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「チームコールを考える」VALORANT勝手に講座

VALORANTのPremierやフルパ等をやっていますでしょうか?他のゲームCSGOやAPEXでチーム活動やパーティを組んで遊んでいますでしょうか?
昨年10月に私の「コールについての基本」という記事ではランクマッチにおけるコールを基本にしながらの解説となりました。

ではプレミアやフルパコンペ、チームでの活動ではどのような部分が重要なのでしょうか?
ネットの海にもここに言及した動画や記事等は多くはなく、言語化しずらい部分でもあるのでメンバー全員に共有させるのが非常に難しいかと思います。

そういった悩みを持った方向けに、今回はどういったコールのやり方をすればいいかという部分について、ビジネスにおけるコミュニケーションや、航空機の緊急時における対応の仕方、最後には「コールをさせない・しない」という部分にも言及していきます。


「W5H1から伝える基本を考えよう」

よくプレー中に「あれ?なんか話が通じなかったな」といった経験はなかったでしょうか?

意図が伝わらず、やろうとしたことができない。このゲームではよくあることですね。しかし、これはVALORANTに限ったことなのでしょうか?友人との会話中に「あれ?アンジャッシュみたいになってる?」となったことはないでしょうか。学校でも「そういう意図だったのね」会社でも「あれ?そういうやり方だったのね」
こういったうまく伝わらなかった、伝えられなかったことは当然ですが現実社会でも起こりえます。

さて、声は通ったはずなのに意図が伝わらなかった場合に考えられるのが「そもそも分かりにくい説明をしていた」可能性です。今回はビジネス用語としては有名な5W1Hから考えていきましょう。

例えばアセントでミッドを利用した攻めを例にします。IGLのオーメン君の意図はマーケットのスキル破壊後、リコンやナイフのリキャストを待ってからのエントリーを考えています。

A君はチームにこう伝えました。「マーケット取っていこう、デュエリストはスキル待ってね」さて、結果はどうなったでしょうか?マーケット取得まではスキルを入れて丁寧に取れましたが、リキャスト前にフラッシュ等のスキルを合わせながらエントリーしてしまいました。

IGLのオーメン「いや待ってくれ~」の図

これはIGLのやろうとしたこととは全く異なっており、意図が伝わっておらず明確なミスになります

さて、もう一度IGLのコールを5W1Hに当てはめて振り返ってみましょう。「マーケット取得からエントリーしよう、デュエリストはスキルを待ってね」この「マーケット取得からエントリーしよう」の部分は「何を」「どこで」に該当しますからWhoとWhereになるでしょう。これはしっかり伝わっています。

デュエリストについても言及しているので少し「誰が」についても言及しているでしょう。しかし、残りの「いつ」「なぜ」「どのように」といった部分が大きく抜けていることが意図の齟齬を発生させています。

この場合の正解例は「マーケット取得後、スキルリキャストタイミングでエントリーしよう、配置は1-4ね」となります。

Whereは「マーケット」、Whatは「取得」、Whoは「1-4(配置名)」、Whyは「エントリーするため」、Whenは「リキャストタイミング」、Howは配置やリキャストタイミング等が該当するでしょう。

言葉の数は大きく変わっていませんが、意図が伝わりやすくなりましたね。この上にHowの要素、例えばエントリー方法等を余裕があれば足していくとより一層ミクロの競り合いで有利になっていくでしょう。

ラウンド中はすべてを伝えるのが難しいこともあるかもしれませんが、ラウンド前のプランニング中は丁寧かつ簡潔に伝える考え方が大事になります。

「結論を先に言おう」

これは文章等を書く時の基本として聞いたことがあるのではないでしょうか。
アセントBのラッシュを試みるパターンで例文を出してみましょう。

「相手多分B2の配置っぽいな、ツリーにリコン入れよう、ヌルコマンドも使って、Bラッシュね」

これではツリーに入れるリコンの指示はあっても、Bにいつエントリーするのかが途中までわかりませんし、ヌルコマンドも同様にいつ使うかがわかりません。
過去の私の記事では「報告」の優先順位について触れましたが、ここで重要としていたのは「位置情報」でした。これはFPSの基本とも言える部分で、結局はクロスヘアからスキルからすべての行動を起こすのに一番重要なのは位置情報なんです。そして、これは味方を動かす時にも共通しています。体を寄せていないと銃も撃てませんしスキルも入れることができません。
では、それを踏まえて文章の順番を変えてみます。

「ヌルコマンドBラッシュしよう、リコンはツリーに入れよう。多分相手B2配置ね」

この文章の一番重要でかつ結論の「Bラッシュ」という言葉を出来るだけ早い段階で入れています。これによって次に話している「ツリーにリコンを入れる」という言語を理解しやすくさせているんですね。

目的や結論を先に言わないと「なぜ?」が頭の中にずっと残りながら話を聞くことになります。

VALORANTは一つ一つの時間が重要なゲームです。特にラウンド前は30秒間で準備を整える必要があり、ラウンド間のコールを難しくしている原因です。
ということは、この時間に無駄な前置きなどは当然NGなんですね。先ほどの連呼しないという話も含め、味方全員に通るコールがどのように聞こえているかを考えながらコールするのが重要です。では今回は上級編ですので深掘りして解説していきます。

