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【長編戯曲】白球とまらず、飛んでゆく。

白球とまらず、飛んでゆく。

◎登場人物
嶋  清一    海草中等学校野球部員
古角 俊之    海草中等学校野球部員
山田 はな    旅館の仲居
井口 公平 毎朝新聞記者
寺山 さちえ 旅館の女将
嶋  信子 清一の妹

舞台は昭和初期の、紀南にある旅館である。その旅館の二階にある部屋。
近くに海があり、古き良き旅館という風体である。

一幕

 旅館の一室。そこで、非常にくつろいでいる男。
 部屋には、座卓があり、その上にスケッチブックが広げられている。
丸めがねの青年。
彼を嶋と呼ぶことにする。
外をふらりと覗いている。
外は非常に爽快な空だ。
女将の、さちえが、部屋を片付けている。
ぼう~~~~。
遠くに軍艦の汽笛の音が。

嶋  なんの音やろ。
さちえ え?
嶋  今、ほら、ぼーって音が。
さちえ ああ、今、そこの漁港に軍艦が来てるんですよ。
嶋  ああ。
さちえ めずらしいのか、すごい人集まってますよ。
嶋  ほうですか。
さちえ あまり、興味ないですか?
嶋   いや、そんなことないですけど。

さちえが、ちらりと嶋の様子を盗み見た。
そして、座卓の上の、スケッチブックに気がついた。

さちえ 絵、描いてたんですか?
嶋   え? ああ。まあ。
さちえ ここからの景色ですか?
嶋   まあ、ずっとここにおりますからね。
さちえ 見ていいですか?
嶋   あ、いや……。

さちえ、嶋が言う前に、スケッチブックを覗いていた。

さちえ ……。
嶋   はは。えっと、それ、何、描いちゃあるか、わかります?
さちえ 真っ白。なにか描いてるんですか?
嶋   あひるの尻尾。
さちえ あひるの? 尻尾?
嶋   そうそう。白いでしょ?
さちえ ああ~~~。なるほどぉ……?
嶋   ええ。
さちえ すごいですねえ~~。
嶋   はは。うそですよ。なんも描けませんよ。描きたないし。
さちえ ああ。やっぱり。あひるの尻尾じゃないですよね。
嶋   気分転換にって、俊やんが置いてったんですけど。
さちえ まあ、古角さんが?
嶋   絵、描くん好きやろいうて。
さちえ そうなんですか?
嶋   今はそんな気分ちゃいますし。
さちえ そうですか。
嶋   ええ。
さちえ そうだ。軍艦、見に行ってみたらどうですか?
嶋  ああ。
さちえ きっと、いいと思いますよ。描くには。
嶋  ほうですか。……人、集まっちゃあるんですよね。
さちえ …大丈夫ですよ。
嶋  ええ。
さちえ ……。
嶋  明日、いってみますよ。
さちえ そうですか。
嶋  ええ。

間。
さちえが、部屋から出て行こうとする。

さちえ では失礼します。
嶋  あの。
さちえ はい。
嶋  浴衣なんですけど。
さちえ どうかしました?
嶋  帯がないんです。
さちえ あら。
嶋  帯がないと、どうも……。
さちえ ……。はなさんですね。
嶋  ……。
さちえ 後で、もってこさせますからね。
嶋  はい……。

小さな間。

さちえ ?
嶋  ボク、大丈夫ですよ。
さちえ ……。ええ。
嶋  ……。
さちえ では……。
嶋  ……。

嶋、窓から外に体をのりだし、みてみる。
う~んと、体を伸ばす嶋、ふと、外を歩いている人間が目に入ったようだ。
急に慌てて、ばたばたと隠れる場所を探すが、みつからない!
慌てて、窓から飛び降りようとするが、そこへ、だだだ!っと駆け込んでくる、女 中のはなさん。

はな あきません! あきません!
嶋  ちょっとちょっと!
はな こらえてください! 生きてたらええことあります!
嶋  ちょっと! 離してください。
はな あきまへん! 嶋さんに死なれたら困るんです! 私!
嶋  違う! 違いますから!!
はな ほ、ほんまですか?
嶋  ほんま! 
はな ……。

と、おそるおそる嶋から離れる。

嶋  ほら、大丈夫。ね。大丈夫。
はな ……。

と、非常に疑り深い目で見ている。

嶋  大丈夫ですって!
はな ……そうですか~~~。
嶋  そ、そんな目でみんでくださいよ。
はな だって~。
嶋  ……ほら、みててくださいよ。
はな ……?

嶋、後ろを向いて、振り向きざま、ポーズをとって。

嶋  元気です!

と、にかっと笑った。

はな ……。

間。

嶋   ……。
はな  ううう。

と、急に泣き始める。

嶋   ちょっとちょっと!
はな  なんか、すごくイタイタしいです……。
嶋   ええ……。
はな  そこまで追い詰められてるなんて……。
嶋   ちょっと、そんなことないですって。

はなが号泣し始める。
嶋、慌てて、はなに駆け寄る。
そこへ、信子がやってくる。

信子  お、お兄ちゃん!
嶋  あ、ああ……信子。
信子  帰ってけえへんとおもったら、そんな……。

と、どばあっっと去ろうとする。

嶋  ちがっ! おい! 勘違いするなあ!

と、追いかけようとするが、
と、そこへ、ふすまをばーんとけり、古角(コスミ)がやってくる。
古角は、肩にでっかい魚(マグロ?)を担いでいる。
古角の勢いに部屋にとばされて戻る信子と、嶋。

古角  お~っす。セイ坊! あ、信子ちゃん。
信子  いたああ!
古角  おお、みつかってもうたか~。

と、部屋の中の状況を見て、驚いて、

古角  なにこれ?
嶋  なにこれちゃうって。
信子  お兄ちゃんなんかしらん!

と、再び出て行こうとする。

嶋  おい! ちゃうちゃう!
信子 なにがちゃうんよぉ!
嶋  だから!
古角 なんや? なにをもめとるんよ。
嶋  この人は、旅館の人でな。別にそんなんちゃうねんて。
信子 あ、そうなん?
嶋  なんか、勝手に泣き始めて困ってるんよ。
古角 え? 誰が?

と、嶋が振り返ると、はなは、鼻をつまんでいる。

はな 魚くさっ!
嶋  ええ~~。
信子 ほんまや。魚くさっ。
古角 くさいてなんや。勝浦でとれたマグロや。おまえのためにもってきたってんやぞ。
嶋  いや……。これをどうしろと?
古角 いらんのかよ! みろ! これ、ピッチピチやぞ! 勝浦のマグロの証 や!

と、部屋にどでんと魚をおいた。

嶋  いや……ん~~。ありがとう?
古角 おまえ! これ、めちゃくちゃ高いねんぞ!
嶋  え!? ほんまかよ!
古角 せ、せや。それをわざわざこうやってもってきたってんぞ。
嶋  おまえ、そんなんどないしたんやl
古角 え? いや、それは……。
嶋  それは?
古角 いや、市場のおっさんの隙を盗んでやな。
信子 それ、犯罪やん!
古角 せやから、市場の隅の方にあったからやな!
信子 もー、そんなんええから! お兄ちゃん、帰ろよ!
古角 そんなんて……。
嶋  え? いやあ……。
信子 なんでこんなところにおるんよ。
嶋  いや、ちょっと……。なんでお前、ここ、わかったんよ。
信子 え? 古角さんに聞いたら。
嶋  おい!
古角 いや、オレはちゃんと、勝浦の旅館にはおらん!いうたんやぞ!
嶋  お前はあほか!
古角 あほちゃうわ!
信子 お兄ちゃん! みんな心配してんのよ。
嶋  ……。
古角 おいい!

とか、やっているうちに、はなが、魚を窓から捨てた。

古角 おおおおおおおい!
はな え?
古角 なにしとんねええええん!
はな いや、だって腐ってるから。
古角 え? そうなん?
はな  腐ってたから、ほかしちゃあったんちゃいます?
男の声 いっっったあああ!

小さな間。
慌てて窓に駆け寄る4人。

嶋  あちゃ~~。
はな 男の人、下敷きになってますね。
信子 痛そ~~~。
古角 はははは。
嶋  いやいや、あかんやろ。
はな ま、ようあることですよ。
信子 え~。そうなんですか!
嶋  いや、ないないない。
古角 おまえは、都会っこやの~~。この町やと、魚の一つや二つよう、おちてくるこっちゃ。
嶋  落ちてくるかよ! 魚が~~。
古角 ちっちっちっ。なめたらあかんぜよ! ここは勝浦じゃけ~~の~~。
嶋  もう、方言間違ってるし! って、はよ、助けにいかんでええんかいな!
はな あ、気ついた。
信子 あ、こっちみてる。
嶋  うわ~~。めっちゃみられてるやん。
古角 あ、こっち走ってきた。
嶋  うわあ! やばい! どないするどないする!
はな と、とりあえず、あれは空から降ってきたと言うことで。
古角 いや、空を飛ぶ魚だったということで!
信子 空とぶ魚?
嶋  というか、逃げた方がええんちゃうんかいな!
はな ど、どこに!
古角 と、とりあえず、押し入れに入れ!!

