詩・散文

うそつき

まったくおまえはうそつきだ、
その目も鼻も口元も、
はだの肌理さえうそつきだ。
おまえのからだをつくるもの、
全てがうそつきのまやかしだ。

おまえにほんとうがあるとすれば、
それはそのみにくい虚栄心だけだ。
みにくいからこそごてごてと
飾りたてたその外見(そとみ)だけが
おまえのほんとうを示すものだ。

おまえのようなうそつきは、
それでもだれかを乞うだろう。
乞うて恋してその先に、
なんにもないと知るだろう。
おまえのようなうそつきに、
こたえてくれる相手などいるまい!
きっとおまえはそのときはじめて、
ほんとの心を知るだろう。
後悔してももう遅い、
おまえの外見を作ったうそは、
やがておまえの骨身となって、
やがておまえを霞にしよう。
霞をつかめる者などいない、
おまえはうそで孤独を成す。

おまえはたいしたうそつきだ、
それでもおれは、
おまえのことをあいしてる。
おまえの虚栄、その外見、
内におしこめたほんとうのほんとうを、
きっとあいしていたのだろう。
けれどもおまえは今や霞だ、
おれにもみえなくなってしまった。
うそつきめ、おおうそつきめ。
たしかにおまえはここにいたのに、
それさえうそにしちまうなんて、
まったくひどい裏切りだ。
たしかにおまえをあいしていたのに、
それさえうそにしちまうなんて。

まったくおまえはうそつきだ。
次にであえる時がこようと、
うそつきのままでいてくれよ。
そうでなくてはつまらない。
おれはおまえのうそもあいした。
そんなおまえのうそをあいした。

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