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ALS患者の嘱託殺人事件の容疑者の思想について
恐らくTwitterでフォロワーだった「羆」氏だと思うので、氏の思想について自分の知っている限りのことを綴っていこうかと思います。
↓犯人が「羆」氏であると考える理由
現在、羆氏について「優生思想である」などの批判が集中しています。
高齢者への医療は社会資源の無駄、寝たきり高齢者はどこかに棄てるべきと優生思想的な主張を繰り返し、安楽死法制化にたびたび言及していた。
(引用:逮捕された医師は元厚労省官僚 「高齢者は社会の負担」優生思想 京都ALS安楽死事件)
ひどい事件だ。かつて、30歳過ぎたら使えないと言った若手起業家がいた。経済効率や生産性という物差しでしか思考できないことと、この医者たちの優生思想は同じ根っこを持っている。https://t.co/1bkF5oVTvJ
— 平川克美 (@hirakawamaru) July 23, 2020
しかし、なんとなくTwitterで氏の言動を見ていた自分としては、氏の思想はいわゆる典型的な「優生思想」とは少し離れた場所にあったと感じています。
個人的には、氏の思想について心からの賛成も心からの否定もできないのですが、氏がどのようなことを考えて事に及んだかを知るのは事件について考える上で有益であろうと考えるので、氏のツイートについて本件と関連深いと感じる箇所についてまとめていくこととします。
ALSで障害年金20万+身障1級で医療費無料→病院に捨てて家族ウマー。病院も障害者病棟に入れれば毎月売上100万円也。医療区分が低ければ気管切開や胃ろう造設して長期入院。 こんなひどい制度がなぜ放置?・・本人が使えない年金なら現物支給でいい。
— 羆 (@mhlworz) October 15, 2011
連休前なので、植物状態の患者に息子たちが会いに来た。「先生、胃ろうから栄養流しこむのやめてもらえませんか」 本人の意思がわかれば可能だと思う、と伝えたら、「そんなこと、元気だった頃に話しあうわけもない・・」と。やはり万一の時のことは周りに伝えておいたほうがいい。
— 羆 (@mhlworz) September 22, 2011
カルテを見ると胃ろうを造った患者は何年も生きている。家から追いやられ、誰一人面会にも来ず、娘息子が年金を受け取るためにベッドに寝かされているなんて、ある意味、非実在老人ではないのか。
— 羆 (@mhlworz) August 4, 2010
80代後半や90代の患者がメシ食わなくなったからと言って度々胃ろう造設依頼を書かされる。人の道から外れてる気がするのだが。メシが食えなくなったらそれが自然な死だと思う。
— 羆 (@mhlworz) August 4, 2010
90超の母を施設に放置。たまたま微熱があったので、職員を罵倒して当院を受診させた娘。「老衰ですね」と諭したがマジギレ。認知症で胃ろう、おむつの婆ちゃんは、あんたに年金貢ぐためのマシーンかよ。これこそ人権侵害じゃないの。人権派の弁護士先生おねがいしますよ。
— 羆 (@mhlworz) January 26, 2013
数年来、氏をヲチってきた自分の感想としては、氏の怒りはALSや高齢者胃ろうなどの患者に対するものというよりは、そのような当事者を食い物にする家族や病院経営者、それに対してなんの手も打てない日本社会に向けられたものでした。
生き物の最期は哀しいものです。
鳴きこそすれ、物言わぬ犬でもそうですから、長年いっしょに過ごした家族との別れはいかほどかと思います。
ただ、それを単に先送りするのは誰のためなんだろうと感じることもしばしばあります。
どうみても老衰で食べられなくなった人に、「気の毒だから」と家族の希望で胃瘻。
意思疎通もまったくできない寝たきり状態なのに、栄養たっぷりで肉付きがよくムチムチの体。
家に連れて帰るわけでもなく、まったく面会にも現れない家族。
そんなケースもよく耳にします。
はたして本人の意向がどれだけ反映されているのでしょうか。
仕事とはいえど、いろいろと感じ入るものがありました。
そんな中、人生の終わりが見えてきたら、好きなものを食べて自由に暮らす。
苦痛の緩和は当たり前だけれど、逝くべきときは運命に抗わずに逝く。
そんな環境を用意したいと思って、準備をしてきました。
公的な制度に載せると自由がききませんから、工夫を重ねました。
責任もってケアをするには、介護のベテランに来てもらわなければなりません。
減免をあれこれ駆使した激安価格は実現できませんでしたが、入居一時金として何千万を求められるような有料老人ホームよりは遥かにリーズナブルな仕組みができました。
「何年も長生きはしなくていい、好きなように暮らしたいから、手伝ってほしい」という方がいらしたら、ぜひご相談ください。
(引用:当院のホスピス(容疑者のブログ)より)
被害者の方のツイートについても目立つものをまとめます。
主治医との話し合い
— tangoleo (@tangoleo2018) September 13, 2019
胃ろうからの飲食拒否は自殺幇助に当たるから出来ないと言う
ならば一切の支援を断って窒息死(吸引できないから)すると言ったらそれもダメ
一体私の人生の権利は何がある?
結局摂取カロリーを600に減らして蛇の生殺しみたく弱まり死ぬのを待つだけ
怒りしかない #安楽死
1日500kcalでどれだけ弱まれるんだろう?
— tangoleo (@tangoleo2018) September 13, 2019
そんなに早く死ねないよな
痩せて褥瘡とかできるんだろな
怖いな、、、怖いな、、、
でもこうするしかないもんな
怖いな、、#安楽死
目が動かなくて文字を打つのが大変
— tangoleo (@tangoleo2018) September 20, 2019
時間かけても吐かなくてはやってられない
「そんなに急がなくても(死ぬまで)そんなにかからないよ」
無責任なこと軽々しく言うな!
前回ツイートした友人、帰り際に「それでも私はやっぱり治ると信じてまた来るしな!」と言い放った
— tangoleo (@tangoleo2018) June 15, 2019
その友人に頼んでることがある。私の死に様をツイートして欲しいと
「亡くなりました」の報告だけでなく医師の対応やどのように安楽に又は苦しんで逝ったのか。みなさんの参考にしてもらいたい#ALS
無論、「羆」氏の行為が海外で認められている「安楽死」などの制度に則った上でも適切なものであったかは疑問が残るところです。現にNHKの取材に対し、鳥取大学医学部の安藤泰至准教授は以下のように答えています。
「患者に死期が迫っていないうえ、SNSで依頼を受けた医師が苦痛の緩和を尽くしたともみられず、海外の一部の国が厳しい条件を設けたうえで認めている『安楽死』とも大きくかけ離れた行為だ」
(引用:ALS患者の嘱託殺人容疑で逮捕の医師 SNS通じて知り合ったか)
本事件について、筆者が申し上げられることはそれほど多くありません。ただ単に逮捕前の氏の言動をSNSで知っていたというだけの間柄です。
しかし「社会に対し、あるいは特定の誰かに対し、伝える必要と価値のある情報を持っている者はそれを書く必要がある」という某作家の言葉に対し、消極的な賛意を示している自分としては、本件について自分の知っている(そして世間にあまり知られていない)情報について書く義務があるように思われました。
本件について有益な議論が尽くされること、
そして亡くなられた方の冥福をお祈りいたします。
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