と、4人で隠れる場所など、あろうはずもなく、
あたふたして、団子状態にもみ合って、ごろごろと転がってくる。
そこへ、さちえが入ってくる。

さちえ 失礼します。嶋さん。お客さんですよ。
嶋  あ。
さちえ なにしてるんですか?
嶋  いや、ははは。
さちえ どうしますか?
嶋   だ、誰ですか?
さちえ さあ? なにか、聞きたいことがあるっていうてはりますけども。
嶋   そ、そうですか。と、とりあえず……。
さちえ ……。いいですか? では、どうぞ、こちらです。
井口  すいません。失礼します。

    と、井口がやってくる。

さちえ はなさん?
はな  いや、あ、ちょっといろいろありまして……。
さちえ ……。
はな  はは。じゃ、私、失礼します。

    と、はなが去る。

さちえ 失礼します。

   と、さちえも去る。

井口 あ、こんにちは。
三人 あ、こんにちは。
井口 やあ、古角くん、きてたんだね。
はな え? 知り合いですか?
古角 そういえば、なんか野球部にきてたなあ。嶋の居場所聞いてきてたわ。
はな え? 教えたんですか?
古角 教えてへんわ! ちゃんと……。
嶋  もうええ……。
井口 君、嶋君だろ?
嶋  え? いや……。
井口 (嶋に)そうだろ? 写真にそっくりだ。
古角 あの、なんですか?
井口 いや、毎朝新聞の野球担当の井口といいます。取材したいんだよ。
信子 記者! あきません! 出てってください!
古角 嶋は、取材拒否中です!
井口 あ、やっぱり嶋くんなんだ。
古角 あ。
信子 ちょっと古角さん!
古角 あ、嶋じゃないですけど! 彼は!
井口 ちょっと話、聞きたいんだけど。
嶋  いや……。ちょっと。
古角 だから、嶋じゃないです。こいつは! えっと、島田君です。
信子 古角さん、もう、遅いです……。
古角 ええ~。
井口 ね、ちょっとだけでいいから。
嶋  すいません。今、なにも喋りたくないです。
古角 ほら、もう、でてってくださいよ。
信子 そうです。出てってください!
井口 あ、なんか、首痛い。さっき急に空からでっかい魚がふってきてねえ。
信子 一分だけですよ!
古角 僕らも一緒におりますから!
嶋  おい~!
井口 いや、ありがとう。
嶋  いや、ボクはなにも喋りませんか。
井口 いやいや、君にも責任はあるとおもうんだよね。だって、甲子園に和歌山県の代表としてでてたわけでしょう?
嶋  ……。
井口 みんなは君に期待してた訳だよ。なにしろ、優勝候補として、海草中の嶋清一の名前は、中等野球では、すでに評判になっていたし。全国制覇も夢じゃない段階だったし、君にはその実力もあったはずだし。
古角 もう、そこらへんにしときましょうよ。
井口 なんか、体が魚くさいんだよね。
古角 信子さん、はなさんに頼んで、なにか拭くものもってきてもらって差し上げてくださ いまし!
信子 はい!

と、出て行く。

井口 第24回全国中等学校優勝野球大会。8回裏まで、海草中は、対戦相手の平安中を、5対1で有利に試合を進めていた。みんなが、海草中の勝利を確信していた。なんせ、あの嶋清一だから。でも、そこから、君が明らかに変調をきたしている。そのとき、いったい何が君に起きていたのか? あれだけの剛速球がなりをひそめたように、制球難になっている。そのせいか、まさかの逆転負け。
嶋  すいません。もう、やめてください。
井口 それから、君は和歌山に帰るとすぐに姿をくらませてる。世間的には逃げたと思われてもしかたがないんじゃないかな?
古角 違う! あんたにはわからんかもしらんけどな。こいつには休養が必要やったんや。
井口 それで君の地元である、ここにかくまってるんだね。
古角 ……。
嶋  すいませんでした。ほんまにボクは最低なんですよ。
井口 もう、野球はやらないのかい?
嶋  ……。
古角 セイ坊……。
嶋  ……。
井口 答えられないのかい?
嶋  世間が許さんでしょう。あれだけの大舞台で、あんな生き恥をさらして。
古角 そんなこというなよ!
嶋  ……。
古角 くそっ。

間。

井口 ボクはね。悔しいんだよ。
嶋  え?
井口 ボクはね。君はもっとすごい投手だと思うんだよ。君は知らないだろうけどね。紀和大会。甲子園の前の試合だよ。あそこに見に行ったんだよ。君の球はすごかった。ものすごい剛速球。それが君の体からびゅ~~っと飛んでいく。そのときにね。ものすごくかっこよかったんだよ。もう、我を忘れて興奮したんだよ。中等野球にこんな球を投げる選手がいたなんてしらなかった。それをボクが全国に知らせたいんだよ。なのに、君は甲子園で、暴投してしまった。いったいなんだったのか? 世間で、精神薄弱だなんだっていわれてるけどね。
嶋  ……。
井口 それだけじゃないと思うんだ。君にいったいあのとき、なにがあったのか? それをボクは知りたい。それが悪いことだろうか? 確かに君にはつらいかもしれない。けど、それを乗り越えて、来年の夏こそは、全国制覇するのは君だと思うからこそ、こうやって取材したいんだよ。
古角 ……あんたになにがわかるんや!

と、井口になぐりかかろうとする。
そこへ、手拭いを持ってきたはなが帰ってきて、

はな 古角さん!

と、古角をとめようとする。

古角 おれはなあ、こいつと一緒にもう何年も野球やっとんのや。こいつのすごさはオレが一番ようわかっとる。あんたらなんかより、一番ようわかってんのや。オレが一番悔しいんや。あんたらにわかってたまるかいな! あんたらがな、好き勝手に書いてるせいで、こいつはえらいめにあってるんや。なんやえらそうなこといいやって、結局あんたも他のやつと一緒なんや!
井口 違う! ボクは真実をしりたいんや!
古角 おまんになにがわかる!

と、前でごたごたやっている間に嶋が窓際に立った。
信子がやってきて、それに気づいた。

信子 お兄ちゃん?
嶋  ……。

窓から飛び降りた。
慌てて窓から外を見た4人。

はな あ、魚の上に落ちた。

嶋がびよ~んと、部屋の中に戻ってきた。
一瞬の間。

嶋  ……!
古角 う~ん。やっぱり勝浦の魚は弾力がええなあ。

嶋、そのままゆっくりと部屋の隅にいき、

はな だ、大丈夫ですか?

と、嶋に近寄るが、

嶋  ……。
はな 魚くさっ。

嶋、うなだれた。

  2幕

夜。
はなさんが、濃いめの化粧で、踊っている。
それを、憂鬱そうに眺めている嶋。

はな こうですか?
嶋  ちゃ~うよ~~。
はな こう?

と、宝塚のまねをする。

はな なんでや! なんでなんや!
嶋  全然ちゃうって~~。
はな ほうですか? ものすごくにてると思たんですけど。
嶋  宝塚で、関西弁とかないし。
はな う~ん。難しわ~。
嶋  もう、ええよ。
はな まあ、そないいわんで。本物の宝塚よりはおもろないやろけど、気晴らしにはね。
嶋  ……。
はな 宝塚好きでしょ?
嶋  俊やんに聞いたん?
はな あ、うん。
嶋  俊やんにまた監視せえ言われてるんですか?
はな いや、そんなんちゃうよ。うん。
嶋  もう、一人にしといてください。
はな でも……。
嶋  大丈夫ですから。
はな ……。
嶋  ほんまに、大丈夫ですから。
はな そ、そうですか……。

重い沈黙。

嶋  あの人は?
はな え?
嶋  あの記者の人。
はな うちに……、泊まってはるんですけど……。
嶋  そう。
はな ごめんなさいね。一応うちも客商売なもんで。
嶋  いや、別にええですけど。
はな やっぱ断ってきましょか?
嶋  ええですよ。
はな あ~、そうですか?
嶋  もう、ど~でもええですよ~~~。
はな そんなんいわんでくださいよ。
嶋  はあ。
はな あの。
嶋  ……。
はな あのですね。私ね、思うんですけどね。
嶋  なんですか?
はな きっとね、嶋さんは優しいだけですよ。
嶋  優しい?
はな そうですよ。古角さんとは全然ちゃいますもん。なんか、野球やってるひとって、なんていうか、野性的って言うか、こう、おりゃーーって感じするんですけど。
嶋  はは。おりゃーってか。
はな そう、おりゃーって感じするんですけど、なんか嶋さんは、そんな感じがせえへんっていうか、なんか柔らかいっていうか。
嶋  ……ありがとう。
はな いや、まあ、私、あんまり野球詳しくないから、なにいうてんのか、あはは。
嶋  やさしかったらあかんのですよ。マウンドでは一人でバッターと向きあわなあかんのですよ。戦いなんですよ。やるかやられるかなんですよ。
はな はあ。
嶋  一人っきり。
はな ……。でも、仲閒がいてるやないですか。
嶋  ん?
はな ほら、古角さんかて、嶋さんのこと、えらい心配して、こないして、毎日様子みにきてくれてるやないですか。
嶋  んん。
はな 古角さんかて大変やのに。
嶋  何?
はな あ、すいません。
嶋  え? 何?
はな いうたらあかんいわれてるんで。
嶋  あいつもなんかあるんか?
はな ……。嶋さん、わからんのですか。
嶋  ……。
はな 古角さんかて、大変なんですよ。嶋さんかくまってるっていうことは、嶋さんの居場所みんなに隠してるっていうことなんですよ。それがばれたらみんなにどんな目に遭わされるか。それに、古角さんかて、海草中野球部の一人なんですよ。一回戦で負けたの、くやしかったんは古角さんかて一緒やと思いますよ。
嶋  ……。
はな それをおくびにもださんと、明るく嶋さんを元気づけようとしてるやないですか。
嶋  ……。
はな 苦しいのは嶋さんだけやないんですよ。
嶋  ……。
はな すんません。
嶋  ……。いや、うん。その通りやよ。

長い間。

はな すんません。偉そうに。
嶋  いや……。

重い沈黙。
と、そこへ、風呂上がりで上機嫌の信子が、鼻歌なんか歌いながらやってくる。

信子 お兄ちゃん! すごいよ! ここのお風呂! 入った? なんかね、もう、ぞぼーーーーんっって感じ! 入った? 入った? あ?
嶋  ああ。
はな すいません。おじゃましました。
信子 きゃっ!

