安らぎ until then
無駄じゃなかった。
迷ったのは、無駄じゃなかった。あがいたのも、無駄じゃなかった。
転んだのも、憎んだのも、無駄じゃなかった。
嘘をついたのも、笑ってごまかしたのも、恐れず手放したのも、無駄じゃなかった。
快楽に溺れたのも、無駄だと思うことをしたのも、無駄じゃなかった。
傷ついたのも、傷つけたのも、無駄じゃなかった。痛みを知ったのは、無駄じゃなかった。
晴れの日に空を遠ざけたのも、遠くの声にすがったのも、造られた世界に逃げたのも、無駄じゃなかった。
何もかも、無駄じゃなかった。
綺麗なものだけを見ていられたら、どんなにか心地よいだろう。心地よさだけを経験できたら、どんなにか楽だろう。
しかし心地よさをもたらしてくれたのは、綺麗なものだけではなかった。楽を知るには、それを味わう自分と出会うことが必要だった。
求めていたのは、何だったか。向かっていたのは、どこだったか。
強く握ってたしかめたい光は形がなく、この目で見えるのにどこか虚ろだった。
唯一手でつかめたのは、目に見えないものだった。まぶたの奥のもう1つの目にだけ映る、記憶と呼ばれるものだった。
忘れていた、この安らぎ。この先のどこかにある、たしかな安らぎ。
いつかすべてを記憶にしてしまうまで、安らぎとともにいよう。
何度聴いても心揺るがされる音楽が、これを書きたいと思う気持ちにさせてくれました。
読んでくださってありがとうございます!