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No.212 【令和4年度対馬市議会会派自公・協働政務活動報告書そのⅡ】じじっか

【Ⅱ.一般社団法人 umau.】


《視察議員》
陶山 荘太郎、脇本 啓喜の2名
 
《視察日時》
令和4年11月16日㈬
15:30~17:00
 
《応接者》
副代表 中村 路子 様
 
《沿革》
2014年にママを一人にしない母子家庭団体SWAKとして活動をスタート。合同会社を経て、一般社団法人 umau.を設立。
 
《事業概要》HPより転載
所在地)
福岡県久留米市梅満町32-4
 
こどもの見守り事業や、フードバンク活用こども食堂(じじっかごはん)、配達(じじっかフード)、寄付資源お届け(じじっか部屋)、みんなでつくる休日、など、子育て中の生の声をカタチにしていく【じじっか○○】を生み出しあるものを活用し豊かに暮らせる融通の利く仕組みづくりを行っています。
理念)
育て「合う」学び「合う」支え「合う」そんな会う(au)を生み(um)出し合うコンセプト)
ラッキーループを巻き起こせ!
目標)
1.100人の貧困家庭の脱出
2.ひとり親、ふたり親ではなく、7人親え(ゼロプレイスづくり)
ひとり親家庭を中心とする親子の発想を元に、現代に必要な暮らしに関わる資源活用と自主制度づくり、様々な状況かにある家族の実家となる法人として歩みます。

《視察目的(選考理由)》
中村路子氏を初めて知ったのは、長崎新聞に『じじっか』が大きく取り上げられた記事を拝読したことがきっかけでした。Facebookで検索すると、複数の共通の知り合いがいて、早速友達申請をしました。視察を快く引き受けて頂いたのですが、コロナ禍で延び延びになり今回やっと視察することができました。
視察を申し込んだ理由は、事業内容に興味を持ったことはもちろんですが、自ら体験したシングルマザーの生き辛さを単に個人の課題としてではなく、地域の課題と捉えて、仲間を募って解決に奔走している実体験を拝聴したいと思ったからです。
 
《視察概要報告》
(1)『じじっか』設立までの経緯
○中村氏は結婚後も美容部員として就労。
○離婚をきっかけに飲食店店員に転職。そのオーナー(佐藤有里子氏)が地域ボランティアを活発に行っていらっしゃったことに触発され、既に設立されていた株式会社キャリア・リードで『じじっか』運営に必要なスキルやノウハウを2014年から体得していく。
○2012年には、「子育てだけではない社会のつながりをもちたい」「自分のキャリアやスキルを活かし地域に貢献したい」との思いを共有する仲間と共にコワーキングスペースとして、6畳の部屋を7部屋借り上げ、主に女性フリーランスを支援する『メリコア』を立ち上げる。
 
(2)『じじっか』を設立しようと思ったきっかけ
○表面上のキラキラしたことよりも、もっと身近な暮らしの支援をお互いにできるグループに発展させたい。
○生活困窮過程に毎月10万円渡しても、保護者の生活態度が変わらなければ幸福な家庭になるとは限らず、貧困の悪循環を断ちたい。
○ある娘さんが「クリスマスが寂しい」と漏らしたことをきっかけにママを一人にしない母子家庭団体『SWAK』を結成し、シングルマザーズカフェを運営する中で、花火大会やキャンプに出かけるなど、ママ単独では提供困難な体験を有志で実施していった。
○子どもの頃虐待やネグレクトを経験した親は、自身もそうなりがちだと経験上感じている。負の連鎖を断つには、独力では非常に困難だと思った。
○「スキルアップで生活向上」という価値観ではなく、今の収入でも何か幸福度を挙げられる手法を模索したいと感じた。


じじっかとは…


(3)『じじっか』の現状
①主な事業
○こども食堂
週5回金土日の昼(約40食)及び金土の夜(120~160食)。最近は、久留米市や社協などからの紹介も増加している。
○こども見守り強化事業(久留米市からの委託事業年間900万円)
今年は受託3年目。月2回55~57世帯に子どもの分のみ返答を宅配する。その際、1時間の学習支援も実施しているのは12世帯。

今後、じじっかは…


(4)『じじっか』の今後の方向性
○今後の運営費確保が懸念される。
○補助金だけには頼っていられない。
○就労支援事業及び児童養護施設の運営も展開したい。
○フードバンクと連携した地域通貨アプリPEACE-COINへの加盟も検討中。


○行政と委託契約を結ぶ際の仕様書は、行政側の都合や思惑が強く反映されており、受託側の意見をもっと反映させたものとして欲しい。(委託契約及び請負契約は委託側の行政が受託側より遥かに立場が強く、福祉サービスの契約形態としては、行政と民間団体が権限と責任を対等に分担する”協働契約”の方が、フィットしていると思われる。老婆心だが、中村氏にも横浜市の『市民協働ハンドブック』を紹介し、契約形態の変更を協議してはと提案申し上げました。)
○生活困窮世帯の保護者の多くは、誰にも相談できずに悩んでいる。たとえ運よく、SOSに気づいてもらえても、周囲のサポートなしではなかなか依存症等の悪循環から脱出することは困難だ。7人の親で(ママを一人にせずお互いに支えあって)育てるというコンセプトを更に推し進めていきたい。

《視察を終えた感想》
○見せ方ひとつで大きく変わる生活支援物資が段ボール箱に入って送られてくる。⇒以前はその箱から子どもたちが直接好きな物を取り出していた。⇒施しを受けているイメージでその光景は物悲しく感じていた。⇒そこで写真のように、照明を点けてハンガーにかけてブティックのように洋服 をディスプレイすることにした。⇒子どもたちは、目を輝かせて洋服を選ぶようになり、自分が大きくなって着られなくなったら○○ちゃんに、譲る約束をしたから大事に着るんだと、ものを大切にするようになる効果も生まれたそうです。

○これは、対馬市民にとってはありふれた物かもしれませんが、見せ方(セールス手法)一つで、市民にとっても観光客にとっても見違える価値を生み出せるかもしれないと感じさせられました。
 
○円滑な組織運営には、有能なマネージャーが必要
マネジメント能力は天性のものがあるかもしれませんが、中村さんは段階を踏みつつ、経験を重ね身につけてこられたのだろうとインタビューしながら感じました。そして、インタビュー中もスタッフが指示を受けに来るのですが、驚くほど指示を出すまでの決断が早い。これは、厚生常任委員会で先日視察した障がい者就労支援室の原田施説長からもそのような印象を受けました。私もアラ還となりましたが、今からでもマネジメント能力の修得に精進して参りたいと存じます。
 
○初期はパッションでなんとかなるが、営利が第一でない組織を運営するには共感しあえる仲間が不可欠。中村氏は『じじっか』設立までにいろいろな会社やグループを立ち上げてこられていますが、そのほとんどが現在も稼働中とのこと。それは、各会社やグループに任せられる仲間がいらっしゃるからだろうと感じました。
 
○対馬市では、観光商工等の分野でのベンチャー企業の設立は散見されるものの、島内大手社会福祉法人以外の福祉関連ベンチャー企業はあまり見られない。福祉をはじめまちづくりを語る上で〈自助、共助、公助〉という言葉が使われます。しかし、私は自助と公助の間にある〈互助〉の普及が、今後地域の将来を左右すると考えています。嘉田元滋賀県知事が提唱した<懐かしい公共〉(その昔日本各地の集落で支え合って生きてきた互助の精神の復興)の普及を図る仕組み作りが待たれると思います。
 

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