と、化粧の濃いはなに驚く信子。
はな、去る。

信子 なにあれ?
嶋  ん? 仲居のはなさん。さっきおったやろ。
信子 なんかすごいことなってるね。
嶋  また、飛び降りへんように監視してんねんやろ。
信子 ん~。そうなん。
嶋  はあ……。
信子 くらっ。
嶋  は~~~。
信子 ねえ~。どしたん。
嶋  おまえ、いつまでおるんよ。
信子 え? お兄ちゃん帰るまで。
嶋  おまえ、学校は?
信子 お兄ちゃんにいわれたないよ。
嶋  ふむ……。あ~あ。

でろんと、寝転がる。

信子 お風呂でも入ったら? すっきりするよ。
嶋  さっき入ったよ。
信子 そう?
嶋  なんか、腹立つぐらいのんきやな。
信子 のんきとちゃうよ。ほんまにな、心配してんで。切腹でもしてるんちゃうかって。
嶋  はは。残念ながら、そんな勇気なかったわ。
信子 なあ~、もうええやんか。野球もせんでええやんか。せやったら関係ないやろ?
嶋  ……。
信子 だって、全然楽しそうちゃうやん。
嶋  楽しい?
信子 だって~、昔は楽しそにやってたやん。
嶋  昔か……。
信子 きいてる?
嶋  ん~。
信子 ……。

と、まったく話を聞いている様子のない嶋に、あきれて座る。

嶋  なあ、父ちゃんは、なんかいうてたか?
信子 え? 父ちゃん?
嶋  うん。
信子 いや、なんも。
嶋  そうか。
信子 まあ、勝手に家出したのは、怒ってたけど。
嶋  そうか……。
信子 帰ろ~よ~。ね~。
嶋  ん~~。
信子 ね~。
嶋  いや……まだ……帰りたない。
信子 え~。
嶋  あ~、オレはどうしたらええんやろか。
信子 ん~。どうしたいん?
嶋  わからんよ。
信子 そりゃ、困ったね。
嶋  どうしたらええ思う?
信子 帰りたないんでしょ?
嶋  ん~、まあ。
信子 とりあえず……。
嶋  とりあえず?
信子 う~ん……とりあえず、お風呂入ったら?
嶋  だから、入ったって。
信子 いや、まあ、うん。もう一回入って、こう嫌な気分もすっきり?
嶋  オレはな、真剣になやんじゃあるんよ。
信子 いや、せやから、お風呂にはいってな、ゆっくりこう、リラックスして、考えてみるって言うね。
嶋  風呂風呂うるさいよ!
信子 ご、ごめん。
嶋  もう、昔とちゃうんよ。ただの野球好きのお前のお兄ちゃん、ちゃうん よ。
信子 そんなん、ちゃうって。お兄ちゃんは、お兄ちゃんやん。
嶋  おまんには、わからへんよ。
信子 そんなん、わからへんよ。
嶋  ……。

長い間。
嶋、ふと、くんくんと自分のにおいをかいだ。

嶋  もしかして。
信子 うん。
嶋  臭い?
信子 うん。
嶋  ああ。
信子 ものすごくね。……。
嶋  う、うん。
信子 魚くさい。
嶋  は?
信子 もう一回、お風呂、入ったら?
嶋  ……。

と、自分のにおいをかぐ。

嶋  はあ……魚くさっ。
井口 わかるよ~。そのくささ。

驚く嶋と信子。
窓から井口が顔を覗かせる。

嶋  な、なんですか!
井口 よお~~、こんばんは。いい月だな。
嶋  な、なにしちゃあるんですか! そこで。
井口 いや、ちょっと何喋ってるか気になってな。
嶋  のぞきやないですか。
井口 いいじゃねえか、同じ魚つながりの仲だろ~?
嶋  ボク、そんなにくさいですか?
井口 うん。くせえよ~。青臭え。もう、青くてくっせえよ。もう、青い春だーって感じだ。
嶋  青い春って。
井口 彼女いいこじゃね~か。
嶋  え? はるさんですか?
井口 そうそう。彼女、君のこと、好きなんじゃねえの~?
信子 え? そうなの?
井口 そうだろ~。
信子 へえ~~。
嶋  そ、そんなんちゃいますよ。彼女は、ボクを元気づけようとって、い、いつからみてたんですか!
井口 あ? 抱き合ってチュッチュしてるとっから。
信子 ええ! お、お兄ちゃん!
嶋  だあーー! してない! そないなことしてへん! な、なにをいうんですか!
井口 そうだっけ?
信子 なんだあ。
嶋  なんだあってなんや。そもそもね、覗くなんて記者としてサイテーやないですか。
井口 だあ~。違えよ。これは~、取材! そう、取材取材。取材だってんだよ~。「ドキッ! 嶋清一の私生活を丸裸!」ほら。
嶋  ドキッ!ってちょっと~。
井口 てやんでばろくしょいっと。

井口、よっこいせっと上って、部屋に入ってくる。

井口 で、どうなの? もう、あの娘とやっちまったか?
信子 え!? そうなの!?
嶋  ちょと! なにいうんですか?
井口 いや、なんか、そういうことをいわね~といけねえ空気を感じたから。
嶋  そんなんちゃいますから。
井口 あ、そう? やっちゃまえばいいのによ~。
信子 うわ~。
嶋  なにをいうんですか。
井口 か~~~~!

と、鼻頭を押さえる。

嶋  な、なんですか?
井口 いや~、自分のおっさんくささに、鼻がツーンってなってもうて。
嶋  そ、そうですか。
信子 おっさんやん。ばっちり。
井口 おっさんいうなあ!
信子 なんよ。自分でいうたんやんか。
井口 人にはおっさんっていわれたくねえんだよ!
信子 なんよお。それ。ややこいなあ。
井口 ややこしいんだよ。おっさんは。
嶋  あの、ボク、もう、なにも喋らないんで。
井口 あ、いいよ。うん。いい、いい。それで。
信子 っていうか、なに、勝手に入ってきてるんですか!
井口 え? 勝手じゃねえよ。遊びにき・た・の!
信子 遊びに?
井口 いや、昼は申し訳ねえ。
嶋  いや、まあ、それは、その通りなんで。
井口 ま、実際、普段の君はどんな奴なのかなとおもってな。ちょっと飲み交わそうじゃねえかと。

と、ズボンの間から一升瓶を取り出す。

信子 すごい。
嶋  どっからでてくるんですか。
井口 幻の大吟醸、紀州一番。
嶋  いや、ボク、まだ未成年なんで。
井口 おい! 若いな!
信子 じゃあ、私はもらいましょう。
嶋  おい!
井口 ば~ろ~。子供はもう寝てろ~。
信子 なんやねん! おっさん!
井口 だからおっさんいうじゃねえええ!
信子 なんやねんなあ。かってやなあ。
井口 おっさんはかってなのだよ。
信子 女将さんにいいつけるで!
井口 は~ん。ど~ぞ~!
信子 ええん? ほんまにいいつけたるで。
井口 オレは嶋君と二人で、じっくり語りてえの~。
信子 すぐ連れてくるから!!

と、部屋を飛び出していく。

嶋  おい。信子!
井口 元気やなあ~。
嶋  すんません。
井口 まあ、いいよ。一人で飲むから。
嶋  もう、酔っぱらってるんですか?
井口 まあ、ちょっとね。
嶋  酒くさっ。
井口 魚くせえよりもいいと思うけどな。
嶋  はあ。

と、自分のにおいをかいでみる。……くしゃい。

井口 はあ~~。ここはいいとこだな。
嶋  ……そうですね。
井口 空と海はどこまでも深く青い。山は、嫌みなぐらい緑。時間はゆっくりと、傷心旅行にはぴったりの場所だよ。

と、窓の外を眺める。
間。
ぼぉ~~~~~~。
遠くからと汽笛が聞こえる。

井口 軍艦か。
嶋  ああ……。

と、嶋も窓の外を見た。

井口 これから、中国かねえ~。
嶋  ああ。
井口 やだねえ。国家総動員法だってよ。知ってるか?
嶋  しってますよ。
井口 わかっちゃいねえな。
嶋  なにがですか。
井口 関係ないもんな。まだな。ま、それでいいんだよ。
嶋  はあ。
井口 毎朝新聞もさ、どんどんきな臭くなってきやがる。
嶋  いえ……。
井口 なんだってんだよ。軍艦がそんなにえれえのかよ。
嶋  そ、そんな事いうてええんですか?
井口 いわせろよ! ここじゃ、憲兵なんかいねえだろ? こういうところじゃねえとな、もう発言の自由なんかなくなってんだよ。
嶋  はあ。
井口 そんななかでよぉ。君達のような若者が野球という中で一生懸命輝いている。その姿が描かれる。それがどれほどスカッとするか。
嶋  はあ。
井口 まあ、おっさんの戯言だけどよお。
嶋  あの……。
井口 ん?
嶋  なんで、ボクなんですか?
井口 あ?
嶋  いや、ボクじゃなくてもすごい人はたくさんいるでしょ?
井口 ん~~~。
嶋  なんでですか?
井口 しらん!
嶋  ええ~~。
井口 ん~ただ、君には強いだけじゃない、何かを感じたんだよなあ~~。
嶋  強いだけじゃないなにか?
井口 なんか~……。苦悩というか~、こう、こっちにもぐっとくる、なにかと戦いながら投げている姿が、いろいろこちらに……ん~、わかんね!
嶋  ……。
井口 もう、いいや。
嶋  え?
井口 もう、わっかんねえ!

