見出し画像

「安全基準」は過去の教訓の上に築かれていることを知るべき

また自動車メーカーによる認証検査の不正が明るみに出てしまった。

広く目を向ければ自動車メーカーに限らず様々な企業が、データの改ざんや捏造などの不正を行ってきていたことが発覚している。メーカーに限らず、また企業に限らず政治も含めていろいろな分野で隠蔽、改変などの不正が横行している感があるが、今回は製造業における安全(環境保全を含む)関係の技術的な基準に関する事案に限って考えることにする。

資本主義の自由競争市場では、政府などの権力による適切な規制が必要である。もし規制を行わないと、企業は利益を最大化するため、安全性や環境負荷の低減といった事への投資を怠ることになる。だが、時に規制に適合させるためにコストが上昇したり、新モデルの開発に要する期間が長引いたりする、という事態が発生する。そうすると非技術系の経営者が技術陣に対して実現不可能な無茶振りをする場面が往々にして発生する。

そうなると有名な「出来ない理由を考えないで、何とかしてやれ」という言葉が出てくる。これは「チャレンジという名のパワハラ」以外の何物でも無い。技術者は現有の技術でどれだけのことが出来るかを熟知している。達成すべきゴールにたどり着くために必要な、技術開発の期間やコストもおおよそ見積もれている。だが経営側は市場での優位を得るために、もっと早くそしてもっと安くしろと要求する。その結果、基準を満たさない製品を出荷したり、基準に適合しているかの検査の一部を省いたりという事が起きる。

自動車に限ってみても、適用される安全及び環境関係の基準は多岐にわたる。そのため新モデルの発売には多くの検査が必要になる。現在の規制基準は、これまでに起きた事故や環境問題の経験に基づいて、それをできる限り再発させないように制定されている。経営幹部がそこのところを正しく理解していれば、技術陣にたいする無茶振りもなくなるはずである。そして不正な手段で「解決したことにする」という逃げ道に走ることもなくなると思われる。
このような不正は日本企業固有の問題と思われがちだ、実は日本以外でも排ガス検査で、実際の走行時と検査時とをコンピューターが判別して燃焼条件を変更するプログラムを組み込んでいた事例があったようだ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?