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「渾身一句」企画へ

「チャコール」を毛糸の色で覚えし日

とはち 李音(とはち りの)

季語:毛糸(冬)


ラベンダーさんの企画に参加させていただきます。

白杯で人生初の俳句を詠んでから、今日でちょうど4ヶ月。私は、渾身の一句と呼べる句をまだ持っていません。これまで詠んだ180句を読み返してみて、自分の中で最も印象深い句を「私の代表句」として選びました。

この句は、俳句幼稚園に入らせていただいて間もなくの、昨年11月12日に詠んだもの。なぜこれが自分にとって印象深いのか。

まずは季節。私は冬が好きです。自分の生まれた季節だからかもしれません。俳句を始めて、俳句幼稚園に入ってすぐに俳句の季節は冬になりました。

そして季語。初心者マークをつけて4日目の登園の日に、紫乃先生が紹介して下さった季語は「毛糸、毛糸玉、毛糸編む」でした。今も好きな編み物、一番夢中だったのは中高生の頃。楽しかった思い出が一気に押し寄せてきました。詠みたい、詠みたい、あぁ詠みたい。焦るばかりで空回りする頭。朝から考え始めて、気づいたら日が暮れていました。こんなにも何かに熱中したことは、いつ以来だろう。いや、もしかしたら人生で初めてかもしれない。本当に楽しかった。

ようやく納得のいく句が三つできた、そのうちの一つが今回の「代表句」です。編み物の本に載っていたチャコールグレーという毛糸の色。当時住んでいた地元の駅前の仲見世通りの手芸屋さんに、チャコールなどという、聞いたこともない名がついた色の毛糸が、置いてあるのだろうか。果たして、見つかりました。あの時の嬉しさと安堵。以来、チャコール系の色は大好きです。

さて、投句をしてから。幼稚園の方々がコメントを下さいました。

編み物について、「懐かしい」という共感の声。また、句の中で「」(鍵カッコ)を使うことの是非や、「炭」が冬の季語であることから、ここでの「チャコール」は大丈夫かなど、先生方が連携して下さってのご意見。これは、何もこの投句の時に始まったことではありません。これ以前の、初登園のその日から。白杯まではなんのご縁も無かった、どこの馬の骨ともわからない私に、園の先生たちや園内外の皆さんが惜しげもなく言葉を下さり、力を注いで下さることに、驚き感動しっぱなしです。それは現在に至るまでずっと同じです。

さらに。この「チャコール」の句について、「チャコールという色を、編み物を通して初めて知った」という内容は、間違いなく受け取ってくれたうえで、「年上の男性への贈り物だったのかなと想像しました」と感想を下さる方がいた。自分のために編んだカーディガンのことだったのに。素敵な物語を感じてもらえた!自分が詠んだたった十七音の言葉が、自分の手を離れて広がっていく。「俳句っておもしろい」を実感した句でした。

大好きな季節に、どうしても詠みたいと思う大好きな季語の句を、必死で作った楽しさ。皆さんとやりとりできる喜び。新たに体感した俳句の面白さ。これらが詰まった句を、今回の代表句とさせていただきました。

と、一句を選びましたが、私にとっては作った180句すべてが代表句とも言えます。詠む楽しさ、うみ出すまでの苦労、何といっても一緒に読んで下さる仲間がいる幸せが、どの句にも詰まっている。コメント欄は宝もの。俳句についての気づきや学びはもちろんのこと、相手に敬意を持って自分の率直な感想や意見を伝えることの大切さ、その伝え方など。人目を気にして八方美人になったり、時に思慮に欠ける言動をしてしまう私は、どれだけ勉強させてもらっているかわかりません。また俳句を通すと、初めましての方にもひょいっと近づけるのも、とても嬉しいです。

まさか、俳句にこんなに夢中になるとは思わなかった。朝から晩まで歳時記をそばに置き、家でのできごと、四季の景色の移り変わり、鳥の声、思い出などなど、季語に出会う度になんとか季語に近づけないかと。家族にアイデアをもらうこともしょっちゅうで、「また俳句のこと?」と、夫も最近ではすぐにわかるらしい。

私の俳句は、時々山と空、たまに海や旅先が出てくるくらいで、大半が自分の半径5メートル以内の句ばかりです。これからも学んで、いつか、深みのある大きな世界観の句を詠めるようになりたい。そしていつか渾身の一句を詠んでみたい。俳句幼稚園の内外でやりとりをして下さる皆さま、いつもありがとうございます。これからもよろしくお願いします。

ラベンダーさん、企画に携わって下さっている皆さま、素敵な企画をありがとうございます。私は、俳句を作るだけで長時間を要し、コメントを書くにも時間がかかり、毎日自分のことだけでも時間が足りないと感じているのに、皆さんどれだけ忙しい思いをしてくださっているのだろうと、感謝しかありません。今回は、企画に出す句を無理矢理選んでの参加となってしまいましたが、自分の句はともかく、参加されている方々の句と記事に毎日感動をいただいています。

心からの感謝をこめて。