と、ぐでんと寝転がって、眠ってしまう。

嶋  え? ちょっと? ……。寝てます? あの、そこ、結構大事やと~~、思うんです よ? あれ? ええ~……。はぁ……。

嶋、一人何かを考えているようだ。
ラジオをつけると、なにか音楽が流れてきた。
音楽がなる中、窓の外を眺めている嶋。

さちえ 失礼します。
嶋  ……どうぞ。

と、さちえが入ってくる。

さちえ あら、寝ちゃってる。
嶋  なんか、酔っぱらってるみたいで。
さちえ まあ。

と、井口を揺すろうとする。

嶋  あ、いいですよ。そのままで。
さちえ そうですか。
嶋   なんか、大変みたいです。
さちえ 新聞記者さんですってねえ。
嶋  ええ。
さちえ 嶋さんの取材にですか?
嶋  まあ、らしいです。
さちえ すごいですね。嶋さん。
嶋  ……はは。
さちえ あんまりうれしくないもんですか。
嶋  (苦笑い)
さちえ さあ、どうしましょう。
嶋  信子は?
さちえ えっと、妹さん?
嶋  ええ。
さちえ なんか怒って部屋に戻ろうとしませんけども。
嶋  そうですか。
さちえ 今日は、私の部屋に泊まってもらいましょうか?
嶋  ええですか?
さちえ ええ、全然。
嶋  すいません。

さちえ、井口に布団をかけてやる。

さちえ 布団だしましょうか。
嶋  ああ、すいません。

さちえ、押し入れから布団を出し始める。

嶋  この街は静かでいいですね。
さちえ そうですか?
嶋  ええ。
さちえ そうでもないですよ。
嶋  ……。
さちえ 外からみてるか、中からみてるか、違いますからね。
嶋  ……そうですね。外からみてるか、中からみてるか。
さちえ 今日も眠れそうにないですか?
嶋   ……。

間。

嶋   あの。
さちえ え?
嶋   外から見ても、中から見てもわからないことはどうしたらいいでしょう?
さちえ 外から見ても、中から見てもわからないこと?
嶋   ええ。
さちえ それじゃあ、なにもわからないじゃないじゃないですか。
嶋   そうなんです。
さちえ じゃあ、なにもないのと一緒じゃないですか?
嶋   はあ、まあ、いや、その。
さちえ 外から見ても、中から見てもわからないことで悩んでるんですか?
嶋   あの、いや、まあ。そうかもしれないです。
さちえ じゃあ、誰もわからないですね。
嶋   はあ。
さちえ そういう問題はきっと考えてもわからないんじゃないですか。
嶋   ええ。
さちえ じゃあ、考えなければいいんじゃないですか?
嶋   はあ。
さちえ きっと、考え方が間違ってるんじゃないですか?
嶋   そうなんでしょうか?
さちえ それとも、答えなんかなかったりするのか。
嶋   ああ……。
さちえ まあ、ゆっくりしてください。ここはそういう場所ですから。
嶋  ありがとうございます。
さちえ あ、寝る前にお風呂に入ります?
嶋  え!?
さちえ え?
嶋  あ……もう、一回入ったんですけど~。
さちえ あ、そうでしたか。

嶋、自分のにおいをかぐ。

さちえ では、失礼します。
嶋  あ、はい。どうも。
さちえ おやすみなさい……。
嶋  ……。

さちえが去る。
しばらく嶋が一人で窓の外を眺めている。
急にラジオの音がとぎれ、ラジオから野球の試合中のような音が流れてくる。

審判の声 ボール!

が、二度続く。

アナウンサーの声 現在、5対1と、海草、平安を大きくはなしておりましたが、この回でいっきに3点を許しております。しかし、嶋、8回から、急に様子がおかしくなっており、ストライクすら、まともにはいらない状態になっております。これが本当に、あの怪童、嶋清一なんでしょうか!?

ラジオの声1 なんだあのざまは! おまえはそれでも男か!! 腕がちぎれるまでなげんかい!! 後のことはオレが面倒みたる! なんであそこでなげきらん!
嶋  ああ。ああ。

ラジオの声2 9回好機を逸するや、動揺その極に達し、折り紙をつけられていた嶋の左腕に異常を呈し、
嶋  うううう。
ラジオの声3 君にはがっかりだよ。ボクはもう監督を辞める。
嶋  ああ、監督……。すいません。

嶋がうずくまっている

嶋  本当に神に選ばれた投手ならば、死ねるはずだ。本当に悔しいならば死ねるはずだ。

嶋が、懐刀を取り出して、腹を出した。

嶋  本当に勝ちたければ死ねたはずだ。本当に死ねないなら、死んだほうがマシだ。

切腹しようとするのだが、途中で挫折する。
暗転。

   3幕


部屋では井口が大胆な格好で寝ている。
他には誰もいない。
はなと信子がやってくる。

信子 きゃっ。
はな あ! すいません!

と、慌てて出て行く。

井口 ん?

と寝ぼけ眼で起き出す井口。

井口 ん~~??

と、ここがどこかがわからない様子。
はながそろそろと部屋に戻ってくる。

はな あの……。
井口 ああ、おはよう。
はな おはようございます~~。
井口 いや~、頭痛い。飲み過ぎたな。これは。
はな あ、水とかもってきましょうか?
井口 あ、そう? 頼むよ。ありがとう。
はな あ、はい。

と、出て行く。
今度は信子がおそるおそる入ってくる。

井口 やあ、おはようおはよう。
信子 昨日、ここで寝てたんですか?
井口 え?
信子 え? ここ、お兄ちゃんの部屋ですよね?
井口 ん? ん? ああ~、そうだそうだ。昨日、嶋君の部屋来たんだった。
信子 あの、お兄ちゃんは?
井口 え? あ、いないね。
信子 え? いない?
井口 あ、ほんとだ~~~。
信子 どしたんだろ?

と、座卓の上のスケッチブックを見つけた。

信子 これ……。
井口 ん?
信子 お兄ちゃんが描いたんかな?
井口 あ~、そういえば、なんか鉛筆の音、聞こえてたなあ~。

はなが水をもってやってくる。

信子 あ、はなさん、お兄ちゃん、いないんですけど。

井口が水を受け取ろうとしているが、

はな え? いいひん?
信子 うん。
はな えええ~~~!!

と、驚いたひょうしに、水を井口にかけた。

井口 おい!!!
はな あ、ごめんなさい。
井口 も~、なにするんだよ。すっかり目、さめたよ。

と言いながら、びしょ濡れで、出て行こうとする井口を、おかまいなしに突き飛ばして、蜜柑を木ごともってやってくる。

古角 ちゃ~~っす。
井口 なんなんだよ!
古角 お、なんやおっさん、まだおったんかいな。えらいびちゃびちゃやん。
井口 なんなんだよ。朝からほんとに~。
信子 あ、古角さん。
古角 あれ? 嶋は?
はな 大変です! 嶋さんが! 嶋さんが!
古角 え?
はな 嶋さんがいなくなってるんです!
古角 な、なにい~~!!

と、木をもったまま、ぶんぶん振り返るので、非常に危ない。周りはそれのほうが気になって会話になっていない。

はな ちょっと! 危ない。
古角 どこいったかわからんのか。
信子 古角さん、これ。
古角 ん? なんよ。この気持ち悪い絵は。
井口 なになに?

と、井口とはなも、絵を見る。

信子 お兄ちゃんが描いたみたい……。
井口 うわ~。相当行き詰ってる感丸出しだね。
はな なんか、飛び降り自殺でもしそうな感じ。

一瞬の間。

井口 まさか……。また飛び降りた……!?
古角 ……。
はな ……。
信子 まさか……ねえ。

一瞬の間。
その後、ドドドドド!と、窓に駆け寄る4人。

はな いませんね。
井口 そうですね。
古角 まあ、よかった。

と、古角が振り返ったところで、木が、井口にパコン! 井口はそのまま、窓の外へ放り出される。

はな あああ!
古角 ん?
信子 落ちましたよ!
古角 おおお!!!

と、窓から手がはい上がってくる。

井口 た、助けて……。
古角 おおお!
はな だ、大丈夫ですか!!

慌てて古角と、はなと、信子が、腕をひっぱって助けに入る。
そこへ、ひょっこり嶋が戻ってくる。

嶋  なにしてんの?
古角 おお! ええとこきた! おまえも手伝ってくれ!
嶋  ん!? おお!

