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日記 イカ焼き
産地が関東の、30年ほど昔のお嬢さんに、イカ焼きをこさえて、食べさせました。
「これは "お好み焼き" と、いったいどう違うんですか?」
「"お好み焼き"みたいに、キャベツやら天かすやら紅生姜やら竹輪やら、そんなもんが入ってないんや。至ってシンプル。 イカとタマゴだけや」
「それだけの、違いですか?」
「あのな、イカ焼きとお好み焼きは、パッと見は似てても、そもそも思想が異なるんや」
「思想……ですか?」
「そうや。まあ、立憲民主党と中国共産党みたいなもんや」
「それなら、両方、マズイじゃないですか?」
「 ほんなら、自民党と民社党や」
「それ、いったいいつの時代ですか?」
「とにかくやな、お好み焼きは、阪急でもどこでも売ってるけど、イカ焼きは、阪神百貨店しか売ってないんや、これこそ最大の思想の相違やろ?」
「阪急と阪神なら、どちらが高級なんですか?」
「……そんなもん……高級とか云々とはちがうけど、まあ、阪神の方が、下町というか、どっちかと言えば庶民的やわな」
「なるほど……つまり、イカ焼きはB級グルメだということですね?」
「そら、BかCかは、知らんけどやな」
「出た! 万能結びことば、"知らんけど"」
「アホ、さいごに《やな》がついたら"知らんけど"は、そのまんまの意味になるんじゃ、知らんけど」
「あっ! これ美味しいです」
「当たり前や、関西のソウルフードや」
「たしかに、お好み焼き とは違って、モチモチしてるというか……」
「そうや、鉄板で両面から、圧をかけるんがコツやねん」
「イカなんて、買ってましたっけ?」
「今回は、インチキして、塩辛の残りをつこうたんや、塩味つける手間が省けたわ」
「さすがですね、そういう知恵を働かさせたら天下一品ですね」
「アホ! 全部食うな……ワシも食うんやさかいに、半分残しとかんかい!」
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