら変は自分の居た演劇部が嫌いで、演劇が大好き。それが一貫していたのがなにより好印象で、面白さの根源にあったのだ。




③睡眠時間「◎」MVP:なし

設定過多。


俳優の質はダントツに高いし、導入シーンも期待をグングン高めてくれる。会話劇をやっていける雰囲気を確かに感じていた。

しかし、なんというか、結局よく分からんのだ…。

みんな上手いし、物語を転がすための怪しいやつは出てくるし、「君と僕」に位置づけられる二人は魅力を感じるのに、色んなことが唐突すぎて…。

起きた出来事に対して各登場人物が固有の反応をしめすことで、彼らの価値観や感情に触れていくのが、会話劇のまあベタなやり口なわけだが、彼らは全てを語ってくれる。かなりの饒舌集団だ。

もちろん、消えゆく運命の町と、全てを共にしている人達だからこそ、次の時代への過渡期は複雑な心境にしかならないわけで。だから常にそういうモードに入っているのもまあ分かる。

しかし、感情の吐露や価値観の言語化は必殺技であって、小技ではない。必殺技も多用すれば価値は下がり、感動も薄れる。

モデルとなった市営住宅は、そのデザインのせいで、昼間でも陰りのあるなんとも言えない場所だということは僕も知っている。その雰囲気を舞台上に立ち現した表現力は素晴らしいのだが、それだけでもう「語りすぎている」のだから、余計にだ。

また、いわゆるセカイ系のくだりは申し訳ないことに本当に何も分からなかった。各登場人物のことをテンプレ程度にしか掴めていないこちらとしては、セカイの果てまで加速していこうとする二人には付いていく気にならないのだ。45分では色々と無理があったなという印象だった。

追記 俳優の質に関して。僕の考えとしては、最終的に全団体観た中で一番だった。シレンと××らんど、トム論と拮抗するのだが、トム論と××らんどはちょっと特殊なので横に置く。シレンも高かったが、飛び道具的なキャラばかりだったので、総合的には睡眠時間の方が上かなという推論も混ざった結論ではあるが、まあ観たものが現状が全てということで。

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