と、嶋も井口の引き上げに加わる。
うんしょうんしょと、井口が引きあがる。

井口 はあ……た、助かった。
はな いや~、びっくりしましたよ。
信子 古角さん! 気をつけてくださいよ!
古角 いや、すいません。
嶋  なに? 飛び降りたの?
井口 いや、彼のこの木が、いきなりぽこーんとあたってって? あれ?
古角 あ、そもそもおまえのせいや!!!!
嶋  え? オレ?
信子 そーよ~。どこいってたのよ。
はな 心配したんですよ!
嶋  いや、ちょっと散歩に。
古角 ……。

みな、なにをいっていいのかわからないぐらいあきれかえり、逆に脱力した。

嶋  どうしたんよ。みんな。
信子 いや、お兄ちゃんのせーで、えらい騒ぎやったんよ。
はな みんな心配してたんですよ。急におらんくなった~って。
嶋  ああ、そうなんや。
井口 のんきだねえ。君、意外と。
嶋  ……なんか、海をみたなったんで。
古角 まだ、なんやぐじぐじ考えとるんかよ。
嶋  ここは本当にええところやよ。海はどこまでも遠いし、広いし。空はどこまでも高い、本当にどこまでも続いてる。ちっぽけなもんよ。ボクなんか。
はな あ~、現実逃避。
嶋  ……。
井口 あ、黙った。
古角 情けな。
信子 かっこわりよ?
嶋  なんやなんやなんや! おまんらは!
信子 あ、逆ギレ。
嶋  オレは今、一人になりたいんよ! このつらい気持ちを一人でゆっくりいやしたいんよ。それを、バタバタバタバタ。考え事もできひんやんか。
井口 いたってるねえ~。若さが。
古角 失敗やったやろか。ここにつれてきたん。
嶋  オレはもうかえらんよ。
信子 ちょっと。なんで?
嶋  あそこに、もう、オレのおる場所らないしよ。
古角 みんな待ってるで。おまえのことを。
嶋  みんな?
古角 せや。そうそう。野球部のみんなから連絡あったんよ。
嶋  ……ああ。
古角 次の野球部の主将決まったで。
嶋  そうか。おめでとう。
古角 は?
嶋  いや、次の主将はおまえで決まりやろ。
古角 なにいうてるんや! おまえよ。
嶋  え? オレ?
古角 せや。
はな すごいやないですか。みんな待ってるんですよ。
井口 一人で悩んでないで、一度帰ってみていいんじゃないの?
嶋  そんなん、おれにできるわけないやん。
信子 そんなことないって。ねえ?
はな そうですよ~。
嶋  いまさら、みんなにあわす顔もないし。
井口 気にしてるのは君だけじゃないの?
嶋  ……。
古角 せや、みんな、お前の帰りをまっとんのや。
嶋  無理や。
古角 なにいうとるんや。
嶋  オレに主将なんかできるわけないやないか。
古角 なんでや、みんな、おまえに主将になってほしいんや。
嶋  なんでや。おれのせいやないか。甲子園であんな試合して。全部オレのせいやないか。
古角 みんなそう思ってないって。
嶋  思ってなくても事実そうや。オレのせいやねん。オレがびびって最後大逆転。おかげで海草中を日本中の笑いものしてもた。
はな 嶋さん……。
嶋  責任とろうとおもて、切腹でもしようと思ったけど、それすらようせえへん、くずや。
信子 お兄ちゃん! 死んだらあかんって!
嶋  でも、責任とらんと。
古角 あほお。そんなんで責任とらんでええわ。
嶋  なんでや。
古角 それやったら、もう一回甲子園でて、優勝したらええやないか。
嶋  ……。
古角 おまえやったらできる。おまえのあの剛速球があったらできる。そう思って、みんな、オレも、海草中野球部で、がんばってきたんやないか。あのくそしんどい練習耐えてきたんやないか。
嶋  すまん。
古角 お前を信じてる仲間まで裏切るんか!
嶋  ……。

間。

井口 あのさあ。
古角 なんですか?
井口 盛り上がってるところ悪いんだけどさ。
嶋  はい?
井口 オレ、濡れてるんだわ。着替えてきていい?
はな あ、ごめんなさい。新しいの持ってきます。
井口 いいや、自分の部屋で着替える。
はな じゃあ、井口さんのお部屋に持ってきます。
井口 あ、そう。悪いね。嶋くんさ。
嶋  ……。
井口 まあ、こっちが勝手に期待しといて迷惑かもしんないけどさ。
嶋  いや……。
井口 わかってるだろうけど。君が負けたのは試合じゃなくて、自分にだろ?
嶋  ……。
井口 負けっぱなしはかっこ悪いよな。
嶋  ……。
井口 ま、いらんこというたな。じゃ、邪魔したね。

と、去る。

はな 私、あの……。なんでもないです。失礼します。

と、去る。

古角 オレももう行くわ。いつまでもうじうじしてたええわ。

と、どたどたと出て行く。

信子 お兄ちゃん……。
嶋  ……。
信子 もう、野球やめて帰ろうよ。な、それやったら、もうなんの問題もないでしょ?
嶋  ……もう、そういう問題ちゃうんよ。
信子 どういう問題なん?
嶋  ……。
信子 私にも言われへんの?
嶋  ……。
信子 なんでもいうてくれてたやん。あかんの?
嶋  ……。
信子 私、じゃま?
嶋  …わりぃ。
信子 ……私、帰るね。ごめんね。じゃまして。
嶋  あ……いや……。
信子 はよ、帰ってきてな。
嶋  ……。

信子が去った。
一人残される嶋、うなだれる。
じっと、窓の外を眺める。

少しして、さちえが入ってくる。

さちえ どうかしはりました?
嶋   ……。
さちえ なんか、古角さんとか、信子さん、どたばた帰って行きはりましたけど。はなさんも泣いてたし。
嶋   ……。
さちえ 大丈夫ですか?
嶋   船。
さちえ え?
嶋   あの、戦艦。
さちえ ああ、戦艦。
嶋   そうですか。
さちえ ええ。
嶋  今朝ね。見てきましたよ。戦艦。
さちえ あら、そうなんですか。
嶋  おおきかったなあ。
さちえ そうですか。
嶋  かっこよかったなあ。
さちえ そうですか。
嶋  ものすごくでっかあてね、なんかこう砲台がどんどんとあって、すごいんですよ。人もね、ようけえのってて、そうか、もうすぐ出港やからやったんかもしらんけど、兵隊さんが、忙しそうにはたらいとったなあ。みんなねえ。かっこええ感じでねえ。なんかごっつい迫力ですよね。そら、戦争でたたかう船やし、人らやし。
さちえ ……。
嶋   これから死ぬかもしらんのに。
さちえ ……。
嶋  かっこわりなあ~。ボク。
さちえ ……。
嶋  いつまで野球できるんやろ?
さちえ え?
嶋   ……。
さちえ あの。
嶋  はは。あの人たちはなんででいけるんやろ?
さちえ さあ……。
嶋   すごいなあ。
さちえ でも、あの人たちが行かないと、日本は負けちゃいますからね。
嶋   ……。
さちえ 嶋さんも、嶋さんにしか、できないことがあるんじゃないですか?
嶋   はあ。
さちえ 野球やめられるんですか?
嶋   ……。
さちえ だから悩んでるんでしょ?
嶋   ……そうかも。
さちえ やめられないんだったら、やめなけりゃいいじゃないですか。簡単なことですよ。
嶋   簡単なこと。
さちえ すいません。素人が気楽にいって。じゃ、私失礼します。

と、去る。
間。
ぼお~~~~~~。汽笛の音。
嶋が海の方を眺めている。

嶋  オレにしかできひんことか……。

少しして古角が戻ってくる。

古角 これ、もってきたんやった。

と、今更蜜柑の木を部屋に置いた。

古角 まあ、ビタミンでもとってくれよ。
嶋  ……。

嶋が蜜柑を拾った。
間。
古角が去ろうとした。

嶋  ……俊やん!
古角 ん?
嶋  ほれ。

と、古角に蜜柑を投げた。
ぽこんと、古角に当たった。

古角 いたっ。なんよ。
嶋  とってくれよ。
古角 ん?
嶋  ほれ。

と、キャッチボールをするように、手を出した。

古角 あ、ああ。
嶋  うっしゃ。

と、ボールを受けた。
そこから、蜜柑をつかってのキャッチボールが始まった。
嶋が、投げた。
ぽこん。

古角 いたっ。
嶋  俊やん?
古角 ちょっと、手が滑っただけや!
嶋  大丈夫?
古角 大丈夫や、もう一球きいよ
嶋  ほ、ほんまに~?? ほな、いくで。

嶋が投げた。
ぱっこん!

古角 あった~~~。
嶋  だ、大丈夫?
古角 あたたたたた。
嶋  もう、やめよか?
古角 大丈夫やって! もう一球こい!!
嶋  もう、やめような~。顔、ぼこぼこやん。
古角 え? ほうか?
嶋  あ、元からか?
古角 こらーーー! 誰がぼこぼこよ。
嶋  はは。
古角 はは。
嶋  ……なあ、俊やん。
古角 なんや。
嶋  俺らは何のために野球やってたんやろ?
古角 何のために? そんなん考えたことないわ。
嶋  ……。
古角 おまえはどやねんな。
嶋  ……わからんよ。
古角 あほらし。そんなんどうでもええやんけ、オレは野球が好きでやっとんのよ。お前と、海草中の仲閒と野球するんが好きなんやんけ。
嶋  ……そうか。……今年で最後の大会になるんやな。
古角 ……せや。
嶋  日本一なっとかんとなあ。
古角 お、おお……。せ、せや。
嶋  ……。
古角 オレはな、セイ坊。おまんは、日本一の投手やとおもとる。それをな、日本中の人にみせられてへんのがくやしいんよ。
嶋  俊やん。
古角 な? そやろ? おまんはくやしないんかよ?
嶋  くやしい。けどな。ちょっとちゃうんよ。
古角 なんよ。
嶋  わかったんよ。あの試合の後な、オレはなにがあかんかったんか。ずっと考えとってな。
古角 ……。
嶋  おれは、弱いな。
古角 セイ坊、そんなんゆわんでよ。
嶋  いや、オレは弱いよ。俺一人では、あかんのよ。でもな、オレは、みんなのために投げられる。
古角 俺らも、セイ坊、おまえのために、守ってる。打てる。
嶋  俊やん!
古角 セイ坊! よし、投げてこい!!
嶋  よし! 俊やん! 行くで!!
古角 おう! こおおおいやあああ!!

