天の河

むかし、すごく不思議な人にあった

宇宙とか

人類とか

文明とかの話に

気づいたらなってるような人だった

細かいことは覚えていないけど

とにかく大きなことばかり言うもんだから

いつもわたしはへぇーと

一定の音を発しているほかなかった

だけど、ひとつだけ

返事を返すことができずに

しかしはっきりと覚えていることがある


「物事には大きな幹のようなものがあって、

僕たちはその大木を動かすことはできなくて

なにをしても、どう足掻いても

結局は、その足掻きさえも

想定されているものにすぎず

小さな振動でしかない

ただその振動がさざなみとなり

数百年、数千年後には津波となり

その幹につく枝葉の角度を

少しだけ変えることは

きっとある

だから僕は

用意されたその小さな振動を

起こす人を探して

もし見つかれば、このシナリオのこのセリフを

教えてあげるために

僕は生きてる」

希望をもっているのか、絶望の渦中なのか

そのどちらでもないんだろうけど

わたしの胃の中の暗くてよく見えないところに

この長いセリフがじっと息をひそめている


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