世の中、痛いか痛くないかの重要性が年増女性社会で上がってきているように思う。

・実年齢よりうんと若く見える自分に磨き上げる美魔女が痛いのか?
・自然体といえば体裁よく、オバサン化を急速させるオンナが痛いのか?
・結婚もせずいい年こいて、韓流スターなどに夢中になるのが痛いのか?

たぶんどれも痛い要素にはなり得るのだろう。

私は早くから自覚している、「自分は痛いオンナ」だと。
タイプで言うと上記の3番目にほど近い。
リアルな恋愛が下手であるゆえ、雲の上の存在にまじで恋してしまう悪癖は小学生から変わっていない。

初恋は風見しんごにはじまり、中学ではたかみーにどっぷり溺れた。
高校時代は、少しは成長をみせその対象は芸能人ではなくなった。
とはいえ、メガネデブの分際で分不相応にも学年一カッコイー男子と体育祭でペアになったことで、いとも簡単に恋に墜ちた。ブスの片思いの大道だ。キレイな彼女の存在を知りつつ、巨大化した身体にその淡い気持ちを埋め込んだ。

短大に入り、人生初の彼氏ができ、はじめて「リア充」を手にした。
バラ色という色が本当にあるのだと知った。
しかし一年足らずでふられ、元の痛いオンナにあっという間に戻った。

成人になった痛い私の矛先は、メンパブのイケメン店員に向かった。
週3で店に通い、ライバルのオンナ客達と張り合った(つもりだった)。
そのイケメン店員はマコト君といった。マコト君は少し太めの福山雅治みたいな顔をしており、大変人気が高かった。
誕生日には豪華なプレゼントの山がいくつもできた。その中で私があげたのはテレホンカードだった。当時は限定のテレホンカードのプレゼントは結構希少価値があったような気がするが、他の客のものと比べるまでもなく、最低レベルのプレゼントだった。
そんなマコト君に1年半ほど熱を上げただろうか。あるとき出待ちをしていたら「おまえ、もう帰れ」と言われ、目が覚めた。
かなり、痛い。プレゼントレベルは最低だが、痛いオンナレベルは最高だ。

30近くになった痛い私のベクトルは、また少しジャンルを替えた。
今度の対象は地元Jリーガーだ。
なまじ練習を見学に行けたり差し入れができてしまうので、芸能人に恋するよりはずっと近い存在に日々胸を焦がした。ある日選手のイベントに参加し、抽選会でその選手からプレゼントを受け取ったとき恋心がマックスに達した。しかし、スポーツ選手に移籍はつきもの、その選手もこの土地を離れていき、いつしか久々に彼氏もできが、これも1年足らずでふられた。
数少ないリア充と痛いオンナを繰り返した20代も過ぎ去った。

痛いオンナじゃないかと薄々気がつき始めた30過ぎ。そんな自分を払拭したくて、今度は夜な夜な夜な合コンに狂った。やることが極端で時々自分に付き合いきれなくなる。
来る日も合コン合コン、時々街コン。しかしノーヒットノーラン。打率ゼロに疲弊した。
そんなある夜、友人と飲みに出た店でファンだったプロレスラーに遭遇した。

はい、痛いオンナ復活。

いうまでもなく私はそのレスラーの事が本気で好きになってしまった。
運良く連絡さきもゲットでき、これまでの雲の上系恋愛の中で、一番の功績を残した。
その日から合コンに行くのをやめた。もう痛くてもいいのだ。無理して性に合わない合コンに行くのなんてやめよう。好きなことだけでいいじゃない!不思議と一ミリの迷いもなかった。アラフォーになり、痛さに図々しさも加わった私は強かった。バカバカしいがこの気持ちを持ったまま死んでもいいとさえ真剣に考えた。

もちろんそのレスラーとは付き合えた訳じゃない。
あの衝撃的な出会いから数年。気持ちは変わっていないと思っていた。

さっき、ビルのイベントスペースで占いフェアを見つけた。15分1,000円だという。
1,000円なら外れてもくやしくないや、と痛い私が占い師に聞いたことは……。

「私、結婚しますかね?」

痛いオンナに変化が起きていた。



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