嶋、大きく振りかぶって……投げた。
ぱこん。
ちょうど、様子を見に来た、はなにあたった。

はな いた。あ、いたい。

と、ずてんとこけた。

嶋  あ、ごめんなさい。
はな 食べ物で遊んだあきません!!
嶋  ははは。
古角 はは。
はな ちょっと! なに笑ってるんよ!

楽しそうに笑う嶋と古角。

   4幕

ラジオの音 さて、第25回全国中等学校優勝野球大会の決勝戦! ここでマウンドには嶋清一。いよいよ、大事な場面です。さあ、嶋、投げ……。

と、途中でノイズになってしまう。
数ヶ月後の再びの夏。
相も変わらず、とても爽快な空が広がっている。
井口が、部屋にいる。
はなが、ラジオのチューニングを一生懸命あわせている。

はな  ええとこやのにぃ!
井口  すいません。わざわざおじゃまして。
はな  うるさい!!
井口  あ、すいません。
はな  あ、ごめんなさい。
井口  いや……。
はな  いや、絶対この試合聞いてもらわんと!
井口  ありがとうございます。
はな  もうっ! こう?
井口  正直、赤紙がきたときには、応援にもいけないかと思ってましたが、こうして、この場所でラジオを聴けるって言うのが……。

はなが、ラジオをバシバシ叩き始める。

はな  え?
井口  いや、あの……。
はな  ちょっと、静かあに!
井口  は、はい……。
はな  もう!

と、バチッと、ラジオを殴った。
ボフッという音とともに、ラジオのノイズすら消えた。

はな  あ~、私もお店休んで行けばよかった。
井口  はは。
はな  あ、ごめんなさい。
井口  いえ。
はな  聞いてくださいよ~。女将さん、試合見に行ってるんですよ~。旅館まかせっきりで、信じられます~? 女将ですよ。女将。も~。めっちゃくやしい。
井口  そうですか。

さちえと、信子が座っている。

さちえ だ、大丈夫かな?
信子  だ、大丈夫よ。
さちえ こ、ここって、結構重要な場面でしょ?
信子  た、多分。
さちえ し、嶋さんって、ぷ、プレッシャーに弱いんでしょ?
信子  そ、それは今までは、そうだったけど……、だ、大丈夫、今年は。あの時から変わったもん。お兄ちゃん。
さちえ そ、そうですか?
信子  大丈夫。お、お兄ちゃん、大丈夫っていってたもん。
さちえ ええ、きっと、嶋さんやったら、大丈夫ですよ。ええ。
信子  うん……。

はなが、ラジオに跳び蹴りをかました。
ラジオの音が流れ始める。
と、スポットで嶋がマウンドに立っている姿が現れる。

ラジオ さて、これで最終の打者となるのか、海草中の嶋清一。これまでノーヒットノーラン。このまま、決勝戦勝ち取りますと、2試合連続ノーヒットノーランという大快挙をなしとげることとなります。

はな  あ、ちょうどええとこ!

マウンドの方では、嶋が構えている。

嶋   おっちゃん。
井口  ……。
嶋   おっちゃんやん。
井口  あ、ぼく?
嶋   聞きたい? 今の気持ち。
井口  あ、いいの?
はな  ? 誰と喋っちゃあるん?
嶋   めっちゃ怖いよ。
井口  あ、そうなの?
嶋   でもなあ。
井口  でも?
嶋   (にっ、と笑って)野球選手はな。
井口  うん。
嶋   このボールで全部喋るんよ!
井口  え?

嶋が投げた。

ラジオ ストライク! 三振! 嶋清一、快挙。優勝は和歌山の海草中。2試合連続ノーヒットノーラン。嶋やりました!

抱き合って喜ぶ、はなと井口。そして、さちえと信子。
嶋も感慨深げに空を仰いでいる。
海草中の校歌が流れる。

井口  それじゃ、行ってきます。
はな  え? もういくんですか?
井口  いつまでも逃げてられないでしょ。
はな  ……。
井口  かくまってもらってすいませんでした。
はな  そんな、全然……。
井口  思い残す事もないし、これ以上ここにも迷惑かけられないでしょう。
はな  でも、大丈夫なんですか?
井口  (無言で笑顔)
はな  ……。
井口  自分は、彼らのためにも、この国を守るために、命を捨てる覚悟ですから。
はな  ……。
井口  はは。なんちゃって。
はな  ……。
井口  ありがとうございました。

井口が、敬礼をして、去っていく。
海草中学校歌が流れる中、はなは窓の外を眺めた。
嶋の方では、古角と抱き合って喜んでいるようだ。

   5幕

数年後。
はながそわそわと窓の外になにかをつっている様子。
そわそわそわそわ。

古角の声 こんちわ~~。

あたふたあたふた!
古角が、入ってくる。

はな なんや~。
古角 なんや~ってなんよ。っつうか、なにほたえちゃあるんよ。
はな いや、別になんでもないですよ~。
古角 ん~? そうか? なんか変やで?
はな いや、なんでもないもんはなんでもないんです!

と、窓際に何かをかくしているそぶり。

古角 なんや? 窓になんかあるんか?
はな いや! なんもないです! なんもないですって! それより、なにしにきたんですか!
古角 なにしにきたってどういうことや。この街はオレの生まれ故郷やぞ? ん? なんや、このひも。
はな あ! あきまへんって!

と、古角がひもをひっぱるのを阻止したのだが、残念ながら間に合わず、見事に大きな「歓迎!紀州の英雄・嶋清一様!」という垂れ幕が現れた。

古角 なんやこれ。
はな あ~あ。もう。最悪。
古角 なんやすごいなこれ。
はな いや、嶋さんいうたら、今やこの紀州の英雄でしょ? これぐらいせな。
古角 オレは?
はな え?
古角 いや、オレ。
はな ん?
古角 いや、ボクもさ~。野球界の花形、六大学野球で、名門明治大学の野球部の選手として? 一応活躍する? 野球界の期待の星なわけじゃん?
はな 誰がですか?
古角 いや、オレオレ。それが錦を飾ってるわけじゃん?
はな それより、嶋さん、一緒やなかったんですか?
古角 呪われろ!
はな なんですか! 急に。
古角 なんや、だれもかしこも、嶋嶋嶋。
はな わかりましたよ。わ~、古角さんだ~。すっごい! かっこいい~~♪
古角 あ、そう?

と、照れた。

はな 照れるな! きしょい!
古角 呪われてこけろ!
はな だいたい、今日はなんももってきてないんですか~。
古角 ん? 別にもってきてへんけど。
はな 古角さんいうたら、いらんもんもってきて、いらん事件おこすので、おなじみじゃないですか。
古角 なんよおそれ! 大体、いらんもんってなんや! 今日は壮行会の前にセイ坊がここ来たい言うから、よっただけやし。
はな ええ。で、嶋さんは?
古角 ……なんかもう、ええわ。ちょっと遅れてくるわ。
はな なんや、そ~ですか……。

と、ふたたび、はなが、せわせわ、いそいそと、幕を戻そうとする。

はな ほら、手伝ってくださいよ。
古角 え?
はな ええから、ほら。
古角 え? なんでオレが。
はな ほら!
古角 んん~。

と、ぶつぶつ言いながら、それを手伝う。

古角 だいたい親友としてな、オレの立ち位置は非常に大事なはずやし。もっと大事にされてもええとおもうんやけどな。
はな だから、古角さんも、すごい♪、いうてますやん。
古角 ほら、あいつもすごいで、2試合連続無打無塁はすごいわ。でも、それもオレの力のうてはなかったというても過言ちゃうとおもうんやけどや。
はな はいはい。そーですね~。
古角 せやのに、なんや、もてるんはあいつだけやんか。だいたいあいつもそないにかっこようないやんか。おれとトントン? まあ、ちょいオレの方が、よ~。
はな そんなんいうてるから、もてへんのですよ。別に古角さんがあかんわけやないんですから。嶋さんが特別なんです。
古角 そうか~? まあ、オレも悪ないよなあ~。
はな はい、そこ、手を動かす!
古角 はいはい。これでええか?
はな ばっちり!

古角、部屋にどかんと座る。

古角 まあ、いきなり結婚するいうたときはびっくりしたわ。
はな え? 結婚?
古角 あれ? しらんかったんかいな。
はな はあ。
古角 なんか、贔屓(ひいき)の女の子と結婚したんやで。
はな え? でも……。
古角 せやなあ。
はな そうなんだ~。
古角 なに? 落ち込んでる?
はな いや、別に。そんなことないですよ。
古角 いや、絶対落ち込んでるやん。がびーーんって顔してるし。
はな してませんって!!!
古角 ……。

小さな沈黙。
さちえが入ってくる。

さちえ あら、古角さん。
古角 ああ、どうも。ご無沙汰してます。
さちえ 今、手紙が来ましてね。ちょうどよかった。
はな  誰からですか?
さちえ あの、新聞記者の井口さん。
古角  ああ。
さちえ はなさんや、古角さんとか、嶋さんにもよろしくって書いてあったから。
古角  ほうほう。
さちえ 井口さん、戦死なされたんですって。
はな  え?
古角  ……。
さちえ この手紙。戦地から送ってきて、私たち宛にもあったからって、わざわざ奥さんが持ってきてくれて。
古角  ほうですか。

