雑感:実情は蓋を開けないと分からない~ハシモトホームパワハラ自殺問題を題材に~

 どうも!おはようございますからこんばんわ!まで。

 岩手に住んでいる人間としてはハシモトホームというと、北東北エリアでは結構有名な住宅販売の会社でしたので、まさかあそこが子供じみたやり方で社員を追い詰めていたんだと思うと、本当に蓋を開けてみないと分からないなと思うこの頃です。今回は、これを題材にパワハラ等々書いてみたいと思います。

1.事案の概要

 6月20日付の河北新報配信の記事によると、自殺した男性は2011年に入社し注文住宅の営業を担当、18年1月ごろ上司の男性課長から携帯電話で「おまえバカか」といった内容のショートメールが複数回送られて、同月開かれた会社の新年会の余興として、営業成績をたたえた賞状形式の「症状」が交付され、誹謗(ひぼう)中傷を受けた。余興は課長が企画し、文面も考案したとのことです。男性は翌2月、青森市の自宅に駐車していた自家用車内で自殺した。青森労働基準監督署は20年12月、上司のパワハラで重度のうつ病を発症し、自殺の原因となったとして労災認定したとのことです。

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 上記画像は河北新報の記事内で実際に当該男性社員に渡されたという「症状」だそうで、文面を見ても一目瞭然でこんなに陰湿な準備をして余興でそれを公表するとかどうかしてるとしか想えないなというのが率直な感想です。そして、こういうのを余興として考案する他の社員もしくは上層部の子供じみた思考回路に驚きΣ(・□・;)を隠せませんでした。

2.実情は蓋を開けてみないと分からないね

 労働基準監督署には総合労働相談コーナーという、労働問題の相談における最初の窓口となるコーナーがあります。厚生労働省の発表によると、令和2年度に寄せられた相談の中で民事上の個別労働紛争相談件数は27万8,778件で、内訳として最も多かったのがいじめ・嫌がらせだそうです(下図参照)。

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 私が初めてブラック企業という言葉に出会った今野晴貴氏の著書『ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪』の中においても、今回のハシモトホームのような成果主義タイプの会社におけるハラスメントを切り口にしたいじめ・嫌がらせのケースは載っていましたが、これはそれよりもはっきりしていて子供じみていて大の大人が本来はすべきことではないし、この本が出版されたのが2012年11月19日で初版からもうすぐ10年経とうする最中で、このような痛ましい事案を見せつけられると日本の組織社会における陰湿さって本当に氷山の一角を1つずつつついていくしかないんだなと改めて想うのと同時に、蓋を開けてみないと分からない事は多々あるんだなと改めて思いました。

3.仕事と割り切りつつも外部に応援団を作る

 当該男性が自殺したのは2018年の2月,青森労働基準監督署が労災認定したのは2020年12月,そして今般の民事訴訟提起の発表が2022年6月、自殺から4年近く経過してもなお会社は普通に動いていたという事になります。これを残酷と捉えるのも1つではありますが、常見陽平氏は著書でかつて上司に「仕事は所詮、ゲームなんだ。ただし、真剣勝負のゲームなんだけど」と言われたことがあるそうです(参照:『「すり減らない」働き方』pp176)。冒頭で引用しましたANNmewsCH配信のニュース動画内で、顧客と会社の板挟みに合い家族に愚痴を言っていたようで、男性の妻からかは何回も「辞めたら?」と声を掛けられたそうですが、男性は「家が完成して、お客さんに鍵を渡す時が一番うれしいから続けたい」との事で会社を辞めず働き続ける選択をしたそうです。

 男性としては長年の営業努力が実を結び始めてきて、たとえ会社から理不尽な扱いを受けたとしても顧客のためならという気持ちをエネルギーにして奮い立たせていたことでしょう。しかし、このエネルギーが結果として長時間残業に結び残念ながら自死を選択してしまったということになりました。それでも会社は動き続けています。こう考えると、会社(組織)の外部に自身の力で頼れる応援団を構築するのが大切になるのかな?と思います。作家の佐藤優氏は著書で組織の外側に応援団(理解者)を作る利点として次のように述べています(引用:『組織の掟』pp190)

 組織内部の人たちは仲間であるとともにライバルだ。組織の外部の場合、仕事が競合関係になければ、ライバルにもならない。また、職場の仲間とは異なるので、気が合わない場合は、気軽に交際を断つことができる。その意味で、人間関係にかかる負担が少ない。

 私なりの解釈を付け加えると、インターネット,SNSがインフラのように浸透している現代においては、例えば飲み屋で偶然出会った人に仕事の愚痴を吐き出してそこから社外の関係性を構築するというような流れだけでなく、SNS上で行われている話す空間(Twitterのスペース機能等)に自ら赴いてみたり、気になる投稿を発見したら躊躇なくコンタクトを取ってみたりする等、やり方が多様になっている側面を考えると組織の外側に応援団を構築することは蓋を開けてみないと分からない得体のしれない会社という組織を活用して生きていく,生活をしていく上では大切なのかもしれませんね。

4.おわりに

 以前、私はこのnoteにて弱者をしばきあげているしばきあげ自己責任論へ警鐘をならすnoteを書きました。今回の事案も自死に至るプロセスを考えると、人によっては自己責任なんじゃね?と思う人ももしかしたらいるかもしれません。だけど、人の想いを細部まで読み解くのは超能力者でなければ分かりません。しかし、その選択をさせてしまったトリガーはどこかにあります。これまで日本において積み重ねてこられた労災事案を振り返ってみると必ずどこかに、その選択をさせてしまったトリガーはありました。だからこそ、自死それ自体を自己責任の如くしばきあげることには私は反対です。

 そして国内に会社組織や団体数多ある中で、蓋を開けてみないと分からないケースで溢れていると思うと、なんとか器用に生き抜くしかないんだなと痛感する事案でした。


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