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10数年ごしの再会【私のおすすめ漫画紹介】

「坂道のアポロン」との出会い

大学生のとき、本をたくさん読む友だちがいました。
彼女の選ぶものはどれもおもしろく、その本棚は私には輝いて見えました。

ある日「漫画を貸してほしい」と頼むと「坂道のアポロン」を貸してくれました。
すごくおもしろくて、私も手元に置いておきたいと思いましたが、大学生の一人暮らしです。
スペースもお金も限られているし、最悪その子に言えばいつでも読めると思い断念しました。

そして卒業して10数年。
件の友だちとは就職するときに離れ離れになってしまいました。
読みたければ自分で買うしかありません。

はい。買いました。
昨年、全巻一気買いしました。。

いい歳した大人になってしまったので、陽と陰のイケメンに同時に言い寄られたり、何かの手違いでイケメンと同居することになったり、俺様社長だか御曹司だかに見初められたりする話は元気があるときしか読めません。
脳みそが疲れます。胃もたれもします。
高校生のキラキラ恋愛物語なんてなおさらです。
(読み物としてはおもしろかったりするんですけどね!ひとえに私のコンディションの問題です!)

でも「坂道のアポロン」はやっぱりよかった。
大学生の私も、いい歳した私ももれなくおもしろい。

10年以上経ってもずっと読みたい気持ちが褪せなかった。
その中毒性はどこにあるのか。
その魅力について語ります。

絵がいい

まず、絵がいい。
私は、漫画を読むうえで、好みの絵かどうかはけっこう重要です。
そして、作者の小玉ユキさんはどの作品も絵がいいです。

で、本作のメインキャラは、
横浜から九州に引っ越してきた秀才メガネのボン。美形。
学校イチのワル。図体のでかい垂れ目、千太郎。イケメン。
千太郎の幼馴染でそばかすの女の子、リッコ。きゃわわ。

絵はもう表紙の時点でわかるのでこれ以上は語るまい。
です。

方言がいい

次に、方言がいい。
九州の方言は耳に心地いい。
漫画なので音声はないけど、心地いいと感じる。
目に心地いいってことかな?

まさに声に出して読みたい日本語って感じ。
いくつか紹介します。

2巻の千太郎のセリフ。
「ああ……自分でもわからん…なんであがんこと言うたとか…
 時間ば戻してくれボン…
 なんやろ……頭と体のバラバラになってしもうた
 ケンカでもドラムでもこがん不自由は感じたことなか」

3巻の幸子(千太郎の妹)のセリフ。
「幸子の人生相談聞いてもらってよか?」
「あのねえ 同じクラスのハシグチ君っていう子がね幸子が
 いやがることばーっかりするっちゃん
 上履き隠したり髪の毛ひっぱったり…
 やめてって言うてもやめてくれんと
 どがんしたらよかと思う?」

くぅ~!いい!
九州出身だからそう思うのでしょうか。
いや、九州以外の方にもよさを感じていただけると信じています。

時代背景もいい

物語の舞台は1960年代後半。
ビートルズが一世を風靡していた時代。
音楽はレコードが主流だった時代。
学生運動が盛んだった時代。

私が生まれる前の時代です。
なんなら、親が生まれたばっかりぐらいです。
でもなぜか懐かしい気持ちになります。

ドラマでも小説でも、なぜか昭和後期って好きなんですよね。
少しだけ生きた昭和の空気を覚えているのか(昭和63年生まれなので半年ほど昭和に在籍してました)。

私の昭和後期のイメージは、戦争のダメージはもはやなく、成長過程でエネルギッシュ。全体的に元気。でもおおらか。

書いていて気づきました。
多分元気な感じが好きです。
過去の映像をみると、私もそこに参加したいなぁと思います。

もちろん内容もいい

もちろん、ストーリーも描写もいい。
ストーリーは基本的には友情物語。そこに恋愛のエッセンスが少々。

高校生の刹那的な、でも確実にあったあの日々が、あの瞬間が、感情が、切り取られ、視覚化・言語化されています。
その描写がリアルで、でも飾ってなくて等身大で、自分のこととして読めます。

だから、生きている時代も飛び越えます。
先述のとおり本作と私が生きてきた時代は違いますが、まったく違和感はなないです。それどころか共感しっぱなしです。
いつの時代も高校生という生き物はこうなんだろうなと感じました。

例えば、メガネを外したときにリッコに「ハンサムね」といわれたボンは、リッコの前でメガネをよく外すようになります。

「君がハンサムなんて言うからさ
 メガネを外すのは君といる時だけなんだよ」(ボンの心の声)

ここを読んで私は高校の廊下を思い出しました。
当時気になっていた男の子に「目がくりっとしちょんよな」と言われて、嬉しくて、その子の教室の前を通るときは目を2割増しに見開いて歩いていたのです。
気の抜けた顔を見られて「え!目ちっさ!」と思われたくなかったんです。

一事が万事、こんな感じで感情移入してしまうので、読んでいると
うわ!うわああぁぁぁぁああー!
となります。
高校のあの自意識過剰だった日々を思い出して恥ずかしくて悶えちゃうんですね。


その気持ちわかるー!そんでリッコはなんてかわいいの。

最後に

私は恥ずかしい、でもキラキラの高校時代を思い出します。
たしかに自意識過剰だったけど、自分という人間に一生懸命心を傾けていた頃です。
目を背けたくなる思い出もあるけど、でも捨てることはできない大切な時間です。

あなたは何を思うでしょうか。
もし高校時代の恥ずかしい思い出が蘇ったら、私にも聞かせてほしいです笑

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