沈黙。
古角、手紙を受け取り読む。

古角  はあ……戦争か。
はな  ……。
古角  ……。
はな  大丈夫ですよ。古角さんやったら。
古角  なんでや。
はな  殺しても死にそうにないですやんか。
古角  そうか?
はな  あ……いや。
古角  ……。
はな  ごめんなさい。
古角  いや、名誉なことやさけ。
さちえ そ、そうですよ。
古角  日本は勝つにきまっとるんよ。
さちえ ええ。
古角  そんためには、決死の覚悟でいかんとな。
はな  ……。
古角  でもなあ。ちょっと悔しいよお。
はな  ……。なにがですか?
古角  もっと野球やりたかったよ。やっと大学野球でこれからってところやったのに。
はな  ……。
古角  せっかくセイ坊が主将になって、これからやとおもってたんやけどな~。
さちえ 帰ってきて、またできるじゃないですか。
古角  ……。

小さな間。
玄関から声がする。

嶋の声 すいませ~ん。
さちえ は~い。嶋さんかしら?
はな  あ、私行きます。
さちえ あ、いいのいいの。
はな  あ、はい。

さちえ、出て行く。
間。

古角 あいつも、よう結婚したもんやで。
はな いつしたんですか?
古角 2週間前。
はな 2週間前?
古角 せや。たった二週間だけの新婚生活って。
はな まあ、帰ってくれば。
古角 ……。
はな ……。

古角が、はなをじーっと見つめた。
なにかを感じ取り、身を引くはな。
古角が、きちんと正座して、はなの方を向いた。

はな な、なんですか?
古角 はなさん。
はな はい?
古角 一個お願いがあるのですが。
はな な、なんですか? なんかきもちわるい。

古角がじりじりとはなににじり寄っていく。
はな、じわじわとくるプレッシャーに及び腰。

古角 チューさしてくれへんやろうか?
はな チュー?
古角 せや。チュ~~~~~。
はな え? な、なにをいうてるんですか?
古角 一回だけでええんよ。
はな ちょっとちょっとちょっと。
古角 いやいやいや。おれ、前から君のこと好きでしたよ?
はな いやいやいや。うそうそ。
古角 一回ぐらいええやんか。帰ってこられへんかもしれへんねんて!
はな いや……。まあ。

長い間。

はな いや、ほんまに?
古角 うん。
はな 私が?
古角 うん。
はな ……。
古角 よろしくお願いいたします。

と、古角が目をつむった。

はな うわ~~。

古角が、じっと待っている。

とてもながい間。

はな え? ほんまにするんですか?
古角 (にやり)うん。
はな ああ~(と、周りをきょろきょろ)

と、困っていたが、あきらめて、なむさん、するのかということろで、

嶋  こんにちは!

と、いきなり、嶋がやってくる。
しかし、この状況に一瞬固まる3人。

嶋  こんにちは。
はな あ、どうも。
古角 あ~~……。
嶋  じゃ。

と、出て行こうとした。

はな ちょっとまってまって。
嶋  いや、失礼しました。どうぞどうぞ。続きをどうぞ。
はな いやいやいやいや。なにをいうてらっしゃるのか。まあ、どうぞどうぞ。ここへ。

と、無理やり、中に入れて座らせる。
古角は、え~っという半分まだあきらめていない顔ではある。

はな じゃ、私、お茶いれてきますから。
嶋  あ、ええですよ。
はな ええですから!

と、行く。

古角 よお。
嶋  よぉ。悪い。
古角 いや、べつにええねんけど。
嶋  待たせた?
古角 いや、オレもさっき来たとこ。
嶋  そうかそうか。

妙な間。

古角 なんや、ここで、嶋とおるっていうのも久しぶりやな。
嶋  せやなあ。
古角 どうよ。新婚生活は?
嶋  ええよ。
古角 まあ、二週間だけか。
嶋  せやな。ええぞ。結婚は。
古角 そうか。
嶋  おう。
古角 はは。そうか。

長い間。

古角 ああ、そういえば。

と、手紙を嶋に渡す。

嶋  ん? なんや?
古角 ここで会った新聞記者のおっさんおったろ。あのおっさんから。
嶋  ん?
古角 戦死したてよ。
嶋  ……ほうか。

嶋、手紙を読む。

古角 おまえに、感謝してるてよ。
嶋  ……。

嶋、手紙を読み終え、窓際に立つ。

嶋  戦争してんねんな。
古角 ん?
嶋  ここにおったら、そんなこともわからんくなる。
古角 そら、おまえがここに住んでへんからやろ。
嶋  そうか。
古角 ここにも戦争はきとるよ。
嶋  そうか。……。ん? なんやこのひも?
古角 あ!

嶋、窓のひもを引いた。
再び垂れ幕がでろーんと落ちてくる。

嶋  なんよこれ。
古角 はは。あの子が、用意してん。
嶋  はは。
古角 信じられへんやろ。オレは全然無視や。
嶋  やっぱ、ここはええなあ。
古角 セイ坊。
嶋  ん?

古角が、懐からボールを出す。

嶋  おまえはなにかしら持ってくるな。
古角 なあ、嶋、ちょっと投げ合おうや。
嶋  ……せやな。
古角 よっしゃ。外に出るか。

と、二人が客席に降りてきて、キャッチボールを始めた。

嶋  なあ、俊やん。
古角 ん?
嶋  こないして、また、俊やんと、球を投げあいできるとはおもわなんだな。
古角 まあ、最後かもしれんけどな。
嶋  ついにか。
古角 せい坊は、大丈夫か? 軍隊が一番にあわへんな。
嶋  まあ、大学の寮と、そないかわらんやろ。
古角 ま、そやな。あ~、野球、自由にやりてえなあ。

すこしの間。

嶋  この戦争、もうながないと思う。
古角 おい、嶋なにいうてんねん。
嶋  おまえはどう思うねんな。
古角 ……。
嶋  ……。
古角 くそっ。

と、思いっきり嶋にボールを投げつけた。

嶋  はは、エエ球投げるようになったな。
古角 そうか?
嶋  最初は、ひょろひょろしとったわ。
古角 おまえと比べるなよ。
嶋  けど、オレはオレで、おまえがうらやましかったわ。
古角 なんがや。
嶋  おまえがおったから、まだ野球やってるんやわ。
古角 なにをいうねんな!
嶋  もう、5年以上たつんか。おまえとあってな。
古角 そうやな。
嶋  なんか、ずっといっしょやったな。
古角 なにいうんよ。これからも一緒や。死ぬまでいっしょや。
嶋  そうやといいな。
古角 なあ、やめろや。もう、こんな辛気くさい話!
嶋  おまえがおってくれて、俺、すごい助かったな。
古角 やめろって! そういう話!
嶋  俊やん。
古角 なんやねん!
嶋  ……ありがとな。
古角 どないしてんな。セイ坊!
嶋  どないしたんやろな? あ~~。なつかしなあ~。甲子園。
古角 戦争、終わったら! また試合せなあかんねんぞ。
嶋  ……。

嶋、笑って、ボールを古角に投げた。
古角、それをうけとって、ボールを見つめた。
さちえがくる。

さちえ あれ? いない……。

と、窓の外を見て、二人が外にいるのに気づく。

暗転。

   6幕

ナトリウム灯の明かりが、世界を包み込んだ。
海草中から出兵する、嶋、古角を含めた4人の、男たちが、たすきをかけて、周りを人に囲まれる。

男2 このたび、出兵する、この四人の若者は、この和歌山に、全国優勝という大きな旗を持ち帰ったすばらしき若者たちであります。このたびの出陣に関しても、すばらしい戦果を残し、かならずや、この大日本帝国を勝利に導くことは明白であります。

バッと、後ろに、日の丸が掲げられる。
そして、海草中の校歌を、みなで歌い始める。
さえない顔の嶋が一人いる。

嶋  大日本帝国万歳! 天皇陛下万歳! そして、ここに集まったみなさんに万歳! そして、ぼくの仲間たちに万歳! そして……。

ぼお~~~~~。
嶋が、喋るのを辞めて、遠くの海を眺めているようだ。

暗転。

銃の音。
爆弾の炸裂する音。
人が倒れていく音。
戦争の音。

   7幕

誰もいない部屋。
静かな時間。
座卓の上には、みかんとスケッチブックが一つづつ。
ラジオから、昭和の時代の音楽が流れている。
信子が1幕の嶋のように、ぼんやりと窓の外を眺めている。
さちえが布団をもってやってくる。

信子  海のにおいがしますね。
さちえ ええ。
信子  うん。
さちえ 外、とてもいい天気ですよ。
信子  そうですねえ。
さちえ 海なんかこの時期とてもいいですよ。いい、気分転換になりますよ。
信子  そうでしょうねえ。明日、いってみますよ。
さちえ そうですか。
信子  ええ。
さちえ ふふふ。
信子 ?
さちえ 信子さんって。
信子  はい。
さちえ こうしてみると、お兄さんそっくりですね。
信子  そうですか?
さちえ ええ。
信子  そうですか……。

間。
さちえが、スケッチブックに気がついた。

さちえ これ……。
信子  持ってきたんです。これ。
さちえ やっぱりあのときの、懐かしい。
信子  最後のページ見ました?
さちえ 最後の?

と、スケッチブックを広げ、最後のページを開いてみた。

さちえ まあ。
信子  出兵する前に、ここに来たときに多分。
さちえ ここからの景色ですね。
信子  部屋からこれが出てきて……。
さちえ ……。
信子  ここに来て、お兄ちゃんの事思い出して……。
さちえ ええ。
信子  忘れへんかな?
さちえ 大丈夫ですよ。
信子  嶋清一。野球ではね。もっとすごい人出てきても。
さちえ 大丈夫ですよ。
信子  そうかな?
さちえ だって、嶋さんは、嶋さんでしょう?
信子  うん。
さちえ 私は忘れませんもの。でしょ?
信子  うん。
さちえ じゃ、失礼します。

さちえ、去る。
信子、窓から外を眺めている。
窓から手が伸びてきた、ぼろぼろの服を着た男が一人現れた。
驚く信子。

信子 だ! 誰!
古角 お、お。

と、ワーキャー言いながら、布団叩きで、バシバシと、古角を叩きのめす。
古角、窓に追い詰められて、
はなが駆けつけてくる。

はな ど、どうしたんですか!?
信子 ど、泥棒!
はな ど! 泥棒!!
古角 まって! おれや! おれおれ!
信子 え?

