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No.276【請願第7号に係る地方自治法第117条に基づく除斥を求める動議について】

12日㈫に開会した令和5年第3回対馬市議会定例会初日は、高レベル放射性廃棄物最終処分場誘致とそれに伴う文献調査受け入れの是非をめぐり、長時間にわたり紛糾し、激しい議論が交わされました。

請願審査特別委員会報告がなされる前に小職が、〈請願第6号に係る小宮教義委員に対する除斥を求める動議〉を提出致しました。小宮委員は請願第6号の提出団体である対馬市商工会の理事を兼ねています。議長及び議員は利害関係があると疑いを持たれる場合は当該審査において除斥する必要があるとの地方自治法第117条に抵触するため、小宮委員は除斥すべきであったとの主張です。しかし、激しい協議の末、除斥に相当しないと決定されました。

以下、動議の概要を掲載致します。

《請願第7号について除斥を求める動議》

請願第7号について地方自治法第117条に基づき小宮教義議員の除斥を求めるべく、動議を提出致します。

第117条 
普通地方公共団体の議会の議長及び議員は、自己若しくは父母、祖父母、配偶者、子、孫若しくは兄弟姉妹の一身上に関する事件又は自己若しくはこれらの者の従事する業務に直接の利害関係のある事件については、その議事に参与することができない。 但し、議会の同意があったときは、会議に出席し、発言することができる。

請願提出団体である対馬市商工会の理事に小宮教義議員が就任なさっていらっしゃるので、少なくとも請願第7号の審査に当たっては除斥すべきであると思われます。

もしも、議会で除斥が認められれば請願審査特別委員会の審査は無効となり、採決どころか審査から必ず差し戻す必要が生じます。なお、当該除斥の時効は無く除斥すべき議員が判明すれば、次の議会であっても再議に付さねばなりません。

なお、この除斥の判断基準特に、所属団体の直接的利益という解釈については法学者においても意見が分かれるところであり、簡単に類似事案からの推測による軽々な判断は避けるべきであり、個別事象について詳細な審議が求められます。

従って、委員長報告がなされる前に請願第7号について小宮教義議員が除斥対象となるか否か、当然慎重審議を要すると思われます。

請願提出者である対馬市商工会山本会長の口述後の質疑応答において、山本会長は「議会での議論の結果文献調査の受け入れが商工会の利益になるようであれば受け入れを推進して欲しい」旨の発言がなされたように、この請願第7号が採択されること自体が、対馬市商工会の直接的利益であると十分解釈できると私は思います。

なお、判例に照らせば商工会の理事は常時支配力を有する地位にあるものと解され、除斥の対象となります(『地方議会運営の実務』全国町村議長会)。

また、地方自治法施行令第166条(現行令では第168条)の規定により常勤か非常勤かには関係なく除斥の対象となります。更に、報酬の多寡が除斥するか否かの基準になるのかについて調査しましたが、現在のところそれにまつわる判例は見つけられませんでした。

《除斥に関する参考資料》
以下の参考資料からも、『直接的』利益の判断が、個々のケースで判断が非常に難しい。
但し、疑われる立場となった議員は、自ら退席することが、議員の矜持ではないかと私は思います。対馬市商工会は当該請願を提出するか否かを理事会で決定しました。その団体の意思決定に関与していた議員が除斥とならないというのは、未だ納得がいきません。少なくとも、会期末まで慎重に調査研究して、除斥の是非を改めて採決すべきであったと思います。

過去の判例に照らせば、商工会理事は、団体の執行機関(意思決定機関?)である理事会で議決権を有するのであるから、常勤非常勤の区別なく、株式会社等の商法上の会社役員と同等の取り扱いを受ける。 なお、当該団体からの報酬の多寡について触れている判例は見当たらず、無報酬であっても「支配的な地位にあるか否か」が除斥を決定づける要素であると、解釈できそうである。
法の定める「自己等の従事する業務に直接の利害関係のある事件」といえるかどうかが重要。少なくとも間接的に利害関係のある事件であることは間違いないとしても、「直接の」といえるかどうか? 判断が難しい。
四-2は、議員が理事であるか否かも関係なく、建設業者であることのみで除斥対象であると判断しています。


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