嘘in嘘話(23.02.16)
・黒い水面が白で薄まり茶色くなって、初めてコーヒーは焦茶色であるという事実を思い出す。同時に、クリープはヤギの乳からできている、という詮無い嘘を思い出した。コーヒーとミルクを分離する技術が今ネスカフェにより研究されている、という嘘も。
見るからに嘘っぽい、意味のない嘘ばかり吐く先輩だった。時折嘘みたいな本当の雑学も混ぜてくるので性質が悪く、彼女の言うことは誰もが話半分で聞いていた。私も含めて。
給湯室の端のコップには、紙でできたストローが大量に常備されている。口当たりが悪いので、誰も使おうとしていなかった。役割を与えられない筒の大群を見るたびに、随分昔に吐かれた嘘を思い出す。将来的にはストローは紙でできるようになる、という、当時はそれが真っ赤な嘘にしか聞こえなかった。
それだけの時間が経った。
先輩は、ある日「明日から私は別世界に参ります」という言葉とともに、さっぱりいなくなってしまった。真っ赤な嘘だと思った。真っ赤な嘘だと信じてきた。
先輩は嘘吐きだ。けれど、他人を傷つけるような嘘は、決して言わない人だった。その事実を私は、未だに否定し続けている。
・という短編でした。
・昨日はなんか妙にムシャクシャして久々にファミチキを買って帰った。開封のミシン目にセロテープはかかっていなかった。
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