はな、おそるおそる、古角の顔を見るが、信子の持っていた布団たたきを奪い、おもいきりたたきのめして、

はな なれなれしいなあ! この泥棒め!
古角 おれやって、古角や!
はな え? 古角さん?
古角 せや、この顔忘れたんか!?
はな ……。

と、もう一度古角の顔をまじまじと見る。
信子もおそるおそるのぞき見る。

はな う~ん……。古角さんは、もっとこう、かくかくっとしてはったような。
古角 かくかく?
信子 でも、そのごりごりした感じ……。
古角 ごりごり!
はな そして、このぼこぼこ感! その顔は……!
古角 いいすぎや!
はな 古角さん!!
古角 なんでやねん!
信子 帰ってきたんですか!!
古角 おう、ただいま。元気?
信子 ええ。
はな よかった。生きてたんですね。
古角 あたりまえや、殺されても死なんわ!
はな もう、普通に入ってきてくれはったらよかったのに。そんな泥棒みたいに。
古角 あ、ああ。そやな。えっと、ちょっと、恥ずかしくて?
はな 恥ずかしくて?
古角 いや、なんかな。
はな ……まさか、ほんまに泥棒しようとしてたんちゃいますよね?
古角 いや、ちゃうちゃう。そんなわけないやん。
信子 あ、警察。
古角 !

と、あわてて窓から逃げようとする。

信子 嘘ですよ。
古角 え?
はな ……。
古角 はは……。
信子 え~~~。

非常に気まずい……。

古角 いや、ちょっとお金がのうなってな。
はな 軍隊から、帰ってきたばっかりで、そんな大変なんですか?
古角 いや、そうやないんやけどな。ちょっと、いや、市内からな、汽車に乗ったんはええんやけどよ。いや、駅に財布忘れてきてもうて。
はな え?
古角 はは。まあ、電車賃もたりんくなってもうて。ま、ここまでくれば何とかなるかと思って。
信子 うわ~。完全に自分のせいや~~。
古角 はは。てなわけで、お金貸して。
はな そんなお金ありません!
古角 なんやねんな。
はな うちも大変なんですよ。旅館としてはあきませんし。
古角 ほうか。大変やねんな。
はな まだまだ戦争終わったばっかりで、みんな大変なんです。
古角 せやなあ。
信子 せやなあって。当たり前でしょ。

沈黙。
古角、急に真剣な顔になった。

古角 なあ。
はな は、はい?
古角 腹減った~。
はな へ?
古角 ここんとこ、まともに飯食ってないんよ。
はな はあ。
古角 なんでもええから食わしてくれ。
はな 昨日の残りやったらありますけど。
古角 それでええよ。
はな はあ~。じゃ、もってきますわ。
古角 すまんな。

はな、渋々去る。
古角、ふにゃ~っと寝転がった。
小さく間。

古角 はあ~、腹へった~。
信子 もうすぐですから。
古角 せや、みんな元気か?
信子 ええ。丸山先生とかすごい熱心に走り回ってますよ。
古角 そーかー。で、セイ坊は?
信子 え?
古角 セイ坊よ。セイ坊。もう、帰ってきたんか?
信子 しらんかったんですか?
古角 え……。
信子 ……。
古角 そうか……。
信子 ベトナム沖で、魚雷に。
古角 ……。そうか……。

古角、ゆっくり立ち上がり、窓の外を見た。

信子 古角さんはこれからどないするんですか?
古角 オレか? どないしょうかなあ?
はな 野球はやらへんのですか?
古角 野球なあ。

と、窓の外をぼうっと眺めた。
静かな間。
ラジオから、別の曲がかかった。
長い沈黙。
古角、ごろごろして、テーブルの上のみかんをつかむ。
それを食べようと思ったが、やめて、それを、ぽーんと、投げた。

みかんが転がった。

転がった先に、嶋の姿がある。
古角、ふと、部屋の隅にたたずむ嶋に気づく。

古角 おう。セイ坊、ここにおったんか。
嶋  ……。
古角 みんなまってるねんで。あんときみたいに。
嶋  ……。
信子 古角さん?
古角 やっとや。やっと自由に野球やってもええ時代が来たんやで。
嶋  ……。
古角 セイ坊。これから、おまんの時代がくるんや。
嶋  ……。
信子 お兄ちゃんは……もう、帰ってこないんですよ……。
古角 おい、はよ……。なにしてるんよ。
嶋  ……。

嶋は、何も答えずに、にこにこ笑っている。
そこに、井口が普通に入ってくる。

古角 ああ、あんたもか。
井口 よお。久しぶり。
古角 オレ、絶対忘れへんからな。
井口 ん?
古角 あんた達のかわりにも、生き続けるよ。
井口 へ?

はなが、お膳をもって戻ってくる。

はな あ、井口さ~ん。
古角 ん?
井口 よ。あ、いいね。いいね。
はな あ。

と、井口が、むせながら、飯にがっついた。

はな あ、それ、古角さんの……。
古角 え? 見えてるの?
はな え? 何言ってるんですか?
井口 君も生きて帰ってきたか。
古角 あれ? え?
はな 生きてはったんですよ~~。
井口 いや、びっくりしたよ~。帰ってきたら、死んでることになってるからさ~~。
古角 あ、そなんだ。
井口 で、まあ、仕事もないし、ちょっと遊びにね。ここ好きだから。
信子 大丈夫ですか?
古角 え?
信子 なんか、独りいうてましたけど?
井口 なんか、さっき変だったね。
古角 なんでもないです。
井口 あ、ごめん。くっちゃった。
古角 あ、いいですよ。
はな あ、もう、ご飯ないです。
古角 あ、そうなん……。

沈黙。

信子 あ~、井口さんは、これからどないするんですか?
井口 ん~。まだかえってきたばっかやし、しばらくゆっくりするよ。
信子 そうですか。
はな まあ、ゆっくりしてってくださいね~。
井口 君は? 野球は?
古角 ……。

古角、嶋をみた。

古角 どないしょうかなあ?
はな やらないんですか?
古角 嶋ももう、おらんし。
井口 そうか……嶋くんも……。
古角 ……。
井口 今こそ、嶋君が必要やったのにな。
古角 ええ。
はな ……。
古角 青いなあ。ここの空は。あんとき、嶋の言うてたことがようわかるわ。
はな あんとき?
古角 あんとき、あいつはこないな空をながめとったんやなあ。
はな ……。
古角 俺らは、なんで野球なんかやってたんやろか……。
はな ……。

古角が嶋を見つめている。
嶋が、窓のそばにちかより、窓の外を眺めた。
間。
ぼおおお~~~~~~。
船の汽笛の音だ。
古角も、窓の近くにやってきた

古角 あの音は……?
はな ああ、マグロ漁船の汽笛ちゃいます?
古角 そうか……。

嶋  としやん!

嶋が、古角に向かって、みかんを投げた。

古角 せい坊……。

古角が、そのみかんを受け取った。

信子 私、古角さんに、野球やってほしいです。
古角 え?
信子 だって、野球好きでしょ?
古角 ……。
はな 違うの?
古角 好きだよ。
はな 私、野球ってよくわからなかったけど、嶋さんとか、古角さんとかと会ってね、試合、見てても、とても楽しかったよ。
井口 ボールをつなげていかんとな。
古角 ボールをつなげる?
井口 これから野球をする子供達は、君たちをみて、野球を好きになるんじゃないかな?
古角 ……。
井口 少なくとも、白いボールが飛んでいる間は、ずっと平和は続くんじゃないかな?
古角 ……。
嶋  俊やん!
古角 セイ坊……。
嶋  へこんどる場合ちゃうで。
古角 ボールをつなげていく……。

と、立ち上がり、みかんを嶋に投げ返した。
それをにこにこと受け取った嶋。
そして、それを再び、古角に投げ返した。
古角が、そのみかんを受け取った。
そして、古角はそのみかんを窓に向かって、構えて、投げたようだ。
そして、じょじょに暗転していく。
《幕》

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使用許可について

基本無料・使用許可不要。改訂改編自由。作者名は明記をお願いします。
上演に際しては、観に行きたいので連絡を貰えると嬉しいです。
劇団公式HP https://his19732002.wixsite.com/gekidankita

劇作家 松永恭昭謀(まつながひさあきはかりごと)


1982年生 和歌山市在住 劇団和可 代表
劇作家・演出家
深津篤史(岸田戯曲賞・読売演劇賞受賞)に師事。想流私塾にて、北村想氏に師事し、21期として卒業。
2010年に書きおろした、和歌山の偉人、嶋清一をモチーフとして描いた「白球止まらず、飛んで行く」は、好評を得て、その後2回に渡り再演を繰り返す。また、大阪で公演した「JOB」「ジオラマサイズの断末魔」は大阪演劇人の間でも好評を博した。
2014年劇作家協会主催短編フェスタにて「¥15869」が上演作品に選ばれ、絶賛される。
近年では、県外の東京や地方の劇団とも交流を広げ、和歌山県内にとどまらない活動を行っており、またワークショップも行い、若手の劇団のプロデュースを行うなど、後進の育成にも力を入れている

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