あいちトリエンナーレ2019写真日記②
10/4(金)[前回からの続きです]
今回のあいちトリエンナーレではQRコードをスマートフォンで読み取ると(公式アプリをインストールしていれば)、その作家の作品の説明とこれまでの作家が手がけた作品の情報がわかるようになっている(キャリアによっては電波が届かない場合、アクセスできないかも)。
笑ってしまうが、考えさせられる作品、というのが結構あった。現代アートでは、たまにそう言った類いの作品に出会う。
アンナ・ヴィットさんの「60分間の笑顔《Sixty Minutes Smiling》 2014」が例えばそうだ。
フォーマルなスーツを着た人々が同じ姿勢、同じ笑顔のまま、60分間こちらを見つめている動画。自分たちが彼らのような笑顔を浮かべるとしたら、それははたしてどんな時か。彼らも、じっと止まっていることがだんだん難しくなる。「彼らは微笑み続けていますが、本当に幸せなのか?」というテキストが公式アプリにも書かれていた。見ていると笑ってしまうが、同時に心当たりがないというわけでもない、と思ってしまう。
ププッ、と笑ってしまう菅俊一さんの「その後を、想像する」は見方によっては何かを示唆しているように思えるかも。動画が特に面白かった。写真は展示作品。
伊藤ガビンさんの「モダンファート 創刊号
特集 没入感とアート あるいはプロジェクションマッピングへの異常な愛情」も面白かった。プロデューサーあるいはディレクターを演じるキャラクター(声のみ)の実際にコンピュータを使って映像を作るプログラマーと共同作業をしている場面を想像して思わず笑ってしまう。
(画像はあいちトリエンナーレ2019公式アプリから)
笑いの中に、どこか悲哀が含まれるものに興味が湧くのかもしれない。
悲哀という言葉だけではおさまりきらないが、ウーゴ・ロンディノーネの「孤独のボキャブラリー《Vocabulary of Solitude》 2014 - 2016」のピエロの彫刻45体によるインスタレーションも興味深い。
色鮮やかな衣装を身にまとってはいるが、彼らは無表情だ。ピエロにスマートフォンを向けるが人の顔とは認識しなかった。人が目を閉じても認識はするから、それはあまり関係ないようだ。認識はしないが、しかし、リアルなのだ。あるいはたまたま僕のスマートフォンのカメラが反応しなかっただけかもしれない。
ピエロにはそれぞれ、彼らの行う行為から名前がつけられている。
佇む、呼吸する、寝る、夢見る、目覚める、起き上がる、座る、聞く、見る、考える、立つ、歩く、おしっこする、シャワーを浴びる、着る、飲む、おならする、うんちする、
読む、笑う、料理する、嗅ぐ……。
一人の人間が、人生のとある一日、その24時間で繰り返し行っている家の中での孤独な振る舞いを示しているらしい。
普段知ることのないことを知る機会でもある現代アートの世界。
台湾の袁廣鳴(ユェン・グァンミン)さんの「日常演習」というドローンで撮影された映像作品はまさにそれ。
(画像はあいちトリエンナーレ2019公式アプリから)
「萬安演習」というものを僕は知らなかった。1978年より続くという防空演習だそうだ。この演習は毎年春先に実施され、日中の30分間人々は屋内へ退避し、自動車やバイクなどの交通も制限されるという。台湾の高齢者や外国人にとっては戦争の影を感じさせ、若者にとっては毎年の見慣れた行事になっているそう。人が一切映らないことに驚いた。世代によって受け止め方は異なるそうだが、中国との関係を考えるといろいろ考えてしまった。普段は平和な街並みも一変する可能性というのがいつでもあるということだ。
日常を切り取るということは芸術がやってきたことだが、ドローンで何を撮るか、というときに、この作家がこの映像を撮ったということが興味深い。
違った意味でドローンと関係する作品がジェームズ・ブライドルの「ドローンの影」だ。
地面に描かれた白いラインは、実在する無人偵察機「RQ-4 グローバルホーク」の実物大シルエット。機体は、横幅が約35m、長さが約14mあり、イラクやアフガニスタンで実戦運用され、日本の自衛隊にも3機の導入が予定されている。これも恥ずかしながら僕は知らなかった。 聞いたかもしれないが、覚えていないので同じことだ。
無人偵察機のシルエットを描く方法は、作家本人のウェブサイトや書籍によって公開されているのだそう。様々な場所で、誰もがシルエットを描くことが推奨されている。
「それは、まさに見えにくい事柄を可視化したうえで、皆で考えたり議論したりする ことを促すためと言えるでしょう(あいちトリエンナーレ2019公式アプリより)」
(続く)
[引用・参考資料]あいちトリエンナーレ2019公式アプリ
※ ちなみにタイトルの写真は、愛知芸術センター内から外の景色を撮影したものです。
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