緊急事態から考えてみる

VALORANTにおいては相手の逆プッシュなどの想定外、想定内であっても素早く状況を伝えなければいけないシーンが存在します。
さてこういったときに重要となる部分を今回は東洋大学の緊急事態におけるコミュニケーションから考えていきます。

航空機の緊急時について

この文章内ではコミュニケーションの効率性について解説されています。少し引用します。

民間航空会社は、航空機事故対策の1つとして、航空機の故障などにより、緊急着陸を行う(または余儀なくされる)場合の、乗務員による乗客の緊急脱出誘導訓練を 定期的に行っている。その際のマニュアルに書かれている緊急脱出の際の命令の言葉 を関連性理論の概念を使って分析してみよう。
(中略)
a. Head down!
b. Keep down!
c. Grab your ankle!
d. Hug knees! 
e. Brace!
5つの命令の表現の全てにあてはまる特徴は、非常に短く、多くの部分が省略されていることである。緊急事態にいち早く命令を伝えるためには、関連性をできる限り最大にする必要がある。そのためには、まず、解釈労力を徹底的に減らす 必要があるだろう。解釈労力は、文の長さ、構文の難易度、論理的複雑さなどで判断される。
予期されない緊急着陸や事故が起きた際に乗務員によって、大声で叫ばれる命令であるが、(b)は、文法的には省略できない動詞「put」が省略されてい る。また、所有代名詞の「your」も省略されている。つまり文法的に正しい形は、「Put your head down!」であろう。(b)も同じように、「Keep your head down!」が正しい文である。しかし、統語論ではそこまで省略すると非文と判断される文も、聞き手の推論によって、それらの部分を補完し、解釈することができるため、さらに短く省略できるのである。

緊急事態におけるコミュニケーション 2章から

さてこの引用ではアメリカの民間航空会社のマニュアルを例に「どう簡略的に情報を伝えているか」という部分の分析が行われています。
a.b.c.d.eの全てのパターンは非常に端的、語数にすると2つ以下という簡潔さです。
これを日本語に直してみると「頭を下げて!」「膝を抱えて!」などです。これが数秒後には強い衝撃が発生する可能性がある緊迫した状態での言葉の使い方です。

ではVALORANTに変換していきましょう。
敵守り側のプッシュがあったとします。この時に重要なのは、航空機の例で言うところの「頭を下げて」や「膝を抱えて」となり、「撃ち合って」や「耐えて」というものになります。
厳密には逆サイト側の味方にも状況を伝える必要があるので、航空機で例えると遭難信号「Mayday!」ゲームだと「Bプッシュ!」となります。

このように簡潔かつわかりやすく情報と意思の統一を素早く行い、行動に繋げていくのです。

コールをしないようにしよう

話さなくて済むようにフォローする

さて、次も緊急時は当然焦ってしまうことも多くあるかと思います。
今回は「コール」についての記事ですが、緊急時に「コールをしない」という部分にも言及していきます。

よくあるNG例は撃ち合い中にコールをしてしまうパターンです。
ここについては脳を切り替えて撃ち合いに集中するというのがもちろん大事になりますが、チームとしてはフォローしてあげるために、少人数戦等であれば、死んで観戦に回っているメンバー等が声掛けや作戦提案を行ったりすることでフォローしましょう。

特にランクマッチ漬けになると少人数戦等でデスした人間が喋ることはご法度と考えている方もいらっしゃるかと思いますが、チームにおいては、メンバー同士の共通認識とある程度の信頼関係があり、これが差になります。
逆にこれがないと、いくら練習してもチームではなくただのランクマッチになってしまいます。

それでも、もしかしたら「他の人が喋ると集中できない」という人もいるかもしれません。しかし、これに関しても「慣れるしかない」というのが結論になります。

結局あらゆる研究や試行錯誤を行ってきたプロチームがデスした人間に話させているのに、ただの1プレイヤーがそれに抗うのは「賢者の歴史」と「愚者の経験」で言うところの愚者側でしかないのです。

ですが工夫はできます。例えば撃ち合わないであろうシーン、戦いに行く前の段階ですね。この時にできるだけの情報共有などを行い、本格的にフィジカルが重要なシーンでは話さなかったり、落とす情報も少なめにする(弾数や秒数等)などの工夫ができます。

「連呼しないようにしよう」

次によくあるのはどうでもいい情報でも何度も報告してしまう人がいます。喫緊の問題、例えばすれ違いや裏取り等非常に重要な情報であれば大きな声を出すべきという話は前回の記事含めて紹介しましたが、回数については多くて2回程度にしたほうがいいでしょう。

何度も話すと他のコールが聞こえなくなりますし、集中力も削がれます。特に逆プッシュ系の作戦に気づいた時に何度も連呼すると、そこから瞬時にどのように対応するかのコールを遮る結果になり、気づいてはいるけど対応がうまくできなかった、という結果になってしまいます。この辺りのバランスが上級編のコールです。

改善方法は自分で見返すしかありません、動画を取って後から「あ〜ここめっちゃうるせえな」と思う点があれば頭に置いておき、どんどん連呼しない癖をつけていきましょう。
癖さえつければ脳のリソースを使わずともできるようになりますからね。

まとめ

今回の記事やジャンルに限らず、チームでゲームをプレーしたい方々は普段からどうやってコールをすれば勝ちに繋がるかを考え続ける必要があります。

目には見えていない訳ですから、どう発言一つ一つをとられるかわかりません。十分に自分のコールに気を配りながらやっていきましょう。

以下